HSPは考えすぎて眠れないことがよくあります。「毎日そうだ」という人もいるかもしれません。
昼間の会話を思い出して、「あの言い方はよくなかったかもしれない」と気になったり、明日の予定を何度も頭の中で確認したり、まだ起きていないことまで想像して不安になったりするのです。
しかし、同じHSPでも「夜、布団の中で考えすぎるけれど、いつの間にか眠れる」という人もいます。
この違いを生むのはなにかというと「睡眠反応性」です。
睡眠反応性とは
睡眠反応性とは、ストレスや刺激を受けたときに、睡眠がどれくらい乱れやすいかを示す個人差です。
これはどれだけストレスを感じやすいかではありません。感じたストレスがどれだけ睡眠に影響しやすいかです。
たとえば、仕事で嫌なことがあった日でもすぐ眠れるHSPがいます。一方で、同じ程度の出来事でも、布団に入ってから頭が冴えてしまい、なかなか眠れなくなるHSPもいます。
この違いが睡眠反応性の違いです。
睡眠反応性が高い人は、布団に入っても考えごとが続きやすく、布団に入っても考えごとが続きやすい人は睡眠反応性が高くなります。双方向なのです。
未来の不安を何度もシミュレーションしてしまったり、心拍や筋緊張が下がりにくいという反応も同様に双方向です。
「布団=考える場所」になってしまっているのです。
HSPと睡眠の研究
ローマ・サピエンツァ大学のチームが、18〜73歳の358名の男女を対象に行った研究があります。この研究では参加者のHSP傾向、神経症傾向、ストレス、不眠、そして睡眠反応性を調べています。
これらのデータを分析したところ、HSPはストレスを感じやすく、不眠の傾向も強いことが分かりました。
しかし、神経症傾向などの性格特性の影響を除外して解析しなおすと、知覚されたストレスはHSPの不眠を有意に予測しないことが分かりました。
つまり、ストレスを感じやすいだけでは、不眠になるとは限らないということです。
それを媒介したのは、睡眠反応性でした。日中にストレスを感じ、それが夜まで残ることで、考えすぎたり、不安になったりして眠れないのです。
睡眠反応性チェックのテスト
この研究でどのように睡眠反応性を調べたかというと「FIRST(Ford Insomnia Response to Stress Test)」という質問票を使用しています。
せっかくなので訳しました。興味のある人は測定してみてください。
提示されるシチュエーションで眠れなくなる可能性がどれくらいあるかを、可能性は低い(1点)~非常に可能性が高い(4点)で回答してください。
全9問です。チェックを入れていくと最後に合計点が出ます。今回の研究では18点以上を睡眠反応性が高いと判断しています。
Ford Insomnia Response to Stress Test
睡眠反応性による寝付くまでの時間の違い
今回は18点以上でしたが、研究によっては16点以上で睡眠反応性が高いとする場合もあります。正式なカットオフ値は決まっていないのです。
この質問票を作ったヘンリー・フォード病院のクリストファー・ドレイク博士らが104人を対象にした調査では、中央値は20点でした。20点以下と20点を超える人たちでは、次のような差がありました。
| 指標 | 低FIRST群(20点以下) | 高FIRST群(20点超) |
|---|---|---|
| FIRST平均得点 | 15.4点 | 24.8点 |
| 平均睡眠時間 | 7.57時間 | 6.82時間 |
| 睡眠潜時(眠るまでの時間) | 9.4分 | 22.5分 |
HSPが睡眠反応性を下げる方法
HSPの睡眠反応性を下げるには、「今夜すぐ眠る方法」ではなく、ストレスを受けても睡眠が乱れにくい体質に近づけることが必要です。
ポイントは、刺激そのものを避け続けることではなく、刺激を受けた後の反応を小さくすることです。
それを繰り返すことで、ストレスを長引かせることが癖になっている脳のネットワークを変えるのです。
人間の脳には可塑性がありますから、「ストレス→長引かせない」を繰り返すと、やがてそちらがデフォルトになるのです。そのためには以下のことを取り入れてみましょう。
1. ストレス後の反応を毎回リセットする
睡眠反応性が高い人は、日中の緊張や嫌な出来事が、夜の覚醒につながりやすいです。
それを減らすためには、ストレスを受けた後に「何もなかったことにする」のではなく、短く区切って反応をリセットします。
たとえば、仕事や人付き合いの後に、5分だけ静かな場所で呼吸を整える、体の力を抜くなどを行います。目的は眠ることではなく、ストレス反応を長引かせないことです。
2. 反すうを減らす習慣を作る
睡眠反応性を高めやすいのは、出来事そのものよりも、その後に何度も思い返すことです。HSPの人は細かい表情や言葉を深く処理しやすいため、夜まで反芻が残りやすいです。
反芻を減らすには、「考える時間」を決めます。夕方に10分だけ、気になることを書き出し、「今できること」と「今は考えても変わらないこと」に分けます。
これを続けると、ストレスを睡眠時間まで持ち越しにくくなります。
3. 睡眠への恐怖を弱める
睡眠反応性が高い人は「また眠れなかったらどうしよう」という不安によって、さらに睡眠が乱れやすくなります。なので、睡眠そのものを警戒対象にしないことが大切です。
一晩眠りが悪くてもダメと判断せず、「今日はストレス反応が残っているだけ」「数日単位で戻せばよい」と考えましょう。
睡眠への恐怖が下がるほど、ストレスが睡眠に直結しにくくなります。
4. ストレス期の行動を事前に決めておく
睡眠反応性は、ストレスが強い時期に上がりやすいです。なので、調子が崩れてから考えるのではなく、あらかじめストレス期の行動ルールを作っておきます。
たとえば、忙しい週は予定を詰めすぎない、夜に重要な判断をしない、刺激の強い情報を減らす、睡眠の悪さを細かく確認しない、と決めておきます。
これにより、ストレスを受けた後の二次反応を小さくできます。
5. 回復できた経験を記録する
睡眠反応性を下げるには「ストレスが来ても自分は戻れる」という感覚を育てることも大切です。HSPの人は悪かった夜を強く記憶しやすいので、それを弱めるために回復できた経験を意識して残します。
「昨日は緊張したが、今日は少し落ち着いた」「眠りは浅かったが日中は動けた」などを短く記録します。
回復の記憶が増えると、ストレスや睡眠の乱れに対する警戒が弱まり、睡眠反応性も下がりやすくなります。
眠れないから考えすぎていることも
ここまでは睡眠反応性についての話でしたが、そもそも眠れない習慣を持っていないかも確認してください。
夜に考えすぎて眠れないというHSPは、次のような生活習慣を持っていないでしょうか?
- 目覚ましやスマホのアラームで起きている
- スヌーズ機能を使っている
- 夜コンビニに行くことが多い
- 寝る前によく音楽を聴く
これらの習慣は当カウンセリングルームに「考えすぎて眠れない」と相談にくるHSPがやってしまっていることの多いものです。睡眠の質を落とす非常に厄介な習慣です。
人間は光で起きるようになっている
太陽の光で起きて、暗くなったら寝るというのが人間の体にとって自然なリズムです。どういうことかもう少し詳しく説明しましょう。
わたしたちがなぜ眠くなるのかというと脳内の松果体でメラトニンというホルモンが生成されるからです。(※1)
このメラトニンは光を浴びると生成が抑えられます。朝と夜では生成量が10倍以上違います。朝になると太陽の光で起きることが出来るのはこのためです。
人間の体は太陽光によって体内時計を調整するようになっているのです。
※1:眠くなるメカニズムとしては他に疲れが溜まるからということがあります。
HSPは音で起きると負担が大きい
当たり前のことですが目覚まし時計の音やスマホのアラームは急に鳴り出します。このように驚かされて起きるのはHSPにとって良くありません。
目覚ましが鳴る⇒「敵が来た」と思ってしまう
ビックリして起きるとストレスホルモンであるコルチゾールのレベルが上がります。自律神経が高ぶり心拍数と血圧も上がります。
この反応を「闘争か逃走の反応」といいます。
敵に遭遇したときに闘うにも逃げるにも適した体の状態ということです。リラックス状態とは真逆の状態です。
朝起きた瞬間から急にこのモードにしてしまうと大きな負担がかかります。急な音で起きると人間の体は「敵が来た!」と判断してしまうのです。
目覚ましは心拍数と血圧にも悪影響
目覚ましやアラームを使って起きるのは毎朝ライオンに襲われているようなものです。これはHSPに限った話ではありません。
自分のタイミングで起きた人と比べたときに音で起きた人は心拍数と血圧が高いという研究結果もあります。
HSPの場合、寝起きでバランスを崩すとそれが影響してその日ずっと調子が悪いということにもなりかねません。それを夜まで引きずって眠れなくなってしまうこともあります。
スヌーズ機能は健康に悪い
一回で起きる自信のない人や二度寝が好きな人の中にはスヌーズ機能を利用している人もいるでしょう。しかしこれも健康にはよろしくありません。
二度寝を繰り返すと起きられない体になる
人間は目が覚める少し前から起きるための準備をしています。そして目が覚めてからも神経伝達物質が準備を整えるまでに時間がかかります。
そのときに二度寝をしてしまうとそれがリセットされてしまうのです。
そして脳が「起きるの?寝るの?どっちなの?」と混乱します。
これを毎日繰り返していると起きるのが困難になっていきます。起きるのが困難になると昼間にウトウトしてしまいそれが夜の眠れなさにもつながります。
スヌーズ間の眠りは回復につながらない
スヌーズ間の眠りは気持ち良いものですがそれが回復につながることはありません。
目が覚めたらその状態で布団の中でゆっくりするのは良いですが、二度寝はするべきではありません。体に負担を掛けないようにゆっくりと布団から出ましょう。
「しまった!遅刻だ!」と焦って急に起き上がるのも心臓に負担がかかるのでやめましょう。
コンビニに行くと眠れなくなる
これまで説明してきたように人間は光の刺激でゆっくりと起床するのが一番良いのです。
メラトニンの分泌を抑制し目覚めさせてくれる光のレベルはおよそ500ルクス以上です。
日中の屋外だと曇りの日で5,000ルクス以上、晴天だと100,000ルクスを超えることもあります。
ですから外の街灯が眩しくないのであればカーテンを開けたまま眠って朝の光で起きるというのも一つの方法です。
光で起こしてくれる目覚まし時計もありますからそれも良いでしょう。
レム睡眠時に起きればスッキリする
HSPの中には眩しいのが苦手で光で起きることは難しいという人もいます。そういう場合は目覚ましが鳴る前に目覚める習慣をつけましょう。
自分のタイミングで起きるということは浅い眠り(レム睡眠)のときに起きるということです。この状態のときはスッキリと目覚めることが出来ます。
反対に深い眠り(ノンレム睡眠)のときに起きると目覚めが悪いです。
繰り返しノンレム睡眠のときに起きていると認知機能に悪影響を与えるという研究もあります。
どうしても音でないと起きられないという人はボリュームがだんだんと大きくなるアプリもありますからそういったものを活用すると良いと思います。
コンビニの照明は明る過ぎるので眠れなくなる
それから遅い時間にコンビニに行くことも睡眠の質を悪くする一つの要因となります。
なぜなら照明の明るさが1,000から2,000ルクスほどあるためメラトニンの分泌が抑制され眠りにくくなってしまうからです。
「眠れないからちょっとコンビニでも行って気分転換しよう」というのは逆効果でしかないのです。
寝る前に音楽を聴くと睡眠の質が低下する
寝る前に音楽を聴くとリラックスして安眠できると言われています。しかし最近アメリカで行われた実験では逆効果になる可能性が示唆されています。
音楽をよく聴く人はイヤーワームの頻度が高い
ベイラー大学で睡眠の研究を行っているマイケル・スカリン博士らのチームが、睡眠の質や音楽を聴く習慣について聞き取りを行ったところ、音楽をよく聴く人ほどイヤーワームの頻度が高く睡眠の質も低い傾向にあることが分かりました。
イヤーワームとは、頭の中で何度も同じ曲が繰り返し流れて離れない状態のことです。
さらに博士らは実験参加者にイヤーワームが起こりやすそうな曲、具体的にはテイラー・スウィフトの『Shake It Off』、カーリー・レイ・ジェプセンの『Call Me Maybe』、ジャーニーの『Don’t Stop Believin’』の3曲を聴かせて眠らせ、その間の脳波や心拍数などを計測しました。
その結果、寝る前に音楽を聴くことが睡眠の質を低下させていることが分かりました。
特に歌詞の入っていない演奏のみのインストゥルメンタルを聴くことが、睡眠の質を低下させました。
寝る前に聴いた音楽を睡眠中も脳が処理しようとする
また、音楽を聴いて寝ると脳内で短期記憶から長期記憶へと変換するプロセスに関連する部位が活性化することも分かりました。
つまり、寝る前に聴いた音楽の情報を睡眠中も脳が処理しようとしているということです。それによって睡眠の質が低下している可能性があるのです。
寝る前に音楽を聴く習慣のある人は、自分の睡眠の質を確認したほうが良いです。
ちなみにイヤーワームを打ち消すには、その曲を最後まで歌いきることが有効とされています。
無意識にしている行動が睡眠の質を下げている可能性がありますから、考えすぎて眠れないというHSPは生活習慣を見直してみてください。
- Pieroni, I., Raffone, A., & Simione, L. (2024).Sleep reactivity mediates the relationship between sensory-processing sensitivity and insomnia symptoms severity: A cross-sectional correlational study.
- Drake, C., Richardson, G., et al. (2004).Vulnerability to stress-related sleep disturbance and hyperarousal.
- Scullin, M. K., Gao, C., & Fillmore, P. (2021).Bedtime music, involuntary musical imagery, and sleep.


