すぐに恋愛感情が冷めるというHSPもいれば、いつまでも愛情が冷めないというHSPもいます。
もともとの恋愛スタイルの違いも関係しますが、大きな影響を与えるものとして、対立が起きたときにどう対処するかという「型」があります。
どの型を使うかと冷めやすさが関係しているのです。
また、冷めていなくとも冷めた態度のほうが楽となってしまうHSPもいます。
1年後の恋人に対する脳反応を調べた実験
HSPは恋愛において冷めにくい可能性があります。
なぜなら、相手の感情を強く受け取る特性が、恋愛では良い形で出ることもあるからです。
カリフォルニア大学サンタバーバラ校のチームが、HSPとそうでない人の脳を調べた実験があります。
この実験では、恋人の写真と他の人の写真を見たときの活性化の度合いをfMRI(機能的磁気共鳴画像法)で比較しました。
その結果、HSPの人は恋人の写真を見たとき、感情処理に関連する領域が活性化しやすいことが分かりました。
特に恋人の幸せな表情を見たときに、報酬処理に関わる腹側被蓋野(VTA)が活性化しました。VTAは喜び・報酬・やる気・愛着に関わるドーパミン系の領域です。
つまり、HSPの人は恋人の笑顔やポジティブな感情に対して、ただ気づくだけでなく心が強く動かされやすいということです。
そして、この傾向は1年後の測定でも同じでした。1年経っても恋人の幸せそうな表情を「うれしい、価値があるもの」として脳が強く受け取っていたのです。
HSPは恋愛において冷めやすいわけではないのです。
恋愛の関係満足度が下がりやすいHSPの特徴
恋人との恋愛関係にどれくらい「満足しているか・幸せを感じているか」という評価を「関係満足度」といいます。
関係満足度が高いと、愛情や親密さを感じられ、意見の違いがあってもうまく処理でき、将来も関係を続けたいと思えます。逆にこれが低いと冷めやすいといえます。
HSPの持つ一部の特性が強い人は恋愛における関係満足度が下がりやすいことも分かっています。
HSPというだけで恋愛関係に冷めやすいのではない
臨床心理学者のメリス・ゾルルラーらが18~25歳までの男女206名を対象に行った恋愛関係の調査があります。
この調査ではHSP傾向と関係満足度を調べています。専用の質問票に回答してもらったのです。
これらの回答を分析したところ、HSPだからといって関係満足度が低いということはありませんでした。
また、以前の記事「少し言われただけで泣くHSP。涙を流さないテクニック」では、子供時代の環境がHSPの反応に影響すると説明しましたが、今回の調査ではそういった要因も関係は見られませんでした。
幼少期の環境は恋愛関係の満足度の評価に影響を与えないのです。(全く関係ないとは言い切れませんがこの調査では相関なしです)
否定的感情傾向の強さと恋愛関係
この調査では否定的感情傾向も調べています。これは日常生活において、普段から不安や怒り、落ち込み、緊張などが生じやすい傾向を指します。
この結果、HSPは否定的感情傾向が強い人の割合が高いことが分かりました。そして、この傾向が高い人ほど恋人との関係満足度が低いことも分かりました。
これは、否定的感情が強い状態では、恋人を前向きに評価しにくくなり「この関係はうまくいっていない」「満たされていない」と感じやすくなるためです。
HSPの敏感さそのものが満足度を下げるというより、敏感さによって否定的感情が増える人は、その感情が恋愛関係の評価を悪くしやすいということです。
一部のHSPがつかうコンフリクト・レゾリューションの型
恋人や配偶者など親密な相手と衝突や意見対立が起きたときに、どのような態度や方法で問題に対処するかを「コンフリクト・レゾリューション・スタイル」といいます。
葛藤を解決するための「型」です。どのような型を使うかは人によって違います。
実は今回の調査では、この型も調べていたのですが、HSPでさきほどの否定的感情傾向が強い人には特徴的な型があることが分かりました。
それは、否定的な解決スタイルを使うということです。
具体的には、声を荒げたり、恋人の欠点を責めたり、自分の非を認めず、言い訳や反論ばかりするといったスタイルです。怒りを示すために物に当たるなどの行動を取ることもあります。
不安や緊張、怒りなどの否定的感情に圧倒されると、冷静に対処しにくくなることが要因といえます。
HSPがこのような態度を取ると、恋人も防衛的になり話し合いがうまくできず、双方が安心感や信頼を得られなくなり、関係満足度が低下していく(冷めていく)ということです。
恋愛に冷めやすいかは条件次第
ここまでの結果から何がいえるかというと、HSPが恋愛に冷めやすいかどうかは条件次第ということです。
恋人とうまくいっていて、楽しいことや嬉しいことが多ければ、肯定的な刺激に強く反応しますから、熱した状態が続きやすいといえます。
しかし、うまくいっていないときは、否定的な刺激に強く反応しますから、冷めやすいということです。

このように、HSPは対立中に刺激を受けすぎると、攻撃・防衛・逃避に傾きやすくなります。
冷めやすいのではなく、冷めた行動のほうが安全と感じている
冷めやすいかどうかに関係なく、HSPは自分を守るために冷めた行動を取っている可能性もあります。
HSPの恋愛の相談を受ける中でも「恋人と揉めると、好きな気持ちと面倒な気持ちが戦って、最後は後者が勝ってしまう」という話をよく聞きます。
そして、そのままフェードアウトしたり自然消滅を待つという人もいます。
これは冷めやすいというよりも、冷めている反応をすることで自分を守ろうとしている反応です。
HSPが使う感覚回避
刺激に対してどう反応をするかは人それぞれ異なりますが、避けることで対処する傾向を「感覚回避(Sensory avoidant)」といいます。
簡単に言うと、音・光・におい・人混み・触覚などの刺激が負担にならないよう、それを避けることで対処する傾向です。自覚のある人も多いかもしれませんが、HSPに多い傾向です。
そして、この感覚回避は恋愛関係にも影響します。
HSPは関係回避の傾向が強い
メアリー・ワシントン大学のエリザベス・ジェローム博士らが18~71歳までの男女133名を対象に行った調査があります。
この調査では、刺激に対してどう対処するかと、親密な相手とどう関係を結ぶかを調べています。
その結果、先述の感覚回避の傾向が高い人ほど「関係回避」の傾向も強いことが分かりました。
関係回避とは恋愛関係や親密な相手との関係で、深く近づくことを避ける傾向のことです。具体的には、親密になりすぎると距離を取りたくなったり、頼るのが苦手だったりという特徴を持ちます。
このような背景には、近づかれることへの負担感や、自分の弱みを見せたくないという心理が隠されています。愛着スタイルでいうと「恐れ回避型」が近いといえます。
HSPが健全な関係を結ぶには、相手に対する不信感を払しょくすることが必要
この結果からいえることは、HSPが「もう離れたいかも…」と感じたとき、必ずしも恋愛感情が冷めているとは言えないということです。
むしろ、親密になるほど恋人の言葉や表情の小さな違和感に敏感になり「この人に近づいて大丈夫だろうか」と警戒が強くなっていることがあるのです。
この警戒心のせいで、話し合えば解決できることでも、先に距離を取るほうが安全に感じられ防衛反応として、冷めた態度を取ってしまうのです。
この防衛反応をそのままにしておくと、本当に冷めてしまいます。
ですから「本当に相手は危険なのか」「過去の経験から相手を疑っていないか」を少しずつ見直していくことが大切です。
回避したくなる自分の反応を理解したうえで、恋人との間に小さな信頼を積み重ねていくのです。
- Acevedo, B. P., Aron, E. N., Aron, et al. (2014).The highly sensitive brain: An fMRI study of sensory processing sensitivity and response to others’ emotions.
- Zorlular, M., & Uzer, T. (2023).Investigating the relationship between sensory processing sensitivity and relationship satisfaction: Mediating roles of negative affectivity and conflict resolution style.
- Jerome, E. M., & Liss, M. (2005).Relationships between sensory processing style, adult attachment, and coping.


