HSPの仕事が続かない理由は「JD-Rモデル」で会社選びしないから

仕事が続かないというHSPは、職業ではなく、会社の選び方を間違っています。

HSPはやりがいがないのに必死さや時間の制約、プレッシャー、対人関係の負担を要求する会社に入ってはいけないのです。

また人手不足、サポートがない、自己効力感を発揮させないといった資源が不十分な職場も避けなければなりません。

HSPは仕事の要求度と資源のバランスが悪い職場で、ストレスを感じやすく、やる気も起こりにくいことが研究からも分かっています。

そのような会社では、どれだけ努力しても仕事が続かないのです。

仕事が続かないというHSPはJD-Rモデルを意識して、会社を選びましょう。

それと後述しますが「HSPに向いてる仕事」などは嘘なので、信じてはいけません。

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JD-Rモデル:仕事のストレスとモチベーションを決める

仕事内容とそこで働く従業員の心理の関係を表す「JD-Rモデル(Job Demands-Resources model)」というものがあります。

日本語でいうと「仕事上(職務上)の要求-資源モデル」といったところです。

仕事が人のストレスややる気、健康、パフォーマンスにどう影響するかを説明するモデルです。

このJD-Rモデルでは、職場には大きく分けて「負担になる要因(職務要求)」と「支えになる要因(職務資源)」があると考えます。

仕事量の多さ、時間的プレッシャー、感情的に疲れる対応などは職務要求です。これらが高いと、心身のエネルギーを消耗し、疲労やバーンアウトにつながりやすくなります。

上司や同僚のサポート、自分で仕事を調整できる裁量、成長の機会、適切なフィードバックなどは職務資源です。これらがあると、仕事への意欲が高まり、困難な状況にも対処しやすくなります。

簡単にいうと、仕事上のストレスやモチベーションは以下の要素のバランスで決まるということです。

  • 求められる仕事内容
  • 職場のサポート体制
  • 個人の持つリソース

つまり、肉体的にも精神的にもハードな要求をされる仕事はストレスになりますが、それを上回るサポートや助言のある環境であれば成長や苦痛の低減を期待できるということです。

これらは、どんな職業に就くかではなく、どんな職場環境(会社)に入るかが重要であることを示しています。

もちろん、個人の環境に対する適応力や回復力も、ストレスやモチベーションに影響を与えます。

職場環境がHSPにどのような影響を与えるかの研究

HSPの仕事が続かない原因もJD-Rモデルで説明できます。

ルーヴェン・カトリック大学のチームが、職場環境がHSPにどのような影響を与えるかを調査しました。(対象者1,019人、67.6%が女性)

この調査では参加者のHSPの傾向がどれくらいあるかを調べ、今いる職場環境、精神的疲労度、援助行動についての質問票に回答してもらいました。(援助行動とは同僚を助ける行動です)

JD-Rモデル通りの結果

これらの回答を分析したところHSPかどうかに関係なく、JD-Rモデル通りの結果が得られています。

職務要求が高い職場では心が疲弊しやすく、職務資源が多いほど同僚を助ける行動が多かったのです。

同僚を助けるということは、精神的余裕が得られていることの指標といえます。

そして、これらの傾向はHSPほど強く出ていました。

HSPの3つの特性との関係

この研究ではHSP傾向をさらに細かく以下の3つに分けています。

  • 易興奮性:変化、時間的プレッシャー、他人の気分、空腹や痛みなどに圧倒されやすい傾向
  • 低感覚閾:明るい光、大きな音、強い匂い、粗い布地など、強い感覚刺激に不快に反応しやすい傾向
  • 美的感受性:芸術、音楽、微細な美しさ、豊かな内面生活への感受性

そして、それぞれの傾向の強さによっても差がありました。

易興奮性・低感覚閾が職場で受ける悪影響

易興奮性が高い人は、仕事量が多い、締め切りに追われる、精神的負担の大きい対応が続くといった状況では、強く消耗しやすくなりました。

仕事の負担が少ないときには影響が出にくくても、負担が大きくなると疲れやすくなるということです。

低感覚閾が高い人にも、似た傾向が見られました。

職場での仕事量や感情的負担に加えて、周囲の刺激も負担として受け取りやすいため、職務要求が高い環境では、精神的消耗がより強まったのです。

低感覚閾がプラスに働くとき

低感覚閾は、悪い方向にだけ働くわけではありませんでした。

職務資源、つまり、同僚・上司からのサポート、自分で仕事を調整できる裁量が多い環境では、低感覚閾が高い人ほど援助行動が増えやすいという結果が出ています。

これは、支援や余裕のある職場においては、HSPの敏感さがプラスにはたらき、同僚の困りごとを察知して援助行動につながりやすいことを意味します。

※ちなみに、今回の研究では美的感受性はプラスにもマイナスにも影響しないことも分かっています。

JD-Rモデルを意識したHSPの会社の選び方

以上の結果から分かる通り、HSPは仕事の要求度の高い会社とサポート体制の整っていない会社に入ってはいけないのです。

どんな職業に就くかよりも、どんな会社に入るかがHSPのパフォーマンスと仕事の続けやすさにつながるのです。

JD-Rモデルを意識した会社選びをしなければなりません。とはいえ、その選び方は非常に難しいものです。

ですので避けるべき会社の見極め方を説明しますので参考にしてください。

採用情報の文章に出る社風

その会社の社風やどんな人材を求めるかは、転職サイトなどに掲載する文章で使う単語に無意識に出てしまうことが研究で分かっています。

たとえば「ガッツのある人を求めます」という言葉は男性を求めている可能性が高いです。「実績を正しく評価」という言葉は数字を厳しく求める社風をあらわします。

そして、これらの特徴は入社後の人事評価の基準とも相関することも分かっています。

つまり、募集情報を読んだ時点で違和感を覚えたら、あなたには合わない会社である可能性が高いといえます。

面接官の態度に出る社風

何年か前にGoogleの入社試験というものがネットで流行しました。「燃え尽きるまでに10分かかる線香で5分計るにはどうすれば良い?」のようなブレインティーザーとよばれる問題です。

面接でこの手の問題を出したがる人は、ナルシシズムとサディズムが高く、社会的能力が低いことが分かっています。

ちなみに、ブレインティーザーと仕事の能力に相関はないことも分かっています。

こういった問題に関わらず、候補者の職務能力を見るというより、相手を困らせ、その反応を眺める場面をつくりたがる面接官のいる会社は、「支配」や「見下し」を是とする構造を持っている可能性が高いです。

そもそもこのご時世に、面接で偉そうな態度をとる会社は世間の評判、つまりレピュテーションリスクを気にしないということです。

このような会社は、日常業務においても倫理観の低いことをやっている可能性が高いので避けたほうが良いです。

その他のチェックリスト

他にもチェックすべきポイントはあるのですが、全て説明できませんので参考にしてほしいポイントをリストしておきます。以下に該当するところは避けたほうが良いです。

  • 常に募集をかけている
  • 応募条件が緩い(誰でも応募できる)
  • 年間休日が少ない
  • 遅い時間に行って電気がついている
  • 革新性がない事業なのにスタートアップを自称
  • テレアポと飛び込みを主な営業手段にしている
  • 役員の苗字が全部同じ
  • 安い商品やサービスを販売している(客の質が悪い)
  • TikTokでしょうもないダンスをしている

※ダメな会社という意味ではありません。HSPには合わない可能性が高い会社ということです。

HSPに向いている仕事リストは大嘘

HSP関連のブログなどで「HSPに向いている仕事一覧」などが記載されることがありますが、真に受けてはいけません。

一覧を作った人の、職業に対する勝手なイメージで作っているので、科学的根拠がありません。

それを信じて仕事を選んでも、天職には巡り合えないでしょう。それどころか、メンタルがボロボロになる危険さえあります。

カウンセラーはSEの仕事内容を具体的に答えられるのか?

たとえば、HSPに向いている仕事として、SEやプログラマーを挙げるカウンセラーや転職コンサルタントなどがいます。

しかし、その人達に「SEは具体的にどんな仕事をするのですか?」と聞いても答えられないと思います。

本人が未経験ですし、そういった職業の人たちと関わる機会も少ないからです。

そもそもSEと一口に言っても、会社によって業務内容は全く異なります。

同じ職業でも会社によって仕事内容は違う

私は簡単なコードくらいは自分で書けますし、SEやプログラマーと一緒に仕事をすることもあります。

しかし、仕事選びに悩むHSPに「SEの仕事を具体的に教えてほしい」と言われても答えることはできません。

「○○という会社のSEはこういう仕事です」と答えることはできますが、SE全体をひとまとめに答えることは不可能なのです。

なぜなら、SEの指すものが広すぎて、会社によって仕事内容が全く違うからです。

HSPに向いている仕事としてSEやプログラマーを挙げる人は、パソコンの前で黙々と設計書やコードを書いているところしかイメージしていないのかもしれません。

しかし、中にはパソコンの前に座っている時間よりも、打ち合わせや指示をしている時間のほうが長い人もいますし、コードを全く書かない(or書けない)人もいるのです。

元請か下請かでも違いますし、どの工程を担当するかでもやることは違うのです。

IT系の技術者に共通する特徴は脳のワーキングメモリを消費すること

ちなみにIT系の技術者の多くに共通する特徴があるとしたら、脳のワーキングメモリの消費が激しいということだと思います。

複数のことを同時に行うのが苦手とされるHSPに、向いている人が多いとは言い切れないのではないでしょうか。

同じ職種でも会社によって仕事内容が違うのは他の業界でも同じです。

私は経営コンサルティングの仕事もしているので様々な会社に入り込み、そこの社員と机を並べて仕事をすることがありますが、同じ職種だからといってどこの会社も同じ仕事内容だったということはありませんでした。

共感力を活かすことのリスク

HSPは共感力が高いので、それを活かせとアドバイスをする人もいます。

対人援助などの仕事をしろと言ったりします。しかしこれは非常に危険です。

HSPは対人援助の仕事で消耗しやすい

HSPにどんな仕事が向いているかを、体系的に調べた研究はありません。

しかし、個々の仕事の精神的なリスクを調べた研究はいくつかあります。

これらの研究は、HSPが対人援助の仕事に就いているときのことを調べたものが多いです。

たとえば、HSPの看護師はストレスを受けやすく、燃え尽き症候群のリスクも高い、というアンジェロ州立大学の調査などがあります。

仕事に必要な共感力はHSPのそれではない

仕事で必要な共感力とは、相手の悲しみを見て自分も悲しい気持ちになる、というものではありません。

必要なのは、理性的に相手の視点に立ち、感情を読み解くという共感力です。

これらは「情動的共感」と「認知的共感」という別のものなのです。

仕事で共感力を活かそうというときに、この2つを区別せずに考えるのは非常に危険な行為です。

心に傷が残る辛い体験をした人の話を聞いた人が、自分までPTSD(心的外傷後ストレス障害)になることを「二次受傷」といいますが、対人援助の仕事ではこれが問題となっています。

相手の感情の影響を受けやすいHSPは、注意しなければならないのです。

HSPがカウンセラーに向いていない可能性があるのも、こういった要因があります。

仕事は何をするかより誰とするか

HSPは向いている仕事は何か?ではなく向いている環境は何か?という視点を持つことが大切です。

HSPは思いやることの疲労度と燃え尽き症候群のリスクが高い

職業生活の質を測定する尺度に「ProQOL(Professional Quality of Life)」というものがあります。

仕事で他者を思いやることの満足度と疲労度、二次受傷などの良い影響と悪い影響を知るのに役立ちます。

セビリア大学のチームが、1,566名の医療従事者と教育従事者を対象に行ったProQOLの調査では、HSPは思いやることの疲労度と燃え尽き症候群のリスクが高いことが分かっています。

しかし、思いやりの満足度が高いと、これらのリスクは低下することも分かっています。

同じ仕事でも職場環境によってプラスになるかマイナスになるか異なる

思いやりの満足度は、相手を上手く援助できるという前向きな感情や、手順通りに仕事ができる効力感、自分の仕事が好きという感覚や成功しているという感覚によって得られます。

これらは職場環境、顧客のタイプ、個人のスキルの影響を受けます。

つまり、同じ仕事をしていても、ストレスになるか満足感になるかは、環境の影響が大きいということです。

実際に相談に来るHSPの話を聞いていても、同じ職業でも仕事が楽しいという人もいれば、苦痛という人もいます。

仕事は何をするか以上に、誰とするかが非常に重要なのです。

人口の30%に向いている仕事が全部同じなのか?

HSPは人口の20%から30%はいるとされています。

これだけの大きなカテゴリに属する人達に向いている仕事がすべて同じと考えるのは、おかしな話です。

少し思い出してほしいのですが、あなたが今の仕事に就く前に抱いていたイメージと、実際に今やっている仕事内容はかなり違うのではないでしょうか?

「こんなに精神的負担のかかる業務もあるなんて気づかなかった」ということも多いと思います。

それを思い出せば、カウンセラーや転職コンサルタントが印象でつくった「HSPに向いている仕事一覧」がどれだけ無意味なものか分かると思います。

私が経営コンサルティングの仕事で何社も見てきた経験からいえば、同じ職種であっても会社によって仕事内容や働き方、社内の雰囲気は全く違います。

それをひとまとめにして「向いている仕事」と言っている時点で、その仕事のことを何も分かっていないといえますから、そういうアドバイスを信じるのは危険です。

仕事が続かないのはHSPだからではなく、選び方を間違っているからということを忘れないでください。

参考文献
  • Vander Elst, T., Sercu, M., et al. (2019).Who is more susceptible to job stressors and resources? Sensory-processing sensitivity as a personal resource and vulnerability factor.
  • Perez-Chacon, M., Chacon, A., et al. (2021).Sensory processing sensitivity and compassion satisfaction as risk/protective factors from burnout and compassion fatigue in healthcare and education professionals.