回避型でも友達が多い人は「マルチプレクシティ」が低いのです

回避型の彼についての相談
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回避型でも友達の多い人がいます。それがあなたの恋人だったりすると不思議に思うでしょう。

こんなにも他人と距離を取りたがるのに、なぜ友達がたくさんいるの?と理解できないかもしれません。

ときどき、「回避型でも友達が多い人は広く浅く付き合うのが得意だから」という人がいますが、少し違います。

弱めの回避型で外向性も高ければそういう人もいるでしょうが、問題になるほどの回避型でこのタイプは少ないです。

なぜなら、広く浅くであっても彼らにとって、ネットワークを維持することは精神的負担になるからです。

回避型なのに友達が多い人というのは、マルチプレクシティ(後述)が低い状態でも、相手に対して罪悪感を覚えないのです。

友達それぞれに対し、特定の役割を担うだけの存在という見方をしているのです。交流する相手というよりも、機能を果たす役割の人という捉え方をしているといえます。

そのため、友達(のように見える相手)が増えても精神的負担を感じないのです。

そして、これによって、あなたとの絆の弱さを説明することもできます。

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マルチプレクシティとは

人間の心を知るのに必要な学問は、心理学と社会学です。

このサイトでもおなじみの心理学は、一人の個人の心や行動を中心に見るものです。

これに対し、社会学は、人と人との関係、集団、制度、社会の仕組みがどのように成り立ち、人々の行動にどう影響するかを見るものです。

社会学では、人間関係を「友達である/友達でない」「仲が良い/悪い」といったように単一的に見ることはあまりしません。ある関係が社会生活の中でどんな機能を果たしているかに注目します。

このときの一つの指標が「マルチプレクシティ(multiplexity)」です。

マルチプレクシティとは、一つの人間関係が、どれだけ多くの役割を同時に担っているかを表すものです。日本語では「多重性」「関係の多機能性」と訳すと分かりやすいです。

たとえば、ある友達が「一緒に遊ぶ相手」であり、「悩みを相談できる相手」でもあり、「嬉しいことを共有する相手」でもあるなら、その関係はマルチプレクシティが高いと言えます。

逆に、「一緒に仕事をするだけ」「授業で話すだけ」のように、役割が一つに限られているなら、マルチプレクシティは低いといえます。

ポイントは「友達が何人いるか」ではなく「友達が何個の役割を果たしているか」ということです。

友達がたくさんいても、それぞれが一つの役割しか果たしていなければマルチプレクシティは高くありません。浅い関係を複数抱えているだけということになります。

そして、この精神的な負担は人によって異なります。

マルチプレクシティの高い状態の一人と付き合うよりも、マルチプレクシティの低い状態の複数と付き合うほうが楽という人もいます。

回避型はマルチプレクシティが低いという研究結果

この社会学の指標であるマルチプレクシティを心理学に応用した、カンザス大学のオムリ・ギラス教授らの研究があります。

この研究では、参加者に複数の友人を思い浮かべてもらい、それぞれがどのような役割を果たしているかを聞き取りました。

それから、参加者の愛着スタイルを測定したところ、回避型の人ほどマルチプレクシティが低かったのです。

つまり、1人の友人が担う役割が1つか2つしかないということです。一緒に趣味の活動をする相手は、悩み相談をする相手ではないといったことです。

この研究では、「友人との結びつきの強さをどれくらい感じているか?」も聞き取っていますが、回避型の人はそれも弱いことが分かっています。

イベント後の食事を罪悪感なく断れる回避型

回避型のマルチプレクシティが低い理由は、彼らが「特定の相手に多くの役割を任せると依存が強まってしまう」と感じているからです。(これが意識的か無意識的かは人によります)

そして、この感覚で何年も過ごすうちに、それが当たり前のこととなります。

つまり、趣味のゲームを一緒にする人、食事をする人、仕事の相談をする人は全て別々に持つべきとなるのです。

相談に来ている回避型の人からも、趣味のイベントに一緒に行って、その後に食事に誘われても罪悪感なく断れるといった話はよく聞きます。

「友達」ではなく「機能」として捉えている

ここまでの説明で、回避型でも友達が多い人がいる理由がお分かりいただけたと思います。

マルチプレクシティの低い回避型にとっては、「友達」というよりも「機能」という捉え方なのです。

単一の機能を持った人間とのネットワークがどれだけ増えようと、辛くはならないのです。

例えるなら、スマホを持っている人が、自動車を買っても、精神的な負担が大きくならないのと同じです。

回避型が友達に断られてキレる本当の理由

ここまでの説明に違和感を持った人もいるかもしれません。

「私の彼氏は回避型だけど、友達が遊ぶ約束に応じてくれなかったとき、キレたりショックを受けたりする。これは友達に依存しているからでは?」

と思ったかもしれません。相談を受けているとよく聞くパターンです。

もちろん、特定の友達に強く依存していることもあります。

しかし、この場合にネガティブな感情が強まるのは、自分の目的が達成できないことが原因のことが多いです。

たとえば、ポケモンのイベントに行きたかったのに、いつも車を出してくれる友達の予定が合わないせいで行けないことにイラついているのです。

また、友達が単一の機能さえ果たさないことへのイラつきということもあります。スマホでインターネットがつながらなければ、イライラするのと同じ感覚です。もちろん本人はそんなことは意識していませんが、構造としては同じです。

相談に来ている女性が「彼氏は友達が多いけど、自分の趣味の目的のためだけに付き合っている相手ばかり、そんな付き合い方で悪いと思わないのか不思議」ということがありますが、こういった心理メカニズムなのです。

悪いと思っていないどころか、「他の役割を求めるほうがおかしい」とさえ感じているのです。

逆にいえば、自分もその役割しか果たさないといえます。趣味の友達から悩み相談をされたら、負担に感じて距離を置くのです。

回避型は恋人にも単一の役割しか求めない

回避型と付き合っている人が抱える悩みとして、自分のことを教えてくれない、深い話をしてくれない、デートの回数が少ないといったことが挙げられます。

「先輩の〇〇さんには将来のことを相談しているのに私には何も教えてくれない」「男友達とは遠出するのに私との旅行は嫌がる」といった話は相談者からもよく聞きます。

回避型が恋人に対して、こうした態度を取るのは、距離が近づくことを恐れているからです。近づいてから見捨てられたら生きていけないほどのショックを受けると無意識に学習しているのです。

しかし、距離を取ることに対して、全くといっていいほど罪悪感を覚えていなさそうだったり、深い話をしようとしたときに「え?」のような不思議そうな反応をするなら、ここまで説明したのと同じことが起こっているかもしれません。

恋人のあなたには「恋愛」の役割しか求めていないのです。

恋愛の役割が何かは人によって異なりますが、マルチプレクシティの低い回避型の理解では、悩み相談、趣味の共有、日常の問題を一緒に考えるといったものは含まれていない可能性が高いといえます。

このように、一般的な恋人同士であれば存在するであろう役割がないため、あなたは「付き合っているのに心の距離が遠い」と感じるのです。

恋人関係と社会関係資本

人間は他者とのつながりのなかで、情報や支援、安心感を得ながら生きています。

このような、人間関係が持つ力や、つながりから得られる支えを「社会関係資本」といいます。

社会関係資本は、個人の生活の安定、心身の健康、キャリア形成などに役立つものです。そして、これらをどれだけ与えてくれるかと信頼は相関します。

マルチプレクシティの低い回避型は、1人の相手から1つか2つの社会関係資本しか受け取りませんから、信頼関係が構築されにくいのです。

表面的にはその方が楽ではありますが、深い部分の絆は結ばれません。

そして、それは恋人であるあなたに対しても同じです。回避型が考える「恋愛の役割」しか与えられていないため、絆が強くならないのです。

あなたの恋人がマルチプレクシティの低い回避型であるなら、1つずつゆっくりと役割を追加していくことを意識してみてください。それが絆を強くすることにつながります。

参考文献
  • Gillath, O., Karantzas, G. C., & Selcuk, E. (2017).A net of friends: Investigating friendship by integrating attachment theory and social network analysis.
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