同世代が苦手というHSPがいます。
相手が年上だったり年下だったりすると、そこまで緊張せずに話せるのに、同級生、同僚、同じ立場の人たちの中に入ると、急に居心地が悪くなるのです。
「変に思われていないか」「自分だけ浮いていないか」「仲間として受け入れられているのか」と気になり、何気ない一言や表情にも敏感になってしまうこともあります。
これは人見知りや性格の問題ではなく、同世代の集団だからこそ生じる心理的な負担が関係しています。
同世代が苦手というHSPは、子供時代の「ピア・リジェクション」への恐れを引きずっているのです。
ピア・リジェクションとはなにか
子供にとって、学校や日常生活で関わる同世代の仲間は重要な存在です。
このような、年齢や立場が近く、比較的対等な関係にある仲間の集団を「ピア・グループ」といいます。
学校でいえば、同級生、友人グループ、部活の仲間、休み時間やグループ活動で関わる人たちなどがこれにあたります。
このようなピア・グループの中で、仲間として受け入れてもらえなかったり、否定的に扱われたりすることを「ピア・リジェクション(peer rejection)」といいます。
日本語でいうなら「仲間集団からの拒絶」といったところです。
たとえば、話しかけても無視される、遊びの輪から外される、自分だけ誘われない、悪口を言われるといったものが含まれます。
明らかに攻撃される場合だけでなく、存在を軽く扱われたり、関わりを避けられたりする場合も含まれます。
子供にとって、仲間から受け入れられることは安心感、自信、自己評価に深く関わるものです。
そのため、ピア・リジェクションを経験すると、悲しさ、不安、怒り、恥ずかしさ、孤立感などが生じやすくなります。こうした経験が繰り返されると、人と関わることへの不安が大きくなることもあります。
ピア・リジェクションと反対に、仲間から受け入れられることを「ピア・アクセプタンス」と呼びます。
HSPほどピア・リジェクションによって落ち込む
HSPはこのピア・リジェクションの悪影響を受けやすいことが分かっています。
ユトレヒト大学の研究チームが、1,207名の小中学生を対象に行った実験があります。
参加者はランダムに2グループに分けられ、以下の2つのストーリーのうち、どちらか1つを読みました。
- ピア・アクセプタンス条件:クラスメートが親切にしてくれる、良いことを言ってくれる、グループ活動に誘ってくれる
- ピア・リジェクション条件:クラスメートに冷たく断られる、悪口を言われる、無視される、グループ活動から外される
HSPほどネガティブになりやすい
それから、参加者の感情が物語を読む前後でどう変化しているかを調べたところ、ピア・リジェクション条件の物語を読んだグループの子供は、ネガティブな気分が高まっていることが分かりました。
具体的には、悲しみ、緊張、クラスメートへの怒り、自分への怒りが高まっていたのです。
そして、この傾向はHSPの子供ほど強く出ていました。
社会的サインを敏感に受け取りやすい
HSPほど仲間からの拒絶に強く反応するのは、そこに含まれる社会的サインをより細かく、より強く受け取るからです。
社会的サインとは、相手が自分をどう思っているか、グループの中で自分がどう扱われているかを判断するための手がかりのことです。
たとえば、相手の表情、目線、声の調子、距離の取り方、受け入れの態度などが含まれます。
この実験のピア・リジェクション条件の内容は社会的サインになります。これらは「自分は受け入れられていないかもしれない」と感じさせる手がかりです。
HSPはこのようなサインを強く受け取りすぎるため、たとえ仮想条件であってもネガティブな気分が強まるのです。
ピア・リジェクションを経験すると成人後も拒絶を恐れる
子供時代にピア・リジェクションを経験すると、大人になってからもその悪影響は残り、仲間外れへの恐怖心が残ります。
それによって味わった、怒りや悲しみ、自分自身の評価が傷ついた感情が喚起されるからです。
HSPの場合は、些細な社会的サインであっても、それをピア・リジェクションと受け取ってしまうこともあります。自分自身が忘れていても、仲間内からの何らかの社会的サインをネガティブに受け取っていた可能性もあります。
こうした経験によって「拒絶感受性」が高まります。
拒絶感受性とは、相手から拒絶されることを予期して恐れたり、曖昧な対人場面でも拒絶されたと感じ、過剰反応しやすくなる傾向のことです。
拒絶を恐れると他人を避ける
この拒絶感受性が高まると、他者を避けるようになります。
グリフィス大学の研究チームが、188名の成人男女(平均年齢23.2歳)を対象に行った研究があります。
この研究ではまず拒絶感受性を測定しました。
たとえば「友達にノートを貸してもらうときに、どれくらい不安になるか、また相手が頼みを聞き入れてくれそうか」のように、シチュエーションごとにどう感じるかを専用の質問票に回答する形で調べたのです。
また、社会的回避についても調べました。
これは人と関わる場面や、他人から評価される可能性のある場面を避けようとする傾向のことです。会議で発言しない、人に話しかけるのを避ける、誘われても理由をつけて断るといった行動が該当します。
これらのデータを分析したところ、拒絶感受性の強い人ほど、社会的回避も強いことが分かりました。
なぜこのような結果となるのでしょうか?
拒絶感受性の強い人は、他者から拒絶される可能性を高く見積もり、人と関わる場面を「受け入れられる機会」ではなく「傷つくかもしれない場面」と感じるからです。
その結果、拒絶される不安を避けるために、話しかける、誘う、集まりに参加するなどの社会的行動を控えるようになるのです。
つまり、社会的回避は、拒絶への不安から自分を守ろうとする対処行動ということです。
なぜ年上や年下は大丈夫なのか?
同世代が苦手なHSPでも、年上や年下は大丈夫な場合があるのはなぜでしょうか?
拒絶感受性が強いなら相手の年齢に関わらず、社会的回避の傾向が出るはずです。
しかし、そうならないHSPが案外多いのです。これには、集団に対する前提の違いが大きく関係しています。
同世代との関係では、相手と同じ集団に属しているという前提を持ちやすいため、「仲間として受け入れられているか」「自分だけ浮いていないか」といったことを意識しやすくなります。
そのため、少し距離を置かれたり、会話にうまく入れなかったりすると、それを拒絶と受け取りやすく、傷つきます。
これに対し、年上や年下との関係では、年齢や立場がもともと違うため、同じグループという前提はなく、仲間として扱われないことを自然なこととして受け止めやすいのです。
最初から距離がある関係だと考えられるため、たとえ相手との間に壁を感じても、「自分に価値がないから拒絶された」という考えには結びつかないのです。
そのため、ネガティブな感情が生じにくく、自己評価も下がりにくくなります。
このように、世代の違う相手は心理的な負担が少ないため、安心して関われるのです。
ポジティブな影響も受ける
先に紹介した実験では、ピア・アクセプタンス条件(受け入れられる条件)のストーリーを読んだ子供は、ポジティブな感情が高まることも分かっています。
そしてこの傾向はHSPほど強かったのです。
つまり、HSPは、仲間からの拒絶に強く傷つきやすい一方で、仲間から受け入れられる経験からも良い影響を受けやすいということです。
そのため、同世代との関わりに苦手意識があるHSPであっても、すべての対人関係が負担になるわけではありません。
自分を否定せず、安心して関われる相手や、気持ちを尊重してくれる相手と出会えれば、その関係はHSPにとって大きな支えになります。
むしろ、良い関係を結べる相手との交流は、安心感や自己肯定感を高め、対人関係への前向きな経験につながりやすいのです。
無理に同世代全体へなじもうとする必要はありませんが、安心して自分らしくいられる相手を少しずつ見つけていくことも大切です。
- Liu, D., van Dijk, A., et al. (2023).Are (pre)adolescents differentially susceptible to experimentally manipulated peer acceptance and rejection? A vignette-based experiment.
- Watson, J., & Nesdale, D. (2012).Rejection sensitivity, social withdrawal, and loneliness in young adults.

