アダルトチルドレン(AC)は、家族の中でタイプごとに役割を演じます。それによって、家族としての機能をギリギリのところで維持するのです。
アダルトチルドレンの代表的なタイプには、次のような種類が存在します。
一つだけとは限らずに、複数を同時に持つこともあれば、途中で変化することもあります。
アダルトチルドレンの種類には、以下の6つの典型的なものがあるとされています。それぞれのタイプを解説します。
1. ヒーロー・英雄
機能不全家族の中で、期待を一身に背負い、輝かしい実績を残すアダルトチルドレンを「ヒーロー」と言います。文字通り英雄です。
勉強やスポーツ、仕事において成功することで他のメンバーに希望をもたらしてくれるのです。
表面的には上手く行っているように見えますが、大人になっても満たされることなく、自分が育ったのと同じ家庭を再構築してしまうことがあります。
問題が隠されやすい
ヒーローのいる家庭は、外の人たちからは「あんなに素晴らしい子が育ったくらいだから、上手くいっているのだろう」と思われ、問題が隠されてしまいます。
アダルトチルドレンである本人を含め、他の誰もが家庭内ことを話しませんから、表面的に見える情報でのみ判断されるのです。
自分の育て方が正しいと思っている親
親自身も「自分の育て方が良かったからだ」と、本気で思っていることもあります。そして、親戚の集まりなどで「子供は殴って躾けることも大切だ」などと、講釈を垂れたりします。
彼らは、ヒーローである子供が成功するほどに、その間違った思考を強くしてしまうのです。
ヒーロー自身も問題に気づかない
さらに危険なことは、本人が疑問を持たないこともあるということです。他の人間よりも良い結果を残すことで「自分には親の教育方法が合っていたのだろう」と思ってしまうことがあるのです。
すると、暴力や精神的虐待に対する耐性が出来てしまいます。こういった家庭は、子供がヒーローでいる限りは永遠に変わることはありません。
挫折によって問題児になる
それまで、家族の期待を背負ってきたヒーローが、問題児になることがあります。
勉強やスポーツの成績向上は、一定の時点で限界がやってくるからです。これは周囲のレベルも上がるので、当然のことです。
抑圧したものが爆発するとき
受験や就職で失敗した時に、それまで抑えていたものが爆発します。
ちょうどその頃というのは、肉体的に成熟する時期でもあるため、力で親をねじ伏せることができるようになります。
その気になれば、1人でも生きていけるので、暴力で親を黙らせることのできない女性でも、反発しやすいのです。
挫折したヒーローは、親に対して「お前たちのせいで私の人生はめちゃくちゃになった」と言います。
家庭内の序列が変化する
ヒーローが反発すると、家庭内での序列が変化します。子供の反発に慣れていなかった親は、どのように対処して良いか分かりません。
拍子抜けするくらい簡単に、親を従わせることが出来たことで、ヒーロータイプのアダルトチルドレンの反撃はエスカレートします。やがて、毎日遊び歩いたり、家に引きこもりながら、親を虐待し金銭的援助をさせ続けるのです。
今問題となっている、中年以上の引き篭もりの人たちの中には、上記の流れを持つアダルトチルドレンが少なくはありません。
成功しても満たされない
ヒーロータイプのアダルトチルドレンは、成功しても大人になると物足りなさを感じてしまうことがあります。それが共依存につながることもあります。
成功者が弱いパートナーを求める理由
挫折することなく成長したヒーローは、大人になるにつれ期待され、賞賛されることへの欲求は強まっていきます。
やがて、勉強や仕事のように、成功への道筋が見えやすいものでは満足できなくなります。より困難な課題を求めるのです。それが、1人では生きていけないパートナーです。
起業して成功した人や、社会的地位の高い職業についている人のパートナーが、問題だらけの人ということがあります。
気づかないまま共依存へ
ヒーローが自分の心の歪みに気づかないまま、大人になると共依存に陥ります。パートナーのほうが離れられないように見えますが、お互いが離れられないのです。
そして、かつて自分が育ったのと同じような家庭を作ってしまうのです。
日本特有のタイプ
アダルトチルドレンが、勉強やスポーツで優秀な成績を残すのは、それによって家族に希望をもたらすためと言われることが多いです。実際に、子供の成功によって家庭の雰囲気を改善することはあります。
父親から虐げられている母親にとっては、子供の成功だけが「唯一の生きがい」になっていることもあります。
「成功しなければ価値がない」という思い込み
しかし、全員が最初から家族の希望となるために、ヒーローを目指したわけではありません。
最初から親が期待していたせいで、無意識に「成功しなければ価値がない」という刷り込みがされてしまうこともあるのです。
その結果として、成功し家族の希望となったというパターンが日本では多い気がします。
達成感を得ることが出来ない子供
機能不全家族にあるのは、暴力のような分かりやすい問題だけではありません。過度のプレッシャーや、教育に対する誤った認識も問題となります。
子供がどれだけ結果を出しても褒めずに「まだまだ」と言い続けると、子供は達成感を覚えることができません。
親が子供に期待することは自然なことですが、行き過ぎれば子供の発達に悪影響をもたらすのです。
親の「まだまだ」という声が聞こえ続ける
周囲から見ると明らかに無理をしているのに「努力することは苦ではないので」という人がいます。
このタイプは、子供時代に植えつけられた「お前は成功しなければ価値がないのだ」というメッセージが、潜在意識に残っているのです。
どれだけ頑張って結果を残しても、満足することはできすに無理をし続けるのです。なぜなら、どれだけ努力をしても、親の「まだまだ」という声が聞こえてくるからです。
ヒーロータイプのアダルトチルドレンの心の中には、いまだに毒親が巣食っているのです。
2. プラケーター・慰め役
家族全員が嫌な思いをしないように、慰め役をするアダルトチルドレンを「プラケーター」と言います。
一見すると、精神的に安定した強い子供に見えますが、一部の感情が欠落したまま大人になってしまうことがあります。
家族の気持ちを優先
プラケーターは、父親の暴力や浮気で傷ついた母親を慰め、愚痴を聞いたり相談に乗ったりします。時には、家族の重要な秘密を打ち明けられ、大人が決めるべきことを決めたりもします。
傷ついた家族を慰めるだけではなく、怒りを爆発させた家族のなだめ役もします。家族全員が嫌な思いをしないように、調整するのです。そして、いつも自分のことは後回しにします。
プラケーターは、誰か一人でも不快な感情を持っている人が、いればすぐに気づきます。この敏感さは、生まれ持ったものでもあり機能不全家族の中で、より研ぎ澄まされたものでもあります。
この空気を読みすぎる能力は、大人になった後も残り、常に周囲の機嫌に気を使うようになります。辛い自分の感情を見ないために、他人の感情に視点を移しているとも言えます。
顕在意識では頼られることに満足
プラケーターは、大人になってからも自分の欲求を出すことは少ないです。家族のことが心配で、自分の都合を優先することができないのです。そのせいで、自分の夢や幸せを諦めることもあります。
また、家族に求められたのと同じように、友達や同僚から求められます。周囲の人間からは、とても強くて面倒見のいい人と思われやすいのです。
機能不全の家庭で育ったなどとは、思われません。そのような評判に、本人も顕在意識では満足していることもあります。
感情の欠落
機能不全家族における親からの「あなただけが頼り」というセリフは、子供にプレッシャーとなります。
どんなに辛くても、感情を表出してはいけないという気持ちになるのです。そして、無理矢理にでも心を成長させようとするのです。
もちろん、不適切な心の成長の仕方になりますから、感情が欠落したまま大人になることがあります。
特に、怒りの感情が湧きにくいことが多いです。怒るべき場面で、無意識に抑圧してしまうのです。
とはいえ、本当にそのような感情がないわけではありませんから、心の底に溜まり続けるのです。それが、精神のバランスを崩すことにつながってしまいます。
3. イネイブラー・世話役
父親か母親、場合によってはその両方が、本来の役割を果たさない時に、それを代わりにやるのがイネイブラーです。世話役、支え役と呼ばれることもあります。
料理や洗濯、下の子の面倒を見たりします。ただでさえ壊れている家族が、それ以上に酷くなることを恐れているのです。
アダルトチルドレンに限らず、人間というのは日常の安定が続かないリスクに、大きな不安を抱くのです。
安定した家庭を維持することは親の役割ですが、その責任が果たされない時に、子供が代役を果たすのです。
精神的近親姦
イネイブラーは、親の代わりだけではなく、配偶者の代わりをすることもあります。
自分の配偶者が、妻や夫としての役割を果たしてくれない場合に、それを子供に求めてしまう親がいるのです。
大人の判断するべき事柄まで、相談することがあります。心の拠り所を求めているのです。このような関係を「精神的近親姦」といいます。
この時に、子供は負担だけではなく、期待される心地良さを感じることがあります。
パートナーの役割を果たすことは、肉体的な近親姦が行われてしまう危険も孕んでいます。
誰がその環境を作っているのか?
働きもしないアルコール依存症者がいます。彼らはなぜ、収入がないのに、お酒を飲みながら生きていけるのでしょうか?
それは、そのままでいることを可能にする人がいるからです。大抵は妻や夫です。
なぜ、そんなことをしてしまうのでしょうか。それは、必要とされることと、相手の生命の権利を握っていることに、快感を覚えているからです。
機能不全の家族を支えているアダルトチルドレンも、心のどこかで同じような心地良さを感じていることがあります。
そして、支え役となることで機能不全家族が、その状態でいることを許してしまうのです。イネイブラーとは、不健全な状態を「可能にする人(enabler)」でもあるのです。
抜けない不毛な習慣
小さな頃から、家庭をまとめて引っ張ってきたイネイブラーは、大人になってからも、仕事などでリーダーのポジションにつくことがあります。
それと同時に、プライベートの人間関係では、世話が必要な相手をパートナーにしてしまうことがあります。
家庭で身につけた「自分を犠牲にしてでも人の面倒を見る習慣」と、それによって得られる「心地良さ」が、世話の焼ける相手を欲してしまうからです。
精神や身体の虐待をする相手と、離れられなくなることもあります。
4. スケープゴート・生け贄
アダルトチルドレンの中でも、困りごとを持ち込んだり、トラブルを起こすタイプを「スケープゴート」と言います。
家族内に横たわる問題の原因が、全てその子にあるように錯覚させるための、生贄のような存在です。
病気がうれしかった思い出
幼い頃に、自分が病気になると嬉しかったという人がいます。いつもケンカしたり怒鳴りあう親が、その時だけは優しくなるからです。
一番の思い出が入院しているときに、両親が心配そうに自分を見ていたことだという人もいます。
スケープゴートの病気は、家族の厄介事を一時的に保留することがあります。そのため、愛されている実感がなくても、繋がりはできていると思えるのです。
一度この感覚をつかむと、そのうち仮病を使ってみたり、困りごとを持ち込むようになります。
元気でいるよりも、弱々しい姿でいた方が良いのだと思い始めると、やがて本当に心が暗くなるのです。
歪んだ自己主張
怒りの感情を表現することが許されない環境にいると、ゆがんだ自己主張をすることがあります。具体的には暴力、アルコール、薬物、リストカットなどが挙げられます。
これらは、今まで親の顔色ばかり伺いながら過ごしたことへの反発なのです。
外国で書かれたアダルトチルドレンの本には、スケープゴートが非行に走るのは両親のトラブルを自分に向けさせる為と書いてあることがあります。
しかし、そういった目的で行動を起こすタイプは意外と少ないです。多くは「自分がもめ事を起こせばどうにかなるだろう」という期待を持っていません。
スケープゴートが何かやらかした場合に、全ての不都合の原因がその子にあると錯覚させることはできますが、家庭内にあるいざこざが余計にこじれることの方が多いです。
そもそも、機能不全の家庭で育ったアダルトチルドレンが、非行を起こすとは限らないのです。もっと目立たない反応の方が多いのです。
愛情を計る
養子に出された子や、下の兄弟が生まれた子が、わざと親を困らせるような態度を取ることがあります。
これは親の愛情を計るために行われるもので「試し行動」と言われます。
スケープゴートタイプのアダルトチルドレンが大人になった時、恋人に対して、これと同じことをしてしまうことがあります。
弱っている姿を見せたり、嫌われるようなことをして、心配させると同時に愛情を計っているのです。このようなことをしてしまう原因は、見捨てられることへの恐れです。
それを避けるために、唯一できることが問題を起こして注目させるということなのです。子供時代に相手の注意を向けさせることができた方法を、いつまでも引きずってしまうのです。
※ここで説明した意味とは少し異なりますが、職場などで責任をなすりつけられたりイジメられたりしやすい人をスケープゴートと呼ぶこともあります。機能不全家族で育てられたことがそうなってしまう原因の一つでもあります。
5. クラウン・ピエロ・道化役
家庭内の雰囲気が悪くなった時に、おかしなことを言って、空気を良くしようとするのがピエロです。クラウンと呼ばれることもあります。
マスコットのように可愛く振舞ったり、わざと馬鹿なふりをしたりもします。
【ピエロとクラウンの違い】
道化役のことをクラウン(Clown)と言います。その中でも涙を流しているのがピエロです。アダルトチルドレンについて書かれた英語の本でもclownが使われることが多いですがここではピエロを使います。
笑いながら空気を読む
両親がケンカを始めると「何か面白いことでも言ってあげなければ」という脅迫観念を持っていたという人もいます。それが、幼い子供なりに考えた、バランスの取り方なのです。
ピエロは、いつもヘラヘラして何も考えていないように見せていますが、父や母の様子を常に伺っています。
悲惨な状況で育った彼らは、空気を読む能力に長けています。
自分まで誤魔化す
ピエロタイプのアダルトチルドレンは、大人になった時に、必要以上に笑いを取ろうとすることがあります。
そのため、面白い人と認識されることもありますが、親密になると相手から不自然に見られてしまいがちです。
親にはちょうど良くても、健全な人には過剰に映るからです。ピエロは相手が無表情だと、怒っているのかと不安になります。
険悪な雰囲気や、気まずい空気は、自らを貶めてでも何とかしようとするのです。それがやがて、自分自身をも誤魔化す手段となってしまいます。
涙の理由
サーカスのピエロが、涙のメイクをしている理由は諸説ありますが、よく言われるのは皆に笑われて本当は傷ついているから、というものです。
アダルトチルドレンのピエロもこれと同じです。悲しい素振りを見せずに、おどけて見せたりニコニコしていても、それは偽りの姿なのです。
カウンセリングに来るアダルトチルドレンの人の中には、いつも明るい表情の人がいますが、ふとした瞬間にとても悲しそうな表情を覗かせます。笑顔との対比が、悲しさをより際立たせます。
自分の感情に嘘をつき続けると、やがて心そのものを失ってしまうこともあります。
無理に笑顔を作ったりすることを「表層演技」といいます。この表層演技をする機会の多い人は、心を病みやすくなるだけではなく、仕事の成果も落ちやすいということが調査で分かっています。
子供時代に抑え続けてきた、怒りや悲しみを解放してあげる必要があるのです。
6. ロストワン・失われた子供
ロストワンとは、過酷な家庭環境を生き抜くために、自分の存在を消していたアダルトチルドレンのことです。失われた子、ロストチャイルドなどと言われることもあります。
家族が集まっているときでも、いつの間にかいなくなったりしますが、そのことに誰も違和感を覚えません。
相手の顔色を伺いすぎたり、空気を読みすぎるという特徴も持っています。
感情と期待を持たないことにした
常に緊張状態で、些細な刺激で夫婦喧嘩や暴力が始まるような家庭環境にいるロストワンは、感情を表出しません。
家族の中に波風が立ち、自分や他の誰かが攻撃されるからです。それだけでなく、傷つかないために自分の存在を消すことさえします。
アダルトチルドレンが、嵐のような家庭環境の中で生き抜くために、唯一できることが自分の存在を消すことだったのです。
また、問題を抱えた父親と、それを支える母親といった共依存状態の両親を持ってしまうと、自分の気持ちを通すことに罪悪感を覚えることもあります。
「家族が大変なときに、自分が迷惑を掛けてはいけない」という、誤った認識を持つからです。
少しでも迷惑を掛けないようにするため、言いたいことも言わずに、部屋に閉じこもるのです。そして、親もそれに甘えるため、存在しないような扱いとなってしまうのです。
これとは反対に、自分に注目して欲しいと思って、存在を消すこともあります。
他の兄弟姉妹が問題を抱えていて、そちらばかり注目されていると、最初は注目を引くような行動をとります。そして、それが叶わないときに存在を消すことで、注意を引こうとすることがあるのです。
それも叶わないと、やがて諦めて、さらに家族と距離を置きます。このとき、子供は家族に期待することをやめます。
ロストワンは、家族の中で孤立し、やがて外出もせずに引篭もりになることもあります。
なぜ関係が成り立つのか?
ロストワンの程度にも差があり、中には何年も親と口を利かなかった、という人もいます。
このタイプの人は、過去を振り返った時に、なぜ自分がそのような形で存在できたのか、疑問に思うかもしれません。
子供がそこに存在しなければ、親が何らかの行動をとるはずだからです。この行動には良いことだけではなく、暴力なども含みます。
常に緊張を強いられる子供は、夫婦喧嘩が始まったり険悪なムードを察知すると、部屋に篭ります。そのうち何もなくても、家族から距離を置くようになります。やがて、普段のコミュニケーションがなくなります。
何故、親はこの状態を放置するのでしょうか?
それは、親もアダルトチルドレンであるため、家族の面倒を見る余裕が無いからです。自分のことで精一杯なので、子供の心のケアまでする余力がないのです。
潜在意識の一部では、子供に自立して欲しいと思っているのです。子供に面倒を見て欲しいと、思っていることさえあります。
ロストワンは存在を消すことで、親を甘えさせてあげたともいえます。だから、そこに自然に存在できたのです。
自分が存在を消した場合だけでなく、親から無視されたというケースもあります。
「母親から無視されていたので家庭内に私の居場所がなくいつも一人だった」という女性は、カウンセラーからすると珍しくありません。
そういった女性に「父親は何をしていたのですか?」と聞くと「よく分かりません」という答えが返ってくることがあります。
父親に何かされたわけではないけれど、他人行儀な関係ということもあります。
このときに何が起こっていたのかというと、父親が母親のことを気にして、子供と距離を取っていたということです。
母親に意見出来なかったのか、子供と関わることで口論になることを避けたのか分かりませんが、積極的に介入することをやめたのです。
信じがたいことかもしれませんが、実際に起こることです。なぜなら、父親もまたロストワンだからです。
あなたは育てやすい子だったから
ロストワンは、大人になってから母親に「あなたは育てやすい子だった」と言われることがあります。
これを言われた方は、混乱します。本当にそんなことを思って育ててきたのかと驚くのです。
なぜ、こんなことを言うのでしょうか?それは母親がそう思い込みたいからです。
この手の母親は機能不全家族の根本原因であった、自分の夫が他界するなどして、表面上の落ち着きを得ると、過去の問題をなかったことにしたがるのです。「自分の人生は失敗だった」とは思いたくないからです。
そして、まだ生存している家族にも同意を求めるのです。
「あなたが大人しかったのは、私たちが悪いのではなく、あなたがお利口さんだったからよね」と意味の付け替えをしようとするのです。
それが、彼女なりの罪悪感の消し方であり、幸せな人生だったと思い込むための手段なのです。
孤独に強いわけではない
「子供の頃から孤独には慣れているはずなのに寂しさに耐えられない」と言う人がいます。
イギリスの精神科医ドナルド・ウッズ・ウィニコットは、幼少期に1人でいた体験が「独りでいられる能力」を育てると言いました。
これが正しければ、ロストワンは孤独に強くなるはずです。
しかし、ウィニコットの提唱した説には「母親と一緒にいる時に」という条件が付きます。
呼べばいつでも親が来てくれるという精神的なつながりや、安心感があるときに、1人でいれば孤独に耐えられる力がつくということです。
ロストワンの場合は、安心できる環境で1人だったわけではありません。
そのため、大人になった後も1人になると子供時代を思い出し余計に寂しくなってしまうのです。
※ロストワンは末っ子に多いと言われますが、私のアダルトチルドレンのカウンセリングの経験から言わせてもらえば長女でロストワンという人も珍しくはありません。
大人になった後もタイプを引きずる
アダルトチルドレン(AC)が役割を果たすことで、機能不全家族は一応の安定性を見せます。
問題が発生したときに、誰が何をすべきかという暗黙の共通認識が出来るからです。

たとえば、父親が酔っ払ったとき、当たり散らされるのは誰で、小さいきょうだいを避難させ安心させるのは誰か、ということが分かっていれば、対処することができます。
しかし、それによって本当の問題が永遠に解決されないということにもつながります。
そして、アダルトチルドレンは子供時代に身につけたタイプを、大人になった後も引きずり続けてしまうのです。
- Kritsberg. W. (1985).The Adult Children of Alcoholics Syndrome.


