結婚前からレスなら、結婚後にその解決に向かえる相手かどうかを、きちんと見分ける必要があります。
そのために確認すべきポイントは、「認知的柔軟性」と「エラーモニタリング」(後述)です。
これに問題があると、レスに向き合ってくれないどころか、性機能も低下します。
どちらも、日常のコミュニケーションのなかで、見極められるものですから、必ず確認しておきましょう。
結婚すればレスは解決するのか?
結婚前からレスというカップルは、それほど珍しくありません。何年も付き合っていれば、マンネリしてしまうのはよくあることです。
それでも、「一緒にいると幸せだし、結婚するならこの人しかいない」という気持ちは芽生えるものです。
それと同時に、結婚後もずっとセックスレスかもしれない…子供がほしのにどうしよう…と迷うこともあるでしょう。
結婚を機に、セックスレスが解消するかもという、期待を抱くこともあるかもしれません。確かにそうなることもあります。
なぜなら、性行為をしたいという感覚は、二人の関係性の影響も強く受けるからです。
セフレや、別れるかもしれない恋人とのセックスでは、妊娠したときの不安などもあり、男女ともに100%楽しめないこともあります。
それに対し、病める時も健やかなる時も愛し続けることを約束し、さらには法的結びつきもできた夫婦でのセックスは、そういった心配がありません。
そのため、自分を解放しやすくなり、セックスも楽しめます。このように、関係性の強さは性的満足度に影響を与えるものです。
とはいえ、結婚前にレスの場合、何もしなければそのままの可能性が高いです。
結婚後に向き合ってくれるタイプか見極めるポイント
レスの解消法は複数ありますから、最初は相手に気づかれずにこっそりやるべき施策もあります。しかし、それでも解決しない場合には、話し合いを持たなければなりません。
このとき、どのように反応するかは相手によって、大きく異なります。しっかりと、問題に向き合う人もいれば、はぐらかしたり、適当に流したり、怒りだす人もいます。
向き合ってくれる人かどうかを見分けるには、結婚前に「認知的柔軟性」と「エラーモニタリング」を確認しましょう。
それぞれの意味と、なぜレスの解決に必要なのかを、分かりやすく説明します。
1. 認知的柔軟性とは
認知的柔軟性とは、状況の変化や新たな情報に応じて、自分の考え方や行動を適応させる能力のことです。
レスになる原因も、その解決法も様々です。そのため、「自分に見えていなかった問題があるのでは?」「別の方法で性的親密さを作れるのでは?」といった認知的柔軟性が必要なのです。
逆に、認知的柔軟性が低いと、一度レスになった相手に対する性欲は復活しない、といった一つの考え方に固執しやすくなり、問題を解決しようという気になれないのです。
さらに認知的柔軟性がない人は、問題解決力が低いだけでなく、ストレスへの耐性も弱いことが分かっていますから、結婚生活そのものがうまくいかなくなる可能性もあります。
2. エラーモニタリングとは
エラーモニタリングとは、自分の行動や考えが間違っていないかをチェックし、必要に応じて修正しようとする脳の働きのことです。
人間関係においては、自分の言動や判断が相手を傷つけていないか、関係に悪影響を与えていないかに気づき、修正する力として働きます。
この力が乏しいと、相手が寂しさや不安を伝えても、「自分の態度にも問題があったかもしれない」と振り返ることができず、問題を相手の感じ方だけにしてしまいやすくなります。
その結果、話し合いを避けたり、同じ対応を繰り返したりして、レスの原因を整理することも改善策を考えることもできなくなるのです。
実は、エラーモニタリングは強すぎてもダメなのです。相手の言葉や自分の反応を細かく気にしすぎるため、性の話し合いを「失敗してはいけない場面」「相手を傷つけてはいけない場面」と過度に捉えてしまうからです。
その結果、本音を言う前に考え込みすぎたり、話し合いを避けたり、必要以上に謝るだけで具体的な改善策に進めなくなることもあるのです。
性機能も悪化させる
ここまで説明してきた、認知的柔軟性とエラーモニタリングは、問題に向き合えるかどうかに影響するだけではありません。
性機能そのものにも影響することが、ノースウェスタン大学のアリソン・レキウィッツ助教らの研究から、分かっています。
この実験ではまず、18歳から30歳までの489人に性的満足度、欲求、興奮、オーガズム(性的絶頂)などに関するアンケートに答えてもらいました。
その後に、頭の切り替えの速さや柔軟さ(認知的柔軟性)を調べるための、課題を実施しました。
また、エラーモニタリングを調べるために「フランカー課題」というものを行いました。これは画面に表示された矢印の列を見て、真ん中の矢印の向きを答える課題です。
このとき、参加者の頭にセンサーをつけて、エラー関連陰性電位(ERN)を測定しました。
ERNは間違いを犯したときに、脳内で発生する特定の電気的な反応で、「間違いを気にしやすい」「完璧主義」「不安傾向が強い」などの性格特性を持つ人ほど、強く出るとされています。
実験から得られたデータを分析したところ、以下のことが分かりました。
- 認知的柔軟性が高い人は性機能が高い
- エラーモニタリングが強い人(間違いを気にしすぎる人)は性機能が低い
これらの結果は参加者の性別に関係なく、男性でも女性でも同じ傾向が見られました。
なぜ柔軟な考え方が性機能に影響するのか?
なぜ認知的柔軟性の低さと、エラーモニタリングの過剰な活性化が、性機能に影響するのでしょうか?
それぞれのメカニズムを説明します。
1. 認知的柔軟性が影響するメカニズム
認知的柔軟性の高い人は、性的な場面でも自分の欲求や感情だけでなく、パートナーの気持ちやニーズにも適切に対応できます。
たとえば、パートナーが新しい試みに興味を示したときや、予期せぬ出来事が起こったときでも、冷静に受け止めて臨機応変に行動できるのです。
これにより、相互のコミュニケーションが円滑になり、結果として性的満足度が高まります。
また、性行為中に生じるさまざまな感情や感覚にも適応しやすく、ネガティブな感情(緊張や不安など)が生じても、それに囚われずに再びポジティブな気分へと切り替えることができます。
このような、心の切り替えの速さは、性的満足度を高める重要な要素です。
一方、認知的硬直性(認知の柔軟性が低い状態)が強い人は、状況の変化にうまく適応できず、一つの考えや感情に固執してしまう傾向があります。
たとえば、性的な場面でうまくいかなかったことに過剰にこだわったり、パートナーの反応をうまく読み取れずに不適切な対応をしてしまうのです。
また、自分が思い描いた「理想の流れ」に固執することで、少しでも予想外のことが起こると不安やストレスを感じやすくなります。
これらの要素が積み重なることで、性的満足度が低下したり、性機能に支障をきたすのです。
2. エラーモニタリングが影響するメカニズム
エラーモニタリングが強い人は、性的な場面でも「自分はうまくやれているか」「失敗していないか」といった点に意識を向けがちです。
このような状態では、性的な楽しさや快感に集中できず、自分の行動を外側から見つめて評価するような意識状態になります。
これを心理学では、「スペクテイティング(spectatoring)」と呼びます。
スペクテイティング状態になると、観客のように自分自身を観察し、「ちゃんと満足させられているか」「今の自分は魅力的に見えるか」など、批判的な目で自分を見てしまう傾向があります。
この状態に陥ると、リラックスして性的な経験を楽しむことが難しくなり、緊張や不安が高まりやすくなります。
その結果、性的興奮が低下したり、オーガズムに達しにくくなるなど、性機能の低下につながるのです。
また、エラーモニタリングが過剰な人は、自分が「失敗した」と感じる場面に強い不安を抱きやすく、その不安が次回の性的経験にも影響を及ぼし、パフォーマンス不安や回避行動を引き起こすことがあります。
これが慢性的になると、性的満足度の低下だけでなく、性機能障害(例えば勃起不全やオーガズム障害)を引き起こすリスクも高まります。
結婚前に認知的柔軟性とエラーモニタリングを見極める方法
以上のように、認知的柔軟性と、エラーモニタリングは、問題への向き合い方と、性機能に影響するものです。
結婚前からレスなら、それが解決できるかどうかに大きく関わりますから、事前に見極めましょう。どちらも日常会話から確認できます。
1. 認知的柔軟性の確認方法
認知的柔軟性は、自分と違う考えを聞いたときの反応を見ると分かりやすいです。
認知的柔軟性がある人は、意見が違ってもすぐに否定せず、「たしかにそうかも」と一度受け止めます。自分が間違っていたときも、言い訳せず、直そうとします。
反対に、柔軟性が低い人は、自分の考えにこだわりやすく、「普通はこうでしょ」「俺はこういう人間だから」と話を終わらせがちです。
2. エラーモニタリングの確認方法
エラーモニタリングが弱い人は、相手が傷ついても気づきにくいです。指摘しても「そんなつもりじゃない」「気にしすぎ」と流しがちです。同じ失言や無神経な態度を、繰り返すこともあります。
反対に、強すぎる人は、少しの沈黙や表情の変化にも「怒ってる?」「何か悪いことした?」と過剰に反応します。謝りすぎたり、本音を言えなくなったりします。
エラーモニタリングのバランスが良い人は、相手の反応に気づきつつ、落ち着いて「今の言い方よくなかったね」と修正できます。
ダメだと思ったら結婚前に別れる決断を
認知的柔軟性が低かったり、エラーモニタリングが両極端な人と、結婚前からレスの場合、結婚してからも解決するのは難しくなります。
妊活が必要になったときも、協力しない可能性があります。向き合わない相手とのレスを解消するのは、ほぼ不可能です。
自分のパートナーは、ダメなタイプだと思うなら結婚は考えたほうが良いでしょう。
もちろん、どんなに頑張ってもレスが解消しないこともあります。
そんなときでも、相手が向き合ってくれていれば、あなたの精神的なダメージは抑えられます。
一方で、全く向き合ってくれなかった場合には、虚しさや怒りといったネガティブな感情が何年も残り続けることがあります。
そして、離婚を選択した場合にも、「無駄な結婚生活だった」と後悔してしまいがちです。こういった点にも鑑み、恋人が向き合うタイプかどうか確認してください。
- Letkiewicz, A. M., Li, L. Y., et al. (2024).Cognitive inflexibility and heightened error monitoring are related to lower sexual functioning.

