仲良いけどレスのカップルは「親密性-欲望パラドックス」に陥っている

仲良いけどレスというカップルは、感情が引っ張られすぎているのです。それによって、性的欲望が失われているのです。

付き合ったばかりの頃は、興奮がありますから何の努力をしなくともお互いを求め合うことができます。しかし、この状態は時間の経過とともに落ち着いていきます。

恋愛の新鮮さをもたらす、脳内のフェニルエチルアミンというホルモンは同じ相手に対して、半年から3年で分泌されにくくなるから当然です。

このように関係が落ち着いた後でもレスにならないためには、親密さが必要となります。親密さが高まり「この人と一緒にいたい、もっと近づきたい」と思い合っているカップルは下心ではない、愛によるセックスを継続できます。

しかし、親密さが増してどんどん仲が良くなっているのに、レスというカップルもいます。なぜこのような状況に陥るのでしょうか?

それは「インティマシー・デザイア・パラドックス」という現象が起こっているからです。

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最初から話し合いをしてしまうと、逆効果になりやすいので注意してください。

インティマシー・デザイア・パラドックス(親密性-欲望パラドックス)とは

インティマシー・デザイア・パラドックス(The Intimacy-Desire Paradox)とは、カップル関係が親密になるほどに、性的欲望が低下するという逆説のことです。

日本語でいうなら「親密性-欲望パラドックス」といったところです。

基本的には仲良くなるほど性的欲望は高まる

基本的には、カップルの仲が良くなるほどに親密性が増し、性的欲望は高まるとされています。

なぜなら人間が興奮以外の要因でセックスするためには、心理的安全性が必要であり、親密性が高まるほどにそれを得やすくなるからです。

親密性が増すことで、様々な心理的安全性が得られますが、代表的なものを挙げるなら「裏切られない」という安心感です。具体的には次のようなことです。

  • 女性が感じる安心感:私を妊娠させた男が裏切って逃げたら、私と子供は飢え死にしてしまう。親密な相手ならその心配はないわ。
  • 男性が感じる安心感:女が裏切って他の男とも関係を持ったら「あなたの子よ」と言われ他人の子供を育てさせられる。親密な相手ならその心配はないぞ。

他にも、親密な相手なら体型やテクニックを貶されて傷つく心配がないため、自分を解放しやすくなることなどが挙げられます。

仲良しなせいで性的欲望が低下する

ここまで説明したように、仲良しなカップルほど付き合った当初の興奮がなくなった後でも、レスにはなり難いはずなのです。

それにも関わらず、仲は良いのにレスになってしまうカップルがいます。なぜでしょう?

それは、たとえ興奮に頼らなくなるといっても、相手の予想外の反応で脳に刺激を与える必要はあるからです。

しかし、カップルによっては親密になるほどに、相手の反応が完全に予測可能となってしまい、こうした刺激が得られずレスになってしまうのです。

「親密性-欲望パラドックス」に陥るということです。

では親密さが増すことで性的欲望が高まるカップルと「親密性-欲望パラドックス」に陥るカップルでは何が違うのでしょうか?

親密になっても性的欲望が落ちないカップルの特徴

カップル間の親密性と性的欲望の関係を調べた、リスボン大学のルアナ・フェレイラ教授らの研究があります。

これは過去に行われた、恋愛やセックスに関する研究データを統合して再分析したものです。

この研究から分かったことは、カップルは長年一緒にいて親密性が増したからといって、性的欲望まで高まるわけではないということです。それどころか低下するケースも多々ありました。

なぜならパートナーが他者ではなく、自分の一部になる「融合」状態になってしまうからです。

この状態になると性欲はおろか「愛する人とつながっている感じを身体でも確かめたい」という性的欲望さえ維持できないのです。

逆に、どんなに親密になっても融合せずに「別々の個人」という感覚を持っている人たちの性的欲望は高く維持されていることも分かっています。

なぜ融合したカップルはレスになるのか

もし、あなた方カップルが仲良しだけどレスになっているのなら、融合してしまっているのです。

人間は基本的に「自分とは別の存在」に惹かれるものです。

しかし、融合して相手を自分の延長のように感じると、好奇心や神秘性、緊張感が弱まり欲望を生み出すための僅かな火種さえ失われるのです。

特に感情が大きく動いたときの融合は、悪影響を及ぼします。

たとえば、あなたが職場で嫌なことがあって、不機嫌な状態のままデートに行ったとします。

このとき、恋人まであなたの感情に引っ張られて、不機嫌になったりオドオドしたら、あなたは無意識のうちに相手を自分の一部のように感じるのです。

こういったことが繰り返されるうちに、双方が相手のことを「自分の感情に引っ張られる人」と認識します。つまり、自分の心のコピーのように感じてしまうのです。

自分に惹かれる人はいませんから、レスになるのです。

仲良しカップルがレスから抜け出す方法

ここまで見てきたように、融合によって性的欲望を失わないためには「親密でありながら別々の個人でいられる力」が必要なのです。

では仲良しカップルがレスから抜け出すには、どのようにこの力を獲得すれば良いのでしょうか?

大切なことは仲が良い状態を保ちつつ、相手に溶け込みすぎない意識を持つことです。

具体的には以下のことが役立ちます。

1. いつも一緒にいることが愛情、という錯覚を捨てる

仲良しカップルは「好きだから一緒にいたい、何でも共有したい」という気持ちが自然と強くなります。

そして、予定や趣味、交友関係まで一緒にしたがります。何でも共有しているうちに、いつでも一緒にいることが愛情であると錯覚します。

しかし、これは親密さというよりも融合です。やがて考え方や価値観まで揃ってしまいます。

まずは、こうした錯覚を取り除き、会えない時間が関係と気持ちに余裕を作ると認識しましょう。

2. 自分だけの時間・関心・人間関係を持つ

性的欲望を高めるには、安心感だけでなく、相手に対するちょっとした好奇心や、新たな発見が必要です。

「この人にはまだ私の知らない部分がある」と感じられることが、相手を新鮮な存在として見直すきっかけになるのです。

そのためには、お互いが相手の知らない経験を持つ必要があります。

たとえば、一人で出かける、別々の友人と会う、それぞれの趣味を持つ、仕事や学びで自分なりの世界を育てるといったことです。

このような離れている時間があるからこそ、再会したときに「今日はどうだった?」と相手に関心を向けられるのです。

3. 相手の機嫌を取りすぎない

融合している状態のカップルは、相手の感情に引っ張られるだけでなく、それが悪いものだったときには機嫌を取ろうとします。

なぜなら、相手の感情を自分のもののように感じているため、相手の機嫌を取ることが自分の心理的安全性につながるからです。

そして、相手の感情ばかり優先し、自分の本音が消えていきます。その結果、個性がなくなり相手から見たときに「別の感情を持つ他者」と認識しにくくなるのです。つまり余計に融合が進むのです。

こうならないためには、相手の気持ちを尊重しつつ、自分の気持ちも同じくらい尊重することです。何かを強く主張しろということではありません。ただ自分がどう感じたかを配慮しながら伝えるようにすれば良いのです。

相手にとっても「本当は嫌だったのに合わせていた」と後から知るより「今はこう感じている」とその場で共有されたほうが、お互いの認識を調整しやすくなります。

4. 性的好みを安心して共有できる関係になる

研究では融合しやすい人ほど、相手からの評価を恐れ、自分の意見を主張できないことも分かっています。

そのため、本当の性的好みが言えずに、いつも同じプレイの繰り返しとなりマンネリが加速します。

自分の性的欲求を安心して表現できること自体が、性的欲望を高めることが研究からも分かっています。

「こういう行為が好き」「これは少し苦手」といった会話を、安心して共有できる関係をつくってください。

これは、お互いを別々の身体と感覚を持つ他者として捉え直し、新鮮さをよみがえらせることにも役立ちます。

距離感を作り直して「もう一度触れたい」と思わせる

仲良しなカップルがレスになると「なぜこうなってしまったのだろう?相手はどう思っているのだろう」と不安になり、余計に距離を詰めようとします。

しかし、そのせいで融合が進んで余計にレスが悪化するということもあります。

仲良しカップルがレスを解消するのに必要なのは「知ること」より「知らないを増やすこと」なのです。これは無関心になることではなく、お互いを尊重することです。

近年の研究では、性的な場面で相手の自律性を尊重し合えるカップルほど、性的な充足感や満足度が高まりやすいことも分かっています。

適切な距離感を作り直すことで「もう一度触れたい」という気持ちを喚起しましょう。

参考文献
  • Ferreira, L. C., Narciso, I., & Novo, R. F. (2012).Intimacy, sexual desire and differentiation in couplehood: A theoretical and methodological review.