レスになると旦那に優しくできないのは、おかしいことではありません。
性的な不満が溜まると、意識していなくとも心の余裕が失われ、相手を思いやることができなくなるからです。
特に女性の場合は、性行為に対して愛情や情緒的なつながりを求めやすく、それが満たされないと寂しさや虚しさを感じ、余計に優しくなれません。
また、愛着不安や、相手の性的ニーズを満たしてあげたいという気持ちの強い人ほど、レスになったときに怨恨・反感を抱きやすいことも分かっています。
このような状態に陥ってしまったときは、焦ってレスを解消するよりも、ポジティビティ・レゾナンス(後述)を意識してみましょう。
レスで旦那に優しくできない理由
人間は欲求不満の状態だと、それを満たすことばかりに意識が向き、心の余裕がなくなります。
空腹時や睡眠不足のときに怒りっぽくなるのも、食欲や睡眠欲が満たされず、そこにばかり意識が向くからです。
自分で意識していなくとも、生存本能によって脳はそちらにリソースを割くのです。
もちろん、性欲もです。レス状態で満たされなければ、脳はそれを何とかせねばとなるので、相手を思いやる余裕など持てないのです。
しかも、レス夫婦の場合、その原因を生み出すのは配偶者なので、旦那に余計に優しくなれないのです。
女性がレスで旦那に冷たくなる心理
あなたが女性であれば、さらに厄介かもしれません。
欲求不満というと、肉体的な快楽が得られないことの問題に感じるかもしれません。
しかし、レスによって満たされないのはそれだけではないのです。精神的な部分も満たされないのです。
こちらの不満は、旦那に優しくする余裕をさらに失わせます。
203組のカップルの調査
人が「性的欲求」というとき、具体的には何を求めているのでしょうか。
それを調べたケンタッキー大学のクリステン・マーク博士らの研究があります。
この研究では、3年以上交際し、同居している203組のカップル(69%は既婚)を対象に、セックスに何を求めるかを聞き取りました。
その回答を分析したところ、男性と女性では以下の差があることが分かりました。
男性が強く求めるもの
- 性的解放(スッキリすること)
- オーガズム
- パートナーを喜ばせること
女性が強く求めるもの
- 親密さ
- 愛情・情緒的なつながり
- 自分が性的に魅力的だと感じられること
こうした男女差は、レスの相談を受けていても感じることです。
自分の価値を疑い優しくする余裕がなくなる
この結果から分かるように、女性の性的欲求は愛情や精神的なつながりが含まれることが多いです。
それが満たされないと、寂しさや虚しさを感じるのです。さらには、自分の価値まで疑い、自己肯定感が下がります。
それによって、旦那に優しくする余裕はさらに失われるのです。
レスになったときの4つの反応
レスで旦那に優しくできないという女性は、断られる側であることが多いです。
トロント大学のジェームス・キム博士らの研究によると、性的な誘いを断られたとき、大きく分けて次の4つの反応になることが分かっています。
- 相手を理解:拒絶を受け入れ、愛情や好意を示し続ける
- 怨恨・反感:怒りを表出したり、相手を責めたり、冷淡な態度を取る
- 不安・傷つき:悲しみや傷つきを感じ、自分の魅力や関係性に疑問を抱く
- 説得:性的な働きかけを続け、相手の気持ちを変えようとする
怨恨・反感が強いと、拒絶されたときに相手に優しくなることができません。
性格的な特徴とレスになったときの反応の関係
上記の研究では、断られたときの反応が、以下の性格的な特徴と相関するかということも調べています。
- 性的共同性:パートナーの性的な欲求やニーズを大切にし、それに応えようとする意欲。
- 攻撃的気質:日常的な怒りや敵意の感じやすさ、攻撃的な言動の取りやすさ。
- 愛着不安:パートナーに愛されているか、見捨てられないかを不安に感じる傾向。
- ナルシシズム:自分を特別な存在だと考え、他者からの賞賛や評価を強く求める性格傾向。
その結果、「怨恨・反感」だけはすべての特徴と相関があったのです。
つまり、上記のどれか1つでも持っていると、性的誘いを拒絶されたとき、怒りを感じたり、相手に優しくできなくなりやすいということです。
愛着不安の人が優しくなれない理由
「レスで旦那に優しくできない」と相談に来る女性を見ていると、様々な性格の人がいます。
個人的な感覚では、上記の中では、愛着不安を抱えている人が多いように思います。
一般に愛着不安の強い人は、自己肯定感が低く、見捨てられ不安などもあるので、傷つきやすいです。なので攻撃的になるというよりは、落ち込んでさらに自信を失っていくというパターンに陥りやすいです。
しかし、不安が、怒りや精神的な余裕のなさにつながると、相手に優しくできなくなることもあります。
捉え方がネガティブになっている
それともう一つの原因として、捉え方の歪みもあります。
愛着不安が強い人によくある特徴として、相手の言動をネガティブに捉えすぎるということがあります。LINEの返信が遅いだけで「嫌われた」と決めつけてしまったりするのです。
レス状態になると、「愛情がなくなったからだ」と決めつけるのです。
しかし、旦那側の拒否によってレスになっている場合、その原因が愛情の喪失であるケースは少ないです。
たんに性的興奮が失われただけというパターンが多いのです。
先に紹介した研究の通り、男性はセックスに、性的解放やオーガズムを求めます。要するにエロい興奮によって動機づけされているのです。
そして、この動機は、人間という動物の仕組み上、同じ相手に対して長くても3年程度しか維持されません。つまり、愛情があろうとなかろうと、夫婦はレスに向かうものなのです。
(そこから先は、愛情によるセックスもしくは、アートとしてのセックスに移行しなければレスは解消されません)
レスで旦那に優しくできない人は、まずは自分の捉え方がネガティブになりすぎていないか、検証してみてください。
ポジティビティ・レゾナンス
夫婦はいつも一緒にいることで、様々な感情を共有することになります。
どんな感情を共有するかによって、夫婦関係は変化します。
レスに陥ると、日常のコミュニケーションにおいても、悪い部分にばかり注目してしまいます。そしてお互いにネガティブな感情が生じ、それを共有してしまうのです。それによって余計に優しくなれないのです。
この状態から抜け出すためには、意識して前向きな感情を共有することです。それによって、心身にプラスの影響が出ることが研究で分かっています。
これを心理学ではポジティビティ・レゾナンス(Positivity Resonance)といいます。
たとえ短い時間でも、ポジティブな感覚を共有する瞬間を持つことで、自分自身の精神衛生も良くなり、夫婦関係はよくなります。
共有する感情によって寿命が変わる
ポジティビティ・レゾナンスは、将来の健康状態や寿命を予測する強力な因子にもなります。
カリフォルニア大学バークレー校の夫婦の仲の良さと健康に関する研究があります。
この研究では154組の夫婦の会話シーンを録画し、それぞれの反応から感情をどれほど共有できているかということを数値化しました。
それから数年にわたり追跡調査したところ、ポジティブな感情を共有できている夫婦ほど健康で長生きする可能性が高いことが分かったのです。
ネガティブな感情を共有している夫婦にこのようなプラスの効果はありませんでした。
旦那と妻の初期の健康状態、人口統計学的特性、健康関連行動、個別に経験したポジティブな情動を考慮しても、夫婦の感情の共有のレベルと健康・長寿との関連性は強固でした。
最初から「優しくしよう」と思わなくて良い
レスで旦那に優しくなれないのは自然なことです。そしてレスを急に解決することはできません。
ですから、まずはポジティブな情報を共有することから始めてみてください。
そうすることで、その情報と旦那が紐づけされるので、自分の気分を良くしてくれる存在と脳が学習します。
それと、イライラしたときは「旦那と自分の心は別物」と境界を意識し、事務的に処理しましょう。
これを自己分化といいます。自己分化で適度に距離を置いている夫婦はセックスレスに陥りにくいことも分かっています。
また、上手くいくカップルはお互いが「自分にとって大切なことは自分に決定権がある」と思えているという研究もあります。
お互いにどうしても譲れない価値観はそれほど多くはないでしょうから、それを共有し尊重し合うことも大切です。
レスの状態で急に「優しくしよう」とすると難しいですから、まずは「良い情報を共有しよう」という意識を持つことから始めてみましょう。
- Mark K, Herbenick D, et al. (2014).The Object of Sexual Desire: Examining the “What” in “What Do You Desire?”
- James J. Kima, Rebecca M. et al. (2019).Development and validation of the responses to sexual rejection scale.

