もし、あなたが夫とのセックスレスに悩んでいたとして、あなたに依存傾向があるならそれを克服したほうが良いです。
レスになりやすい夫婦の特徴を一つ挙げるなら、どちらかが依存しすぎているせいで「自律性のレベル」が合っていないことです。
研究でも、お互いの自律性に差がある夫婦は性的欲求が低いことが分かっています。
反対に、同じレベルで自律性を持っている夫婦は性的欲求が高いということも分かっています。
自律性と依存
自律性とは、その名の通り自分をコントロールする力のことです。自分で考えて、解決できる能力と言い換えることもできます。
依存気質のある人はこれが低い傾向にあります。自己と他者の切り離しが上手くできていないからです。
不安や悩みが生じたときに、その負担を相手にも共有してほしいという欲求も強いのです。
1人でいるときは大丈夫なのに、パートナーができたら途端にダメになってしまうという人もいます。
そして、どちらかがこのような特徴を持つ夫婦はレスになりやすいといえます。
夫婦のレスと自律性の関係
リスボン大学のルアナ・フェレイラ博士らが、夫婦(平均同居期間12.7年)を対象に自律性と性的欲求の強さについて調べた研究があります。
ここでいう自律性とは、自分とパートナーをどれだけ別の存在として切り離せているか、分化できているかということです。
具体的には「DSI-R(Differentiation of Self Inventory-Revised)」という専用の質問票で、その傾向を調べています。
- 情動反応性:他者の感情に巻き込まれやすいか、強く反応しやすいか
- 自己の立場:他者に流されず、自分の考えや価値観を保てるか
- 他者との融合:近しい人との心理的境界が曖昧になりやすいか
- 情緒的断絶:親密さを避けたり、距離を取りすぎたりする傾向
自律性の合っていない夫婦は二者間の性欲が低い
この研究によると、お互いの自律性のレベルが合っている夫婦は性欲が強い傾向にあることが分かりました。
ここでいう性欲とは、ムラムラしやすいという単独のものだけでなく、パートナーと性交したいと思うかという二者間のものも含みます。
反対に自律性のレベルに差がある夫婦は、性欲が弱いことも分かりました。
つまり、どちらか一方が過度に依存しているか、反対に過度に自律していると性欲は弱くなるということです。
なぜ自律性が夫婦間のレスに関係するのか?
相談を受けていると、本人は気づいていなくとも自律性のレベルが合っていないせいでレスになっているという人は多いです。
特に拒否されている側の自律性が低いです。これはレスになる典型的なパターンともいえます。
パートナーに対する性的欲望を持つためには、緊張感や新奇性が必要です。しかし、自律性が低下した人は心の境界がなくなるため、相手に悪い意味での一体感を抱かせてしまうのです。
相手からすると反応が読めてしまうため、興奮しにくくなりレスになるのです。
もちろん、片方の自律性が高くなりすぎている場合も、必要以上の緊張感を生んでしまい、レスになることもあります。
自律性を高めることでレスが解消するケースは多い
別の研究ではレスのカップルが、お互いが別の存在であるということを意識して自律性を高めると性欲の増進につながるということも分かっています。
当カウンセリングルームは妻側(彼女側)が単独で相談に来るケースがほとんどなのですが、妻だけが自律性を高めることでレスが解消するケースも多いです。
夫との心の切り離しを上手に行い、自律性を高めると醸し出す雰囲気が変化します。すると、夫に与える印象も変わり、無意識に新鮮さを感じさせ、興奮がよみがえさせられるのです。
「自分のこと」と「相手のこと」という境界が明確になることで長年一緒にいても、お互いに新たな発見があるので新鮮さを維持できるのです。
また、自分が拒否する側だったとしても、心の健全な境界線によって適度な境界が蘇り興奮しやすくなるともいえます。
レスにならないための自律性をどう保つか
このように、自律性を持つことで、夫婦の距離が近づきすぎても、そのデメリットを消して興奮を維持してくれます。
これはパートナーとの間に壁を作るということではありません。お互いの感情は別のものという認識を持つということです。
また、何か挑戦したいことがあるとき、相手に気を遣いすぎず、自主的に行動することも含みます。
近い距離感と独立した心は相互に作用する
近い距離感を持ちながら、独立した心を持つということに矛盾を感じるかもしれません。
しかし、この2つは直線上の両極端にあるものではありません。円の上にあって相互作用するものなのです。
ロマンチックな関係に組み込まれたいというニーズと、個人として独立していたいというニーズのバランスについて調べた、社会心理学者エリカ・スロッターらの研究があります。
この研究によると、カップルは親密なニーズが満たされていると感じたとき、独立した自分でいることへの関心が強まり、独立した自分でいると感じたとき、自分とパートナーの親密さにフォーカスしようとする傾向があることが分かっています。
どちらかのニーズが満たされると、もう片方を求め、それが満たされると再びもう片方を求めるというサイクルが存在するのです。
適度な自律性を持つ方法
適度な自律性を持つために何をすれば良いでしょう?
それは関係の外に興味を持ったとき、それに積極的に参加することです。
趣味やサークル、習い事でも良いのです。自分の新たな一面を目覚めさせるような行動を起こすことです。
すると、あなただけでなくパートナーも興奮を維持することができます。今まで知らなかった側面を見ることとなり、新鮮さがよみがえるからです。
また心の境界を意識することも必要です。
パートナーの気持ちを理解することは大切ですが、気持ちに引っ張られてはいけないということです。
相手が不機嫌だからと、自分までそうなってはいけません。感情の境界を曖昧にしておくと、心の独立を阻害する大きな要因となります。
心の独立が果たされることで、夫婦はお互いの行動や心理を完全には読めなくなります。
このように適度に「謎」の部分を残しておくことは、長年一緒にいる夫婦の興奮を冷めさせないためにも大切なことです。
完全に理解できる異性よりも、ミステリアスな部分のある異性のほうが性的興奮は高まりやすいのです。
それでもレスの夫婦が陥る落とし穴
レスのカウンセリングに来る人に、適度な距離感を持つことの大切さを説明することが多いのですが、中には「私たち夫婦はお互いに自律性が高いのにほぼセックスレスです」という人もいます。
このように自律性のレベルが高いと自認している夫婦は、大きな落とし穴にハマっている可能性があります。
それは単に冷めているだけの状態になっているということです。
これはレス解消のために自律性を高めようとする人もついやらかしてしまうことなのですが、適度な距離を持つというのは割り切った関係になるということではないのです。
相手のことを思いやり、感謝の気持ちを持った状態で尊重するということなのです。
レスの解消に感謝の気持ちが重要な理由
夫婦の営みを維持したり、レスを解消するためには感謝の気持ちが非常に重要です。
なぜなら感謝によってセックスの誘いに応じやすくなるからです。これは研究からも分かっていることです。
セックスに応じたい気持ち(SCS)

パートナーの性的ニーズに応えようとする動機づけの程度のことを「SCS(Sexual Communal Strength)」と呼びます。
セックスの誘いにどれくらい応えたいと思うかの指標と言い換えることもできます。
夫婦の双方が高いSCSを持つことは、関係を維持するうえでもセックスレスを防止するうえでも重要です。
感謝がSCSを高める
このSCSが感謝の気持ちとどのように関係するかを調べた、ノースカロライナ大学のアシュリン・ブレイディ博士らの実験があります。
実験では参加者に最近の出来事について記述してもらったのですが、グループごとに以下の条件が割り当てられました。
- パートナーに感謝の気持ちを持ったときのことについて書く
- パートナーから感謝の気持ちを表現されたときのことについて書く
- 自分が体験した楽しかった出来事を書く
その後に、さきほど説明したSCSの程度を調べるアンケートにも回答してもらいました。
するとパートナーに感謝の気持ちを持ったときのことについて書いたグループと、感謝の気持ちを表現されたときのことについて書いたグループの人はSCSが高まることが分かったのです。
感謝の気持ちがパートナーの価値を再認識させる
感謝の気持ちは相手の価値を再認識させ、その関係を維持する動機を高める働きがあるとされています。
感謝を表現することで、パートナーとの関係を維持しようとするモチベーションも高まります。
それが相手の性的ニーズに応えようという欲求にもつながるのです。
感謝を受け取るとやりがいが生まれる
人は感謝の表現を受け取ることで、その体験にやりがいを感じます。人はやりがいを感じさせてくれる相手を好きになる傾向があります。
すると、「相手が重要と考えているであろうニーズを満たしてあげたい」という欲求も高まるのです。当然セックスの誘いというのは、相手にとって重要なニーズです。
つまり、感謝の気持ちを伝えることも、受け取ることも相手からのセックスの誘いに応じようという欲求を高めてくれるということです。

レスを解消するには感謝の気持ちを持ちながら、自律性を高めることが大切なのです。
逆にこれがない夫婦は、今は大丈夫でも将来的にはレスになるリスクが高いということです。
- Ferreira, L. C., Narciso, I., et al. (2015).Partner’s similarity in differentiation of self is associated with higher sexual desire: A quantitative dyadic study.
- Slotter, E. B., Duffy, C. W., Gardner, W. L. (2014).Balancing the need to be “me” with the need to be “we”: Applying optimal distinctiveness theory to the understanding of multiple motives within romantic relationships.
- Brady, A., Baker, L. R., et al. (2021).Gratitude increases the motivation to fulfill a partner’s sexual needs.


