当方にセックスレスの相談に来ている人の中には「レスなら浮気は仕方ない」という感覚になっている人もいます。
拒否する側は「相手も溜まりますから」という感覚、拒否される側は「相手が満たしてくれないのだから」という感覚を持っていることが多いです。
「私としたくなくても、他の人とはしたいでしょうから」という人もいます。
後述しますが、レスになった夫婦やカップルのおよそ4人に1人は浮気をするという調査結果があります。
これは相談を受けている私の感覚とも一致する数字です。つまり、レスで浮気するのは決して珍しいことではないのです。
しかし、この状態を放置すると離婚や破局につながります。
ちなみに、どれくらいの夫婦が離婚するかは「セックスレスの離婚率は74.2%と判明。日本は56.8%」の記事を参考にしてください。
たとえ、浮気をしていなくともそのリスクがあるなら、破局の可能性は高いです。
レスはすぐに解決するものではないので、その間に別れてしまわないための施策も必要です。
どうすれば良いかといえば、関係から得られる利益を最大化するような行動を取ることです。
レスで浮気をする理由は「社会的交換理論」で分かる
レスで浮気をする理由の一つは欲求不満です。
性欲は人間の本能的な欲求ですから、それがパートナーで満たされなければ他の人としようとなるのは自然な思考です。
しかし、それを行動に移す人と移さない人がいます。倫理観の違いと思うかもしれませんが、その背景には脳内で自動的になされる計算があります。
「社会的交換理論」
私たちは人間関係のなかで無意識に、報酬(得られるもの)とコスト(失うもの)を比べています。そしてその差(利益)をもとに判断や行動をしています。
これを社会心理学で「社会的交換理論」といいます。
たとえば結婚生活においては、そこで得られる愛情や安心、社会的評価は「報酬」になります。失われる自由やストレス、欲求不満は「コスト」になります。
この差が大きなマイナスになると、別れを選択するということです。
浮気の損得勘定
とはいえ、関係上の利益がマイナスになったときの選択肢は離婚だけではありません。
浮気も選択肢に入ってきます。自分が意識しているかどうかに関わらず、レスになったときに次の計算をしているのです。
- 夫婦関係:報酬(愛、安心、世間体) - コスト(性的、感情的な不満) = ?
- 離婚:報酬(自由、新たな可能性) - コスト(孤独感、経済的負担) = ?
- 浮気:報酬(性的満足、ときめき) - コスト(罪悪感、家庭崩壊、慰謝料) = ?
何が報酬とコストになるかは人によって違いますが、浮気の利益が圧倒的に大きくなった人が浮気をするということです。
後述しますが、この損得勘定を意識しておくことが良好な関係を継続するためには重要です。
セックスレスの浮気率は25.9%
セックスレスになった夫婦やカップルのうち、どれくらいの割合が浮気をするのでしょうか?
このデータはほとんど存在しません。「セックスレス 浮気率」とネット検索しても出てくるのは、浮気の理由としてレスを挙げた人の割合ばかりです。
レス状態になった人のうち何人が浮気をするのか、という数字ではないので「浮気率」とは言えません。間違えないように気をつけましょう。
なぜか論文が手元にありました
そんな中、ジョージア州立大学のデニース・A・ドネリー博士らの研究では、浮気率が判明しています。
2008年に発表された少し古いものなのですが、なぜか私はこの論文を持っていました。
それほど引用数もありませんから有名な研究でもないのですが、むかし性科学の論文を探していたときに手に入れたものだった気がします。
この論文のデータによれば、セックスレスの浮気率は約25.9%と算出できます。
ちなみに論文に割合は掲載されていませんでしたので、データをもとに私が特別な統計解析をつかって計算した数字となります。
研究の本当の目的が大事
そもそも、この論文の研究はセックスレスの浮気率を調べるために行われたものではありません。
結婚もしくは同棲をしていてレスになっているカップルの、拒否されている側を対象に「それでも関係を継続するのはなぜか?」を調べたものなのです。そのなかで、次のことが分かったのです。
1. レスに至る過程
レスに至る過程としてもっとも多かったのは、時間とともに性的関心が薄れ、少しずつ減っていったというパターンです。そのほか、妊娠・出産や不倫、病気をきっかけに急になくなるパターン、交際や結婚の初期からほとんどなかったパターンがありました。
2. 拒否されている側への影響
拒否されている側への影響としては、性的なフラストレーションを感じている人が79%と最も多く、他にも落ち込み、自尊心の低下、集中力の低下が報告されています。
3. 関係を継続する理由
レスで苦しんでいるのに、関係を継続する理由は、安心感、家族としてのつながり、子ども、経済的な責任などでした。また、離婚後の生活や新しい相手を見つけられるかへの不安、婚姻関係は続けるべきものという価値観や宗教的な理由も影響していました。
4. 対処法・浮気を選択する人の割合
レスられている側がどのように対処しているのかも聞き取っています。それによると、以下の通りです。(こちらの数字もデータを元に私が算出したものです)
- 自慰をする:79.2%
- 仕事や趣味などにエネルギーを向ける:50.6%
- 性的接触を求めることを諦める:35.0%
- カウンセリングを受ける:32.4%
- 現状に甘んじる:32.4%
- 性的空想を用いる:25.9%
- 浮気・婚外関係を持つ:25.9%
- 性的問題を生活の他領域から切り離す:12.9%
ここで出てきた数字が、セックスレスの浮気率ということです。
浮気率を下げるための施策
実はこの研究の主題の一つは先に説明した「社会的交換理論」です。
レスによる苦しみ(コスト)よりも夫婦関係から得られるもの(報酬)のほうが大きいから、関係を継続しているのだ、というのが最終的な考察のひとつです。
そして、自慰や浮気といった対処法を選択する際も、コストと報酬を計算しています。25.9%の人は、浮気の利益を圧倒的に高く評価したということです。
ちなみに、あなたが拒否する側なら浮気されるリスクが高いのは理解しやすいかと思いますが、される側であっても浮気されるリスクはあります。
なぜなら「性欲がわかない」と言っている男性であっても、それは妻や彼女に対してだけであることが多いからです。
つまり、レス状態であればその解消法を実践するのと同時に、二人の関係から得られる利益を大きくし、不倫から得られる利益を小さくする施策も必要なのです。
そのためにどうすれば良いかというと、夫婦・恋人関係の利益を大きくすることです。なぜならこの利益は、不倫の損得勘定のコスト側に入るものだからです。
1. 相手にとっての「コスト」を下げる
何をコストと感じるかは、人によって違います。まずは、それを特定し下げるための行動をとりましょう。
| コストとなるもの | コストを減らす行動 |
|---|---|
| 責められる・否定される感覚 | 「なんで?」ではなく「どう感じた?」と聞く |
| 家事・育児・生活負担の偏り | 手伝うではなく、自分の担当として継続的に引き受ける |
| 話し合いがいつも喧嘩になる | 途中で遮らず、まず相手の言い分を聴く |
| 自由時間や休息が足りない | 相手が一人で休める時間を意識的に確保する |
| 感謝や承認がない | やってもらって当たり前という感覚を見直す |
パートナーが何を負担に感じているのかを見誤ると、あなたの努力はありがた迷惑と受け取られてしまいます。普段の言動をつぶさに観察して、きちんと見極めましょう。
2. 報酬を高める
報酬も人によって違います。大切なことは、自分が与えたいものではなく、相手が実際に受け取りたい利益を増やすことです。
| 夫婦間の報酬となるもの | 報酬を増やす行動 |
|---|---|
| 大切にされている感覚 | 小さな変化や努力に気づき、具体的に伝える |
| 安心して話せる感覚 | 批判したり解決策を急がず、まず受け止める |
| 一緒にいて楽しい感覚 | 問題の話をしない雑談・外出・笑える時間を作る |
| 支え合っている感覚 | 困りごとを「相手の問題」ではなく「二人の課題」として扱う |
| 将来を一緒に考えられる感覚 | 家計、住まい、休日、老後などを前向きに話す時間を持つ |
こんな面倒なことやってられないという人は、とりあえず「夫婦関係の修復カウンセリングと同じ改善効果がある映画リスト」を参考にネトフリを見てください。
- Donnelly, D. A., & Burgess, E. O. (2008).The decision to remain in an involuntarily celibate relationship.


