酒を飲むと攻撃的になる夫の性格、人が変わるのではなく本性が出るだけ

「お酒を飲むと夫が攻撃的になる」と悩む人は少なくありません。

普段は穏やかなのに、飲酒後に怒りっぽくなったり、暴言を吐いたり、ときには手を上げるような行動に発展することもあるでしょう。

このような変化には、アルコールの影響だけでなく、もともとの性格も関係しています。

では、どのような人がお酒を飲むと攻撃的になりやすいのでしょうか。

結論からいうと、元々の性格が攻撃的な人です。よくお酒が人を変えると言いますが、そうではないのです。お酒によって本性が出るだけなのです。

今回は科学的な研究をもとに、アルコールと性格の関係を詳しく解説します。

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飲酒による攻撃性を調べる実験

アルコールが攻撃性に与える影響を個人の持つ性格とともに分析した、ケンタッキー大学のピーター・ジャンコラ博士の実験があります。

この実験では、21~35歳の健康な男女204名を対象にアルコール摂取による変化を調べました。

参加者は事前に「Buss-Perry攻撃性質問票」という心理テストを受け、攻撃的な性格傾向が数値化されました。

その後、アルコールを摂取するグループとプラセボ(偽のアルコール)を摂取するグループに分けられ実験が行われました。

実験では「反応時間課題」というものが行われました。

これは反応時間を対戦相手と競うゲームで、勝った場合は相手に電気ショックを与え、負けた場合は相手から電気ショックを受けるという仕組みになっています。

この過程で、どの程度の強さのショックを選ぶかが、攻撃性の指標として測定されました。

1. 高挑発条件では誰でも攻撃性が高まる

実験の結果まず分かったことは、高挑発条件(先に相手から強い電気ショックを受けた場合)では、全員が攻撃性が高まるということです。

アルコールを摂取しているかどうか、元々攻撃的な性格かどうかに関係なく、この傾向が見られました。

これは自然な反応といえます。「目には目を、歯には歯を(※1)」といったところでしょう。

(※1 勘違いされがちですが、この言葉の意味は「やられたらやり返せ」ではなく「受けた被害に対して、同等の仕打ちだけをもって報復せよ」という意味です)

2. 攻撃的な人はアルコールによってさらに攻撃的になる

アルコールの影響については、攻撃的な性格傾向が高い人のみで攻撃性が増加しました。

攻撃的な性格傾向が低い人では、アルコールを飲んでも変化は見られませんでした。

これは、アルコールがもともと攻撃的な人の行動をさらに助長することを示唆しています。

3. 飲酒の影響は攻撃的な男性の方が出やすい

男女の性差も見られました。もともと攻撃的な性格傾向が低い男女で攻撃性の差はほとんどありませんでした。男性も女性も同じくらい攻撃的ではない傾向が見られました。

しかし、攻撃的な性格傾向が高い男性は、同じタイプの女性よりも、さらに攻撃的な行動を示しました。

これは一般的に男性の方が女性よりも攻撃的な行動をとりやすい、という過去の研究結果とも一致しています。

特に、アルコールを摂取した攻撃的な性格傾向の高い男性は極端な行動(強いショックを与える行動)をとりやすいことが分かりました。

4. 攻撃的な人は低挑発条件でこそアルコールの影響を受ける

さらに、攻撃的な人のアルコールの影響は低挑発条件(先に相手から受けた電気ショックが小さい場合)の方が強く現れました。

高挑発条件では、それ自体が攻撃性を最大限に引き出すため、そこにアルコールの影響が加わっても大きな変化は生じにくいです。

それに対し、低挑発条件では攻撃性があまり刺激されていないため、アルコールの影響がより顕著に現れたということです。

共感力も落ちる

お酒を飲んだときは、共感力も低下します。

英国ブラッドフォード大学のキャスリン・B・フランシスらは、お酒を飲んだときの人間にどのような変化が起こるか実験しました。

実験では参加者にウォッカを与えました。そして様々な表情をしている人の写真を提示し、その感情を判断させました。

その結果ウォッカを大量に摂取すると、顔の表情から感情を読み解く能力が落ちることが分かりました。

悲しそうな表情をポジティブに評価をしたり、楽しそうな表情をネガティブに評価しました。

つまり、共感する能力が落ちるのです。

そして、共感力が落ちて相手の気持ちが分からなくなると、本来の攻撃的な面がでやすくなります。

余談ですが、飲み会などで酔っ払うと、延々と同じ話を続ける人がいるのも共感力が落ちて空気が読めなくなるからです。聞き手が迷惑そうな顔をしても気づかないのです。それどころか気持ち良さそうですらあります。

また、アルコールは短期記憶を低下させますから、それにより少し前に自分が話していた内容を忘れることも、同じ話を繰り返す要因となります。

ちなみに、どれだけ酔っ払っても家にたどり着けるのは、帰り道を記憶する脳内の部位は最後までアルコールの影響を受けにくいからです。

道徳的な価値観は変わらない

哲学で有名な『トロッコ問題』というものがあります。

ハーバード白熱教室でマイケル・サンデル教授が言及していたアレです。

トロッコ問題
  1. 暴走するトロッコが5人の作業員に向かっているが誰も気づいていない
  2. あなたはその手前の分岐点にいる
  3. レバーを切り替えればコースを変えられる
  4. しかしその先には1人がいる

この状況で「5人を助けるために、1人を犠牲にしても良いか?」というものです。

今回の実験では、これをお酒を飲んだ状態で判断させています。

ただし上記の問題とは少し変えてあり、トロッコを止めるために1人を下敷きにしても良いか?というものになっています。

(おそらく上記の設定では分岐ポイントを中立にすればトロッコが脱線するので全員が助かるというアイデアが知れ渡ってしまったからかもしれません)

参加者にバーチャルリアリティ(VR)の機器を用いて、実際の映像が見せられました。

結果、どちらの方法を選択した人も、酔っているときとそうでないときで答えに変化はありませんでした。

お酒を飲んでいるときに、1人を犠牲にしても良いと答えた人はシラフのときも同じ答えを選んだのです。

理性を司る大脳新皮質の活動が低下して本性が出るだけ

アルコールが脳まで回ると、理性を司る大脳新皮質の活動が低下します。これによって普段は抑えている衝動や本性をそのまま出してしまうようになります。

トロッコ問題はどちらを選んでも、非難されるようなものではありません。どちらの選択もそれなりの理由付けがなされるからです。

つまり、酔っていないときでも本音を隠す必要はありません。そして、実際に酔ったときも同じ回答となりました。

仮にお酒が人を変えるのだとしたら、回答にはバラつきが生じるはずです。しかし、そうはなりませんでした。

これを暴力に当てはめてみましょう。

暴力は非難の対象となりますから、理性が働いているときは隠そうとする人もいます。

それでも、酔っ払うと暴力を振るってしまう人がいます。

お酒は人を変えないのに暴力を振るったりモラハラ発言をするということは、元からそういう人間だったということです。

お酒が人をダメにするのではなく、本性を暴くだけ

「お酒が人をダメにするのではなく、元々ダメな人だということをお酒が暴く」という言葉がありますが、これは科学的にも裏付けられているということです。

それにも関わらず、「夫はお酒を飲まなければ良い人なんです」という妻は多いです。

本当は優しい人なのに、お酒のせいで人が変わってしまうと信じているのです。

しかしそれは間違いです。お酒は人を変えません。本性を暴くだけです。

アルコールによる攻撃性は、子供への心理的影響や夫自身の社会的評価にも関わる問題です。

特に、小さな子供がいる家庭では、親の攻撃的な態度が子供の情緒発達に悪影響を及ぼすことが研究でも指摘されています。

幼少期に家庭内で暴力や威圧的な態度を目にした子供は、大人になってから同じような行動をとる、もしくは親と同じような相手を恋愛のパートナーに選ぶ可能性が高まるのです。

また、お酒を飲むと攻撃的になる人は、職場や友人関係でもトラブルを引き起こしやすくなります。

アルコールによって理性が鈍ると、軽い言い争いがエスカレートし、対人関係の悪化を招くこともあります。

このように、飲酒によって豹変する(本性を現す)夫に対し「お酒を飲まなければ良い人なのに」と思っている女性は気をつけてください。

これは、アルコール依存症の夫と共依存状態に陥っている人の典型的な思考です。

参考文献
  • Giancola, P. R. (2002).Alcohol-related aggression in men and women: the influence of dispositional aggressivity.
  • Francis, K. B., Gummerum, M., et al. (2019).Alcohol, empathy, and morality: acute effects of alcohol consumption on affective empathy and moral decision-making