HSPとACの両方を持つ人は、病気と感じやすいという研究結果

近年「HSP(Highly Sensitive Person:非常に感受性の高い人)」という言葉が広まり、多くの人が自らの敏感さに気づくようになっています。

そして「アダルトチルドレン(AC)」という言葉もまた、成育環境における親子関係の影響を受けた大人を指す概念として広く認知されています。

この2つの特性は、一見別物のように思えるかもしれませんが、実は心理的・身体的な影響において密接な関係があることがわかってきました。

特に、HSPとACの両方の特徴を持つ人は、身体症状が重症化していると感じやすい傾向にあることが近年の研究で示唆されています。

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HSPとアダルトチルドレンの特徴

このサイトで何度も触れていることではありますが、初めて閲覧する方もいると思いますので、簡単にHSPとアダルトチルドレン(AC)の基本的な特徴について簡単に触れておきます。

HSP(Highly Sensitive Person)

外部の刺激に敏感で、他者の感情や環境の変化に強く反応しやすい傾向があります。刺激に対して深く処理するため、ストレスを感じやすく、過剰な刺激がある環境では心身のバランスを崩しやすいのが特徴です。

アダルトチルドレン(AC)

機能不全家庭で育ったことで形成された、心理的特性を持つ大人を指します。特に、親との愛着形成が不安定であった場合、自己肯定感の低下や対人関係での不安感が生じやすくなります。これにより、ストレス耐性が低下し、心理的負担が身体的な症状として現れることがあります。

両者に共通しているのは「外部からの刺激に敏感で、ストレスの影響を受けやすい」という点です。これが体の不調の感じやすさに、どう関わってくるのでしょうか。

「愛着不安(ACの特性)」と「身体症状の感じやすさ」を感覚処理感受性(HSPの特性)が媒介する

愛着不安(ACの特性)と感覚処理感受性(HSPの特性)の関係、そしてそれらが身体症状の感じ方に与える影響を調べた研究があります。

カナダのマウントサイナイ病院の研究チームが中心となって実施したものです。

1.調査方法

研究では、186名の成人を対象に、以下のデータを収集しました。

  • 愛着不安・愛着回避(ECR-M16質問票を使用)
  • 感覚処理感受性(HSP質問票を使用)
  • うつ症状
  • 身体症状の重症度(※)

(※ここでいう身体症状とは、頭痛や腹痛、四肢や関節の痛み、消化不良、便秘、下痢、心拍数の増加や動悸、性機能の問題、睡眠の問題など幅広く含みます。それらを実際に医師が診断したのではなく、本人がどれくらい感じているかという自己申告で確認しています)

これらのデータを分析し、それぞれの関係性を検証しました。

2.調査結果

検証の結果、以下の関係性が明らかになりました。

  • 愛着不安と感覚処理感受性には相関がある
  • 愛着不安が高い人は頭痛や腹痛、疲れなどの「身体症状」を強く感じやすい
  • 愛着不安が直接的に身体症状の悪化を感じさせるのではなく、感覚処理感受性を通じて影響している
  • うつ症状も身体症状の重症化の感じ方に関与しているが、愛着不安と感覚処理感受性の関係性は、このうつ症状の影響を除いても依然として有意
  • 愛着回避(他者と親密になることを避ける傾向)には身体症状の感じ方への有意な影響は認めらない

分かりやすくいうなら、愛着不安と高い感覚処理感受性を持つ人は、体の不調を感じやすいということです。

HSPとACの両方を持つ人が不調を感じやすい理由

上記の研究結果から、HSPとACの両方の特徴を持つ人は、心だけではなく、体の不調も感じやすいといえます。

では、なぜそのようなことになるのでしょうか?

1. 些細な変化を深刻に受け止めやすくなる

ACは対人関係において、拒絶や見捨てられることへの強い不安を感じやすいです。

この不安は、外的な脅威だけでなく、内的な身体感覚にも過剰に注意を向ける傾向を生み出します。

そこに、HSPとしての特性が加わると、微細な身体の変化を深刻に受け止め、軽い痛みや不快感さえも病気として捉えてしまうのです。

2. 感情調節の困難さ

ACは感情調節の能力が低い場合が多く、ストレス状況下での不安や恐怖を効果的に抑えることが苦手です。

この感情調節の困難さは、心拍数の上昇などの身体反応につながることも多いです。

そこに、HSPとしての敏感さが加わることで、こうした身体反応を「危険な兆候」と認識しやすくなります。

このような「身体感覚への注意の偏り」が形成されることで、体のちょっとした変化でも健康問題として認識しやすくなるのです。

3. 自己認知の歪み

ACは、自己評価や自己認知に歪みを持っていることが多いです。

自分のことを実際以上に「脆弱で傷つきやすい存在」と見なす傾向があるのです。

そこに、HSPの特性が加わると、身体的な違和感や痛みに対して過剰な不安を抱きやすくなってしまいます。

この自己認知の歪みとHSPの共存が、通常なら無視できるような症状でも深刻に捉えてしまうことにつながるのです。

HSPもACも病気じゃないのに勘違いしているだけ?

以上の説明から、HSPとACの両方を持つ人は、病気じゃないのに勘違いしているだけ、と思うかもしれません。しかし、それだけではありません。

ACもHSPも、慢性的に交感神経が優位となった状態に陥りやすいことがわかっています。

交感神経は「闘争・逃走反応(闘うべきか逃げるべきかの緊迫状態)」をコントロールする神経で、ストレス時に活性化します。

幼少期から、常にストレス状態に置かれていたACは、この交感神経のスイッチが切れにくくなっていることが多いのです。

これにHSPの特性が加わると、日常の些細な出来事でも身体が「危険」と認識し、結果として頻繁に緊張状態にさらされることになります。

これが、実際の頭痛や胃痛、慢性的な疲労感といった身体症状の温床となることもあるのです。

とはいえACもHSPも、認知の修正や適切な感情調節を学ぶことで、その悪影響を減らすことができますから、諦める必要はありません。

参考文献
  • Le TL, Geist R, Hunter J, Maunder RG. (2020).Relationship between insecure attachment and physical symptom severity is mediated by sensory sensitivity.