スキンシップはあるけどレスなら「シマリング」で脱却せよ

相談に来ている方から「スキンシップはあるけどレスです」という話がよく出ます。

体や髪を撫でたり、ハグしたり、ときにはキスをすることもあるけれどセックスには至らないと…。

こういった状況を不思議に思うかもしれませんが実は自然なことです。むしろほとんどの夫婦やカップルは、スキンシップがあるからレスとさえいえます。

そして、この状態のまま何も対策をせずにいるとレスは余計に進行します。

だからといって、急にスキンシップを止めるのも関係の悪化につながることがあります。そんなときは「シマリング」というテクニックを使うことをおすすめします。

これによって性欲が再燃し、レス脱却につながる可能性もあります。

当カウンセリングルームでは、セックスレスのご相談をお受けしております。
対面(東京)でもオンラインや電話でも対応可能です。
  • 相手が応じてくれない
  • 自分の性欲がわかない
  • 相手にバレずにできる対策を知りたい
  • 夫婦・恋人間の仲を良くしたい
  • 話し合いをしたが解決しなかった
  • 産後、妊活中のレス
  • 2人目がほしいのにレス
最初から話し合いをしてしまうと、逆効果になりやすいので注意してください。

スキンシップはあるのにレスになる理由

なぜスキンシップはあるのにレスになるのかというと、悪い意味で親密になってしまうからです。

基本的には親密度が増すと愛情は高まり、性的欲望(相手と肉体的にも結びつきたい感覚)も高まるとされています。

しかし、何も考えずに長いこと一緒にいて結びつきが強まるのは逆効果なのです。

物理的な距離がないと性的欲求は低下する

ヨーク大学のエイミー・ミューズ准教授らによるカップル間の性欲に関する研究があります。

それによると、パートナーが自分を理解し、大切にしてくれているという感覚や、感情的なつながり、愛情表現、自己開示のしやすさなどは性的欲望を促進する要因となることが分かっています。

つまり、親密さはプラスの効果をもたらすということです。しかし、こうしたプラスの効果が発揮されるには重要な要素があることも分かっています。

他者としての認識

それが適切な「他者としての認識」です。これは親密な関係の中でも相手を自分とは別個の存在として感じ、新鮮さや相手独自の魅力を見出せる感覚のことです。

逆にこの他者としての認識がないと、相手と性的に結びつきたいという欲求は低下することも分かっています。

カップルが「他者としての認識」を持つために必要なものは、個別の活動による成長の認識です。

お互いが別の場所で仕事や趣味を通して成長し、変化し続けることで自分とは異なる存在と認識できるのです。

逆にこれがないとお互いにどんどん同化していってしまい、自分の一部のようになってしまいます。

物理的な距離

そして、もう一つ必要なものが物理的な距離です。離れていることで「相手は自分の一部ではない」と認識できるのです。

逆にスキンシップをしすぎて身体的な距離が近くなると「他者としての認識」が失われ、境界が曖昧になってしまいます。

すると性的欲望も低下しレスになるということです。

ただし、これが少し複雑なのですが、他者としての認識がある状態でのスキンシップはむしろ性欲を高めてくれるのです。「鶏が先か、卵が先か」のような話ですが…

とはいえ、レス状態は他者としての認識が無いということですから、スキンシップがマイナスになっている可能性が高いといえます。

※他者としての認識のなさがレスを加速させることについてもっと詳しく知りたい方は「仲良いけどレスのカップルは「親密性-欲望パラドックス」に陥っている」の記事を参考にしてください。

愛着スタイルによってはスキンシップがレスにつながる

スキンシップはあるけどレスになるもう一つの要因として、相手の動機を見落としていることが挙げられます。

カップルがスキンシップをする動機は様々ですが、大きく分けると以下の「前向きな動機」と「後ろ向きな動機」の2つに分類できます。

【1】前向きな動機(ポジティブな理由で触れる)

  • 自分の気分を良くするため
  • パートナーを幸せにするため
  • 親密さを深めるため

【2】後ろ向きな動機(ネガティブな理由で触れる)

  • 自分の孤独感を避けるため
  • パートナーを怒らせないため
  • ケンカを防ぐため

このように前向きな動機と、後ろ向きな動機があるのです。そして、それがカップル関係に影響を与えることが分かっています。

カップルの幸福感を高めるスキンシップ

スキンシップの動機がカップルにどのような影響を与えるか調べたシラキュース大学のブリタニー・ジャクビアクらの調査があります。

この調査では約100組のカップルに毎晩日記をつけてもらい、その日のスキンシップの動機(前向きor後ろ向き)と幸福度について記録しました。

この記録を分析したところ、前向きな動機でスキンシップを行った日は自分だけでなく、パートナーの幸福度も向上することが分かりました。一方で、後ろ向きな動機でスキンシップをした日は幸福度が低下することがわかりました。

なぜこのようなことが起こるかというと、動機の違いによってスキンシップが微妙に変わるからです。

相手を喜ばせたいという気持ち(前向きな動機)で触れるときと、機嫌を悪くしたくないという気持ち(後ろ向きな動機)で触れるときでは雰囲気や触れ方が変わるのです。

触れられる側はその違いを無意識に感じ取りますから、それが幸福度を左右するということです。

実際に愛情のこもったスキンシップを受けると、オキシトシン(愛情ホルモン)の分泌が促進されることが分かっています。

スキンシップが嫌いな人の特徴

実は今回の研究では参加者の愛着スタイル(他者と関係を結ぶ際の型)も確認しています。

それによると、たとえ恋人のような親密な相手に対しても距離を置こうとする「回避型愛着スタイル」を持つ人はスキンシップ自体を嫌がる傾向もあることが分かっています。

回避型愛着スタイルの人は幼少期の家庭環境の悪影響により、他者に依存することに不安を感じたり、自立を重視するため、他者との深い関わりを避ける心理が形成されています。

そのため、触れることで生まれる親密な感情に抵抗を感じるのです。

あなたのパートナーがこのタイプの場合はたとえ前向きな動機によるスキンシップを与えても不快に感じられる可能性があります。

また、回避型愛着スタイルを持つ人が自分からスキンシップをする場合にも「相手を怒らせたくない」「関係を悪化させたくない」という後ろ向きの動機によることが多いことも分かっています。

ですから、仮にあなたのパートナーが自分からスキンシップをしている場合も、本当は無理している可能性があるのです。

このような心理的負担のかかるスキンシップを続けていると不満が溜まり、レスにつながることもあります。

なぜなら「身体的に近くなること=ストレス」という認識が強まり、セックスを嫌悪するようになるからです。

「触れる場所を変える」は効果的か

スキンシップはあるけれどレスという場合、触る場所を変えることで性的な感覚が変化することもあります。

スキンシップしてはいけない場所

その前に、触れるべきではない場所について知っておいてください。

それはズバリ、性器です。股間や胸、お尻は服の上からでも触れるべきではありません。

セックスを開始する前の盛り上がった気分のときに前戯として触れるのは問題ありませんが、日常のボディタッチでは触れるべきでないのです。

なぜなら日頃から性的な箇所へのスキンシップをしているとエロさが失われ、お互いに興奮しにくくなってしまうからです。

いつでも気軽に触れることのできるモノという認識ができると、性的な対象としての価値も下がります。

これは逆の立場でも同じことですから、レス中なのに夫や彼氏が冗談っぽくあなたの胸やお尻を弄ってくるならやめさせたほうが良いです。

どこに触れれば良いのか

ではどこにボディタッチをすれば良いのか?ということですが、性器以外ならどこでもOKです。腰や太もも、腕、肩、首などどこでも良いのです。

色々なところに触れて試すことが大切です。それによって本人も気づいていない性感帯を探り当てるのです。するとそれがHな気分のスイッチとなることがあります。

今さら本人も気づいていない性感帯なんてあるの?と思うかもしれません。でも意外とあるのです。加齢や経験によって新たに開発されていることもあります。

性感帯には他人に触れられたときだけ感じる場所というのも存在します。

フィンランド・アールト大学のラウリ・ヌメンマー博士らが自慰行為とセックスのときの性感帯の違いについて調べた研究があります。

それによると、セックス中のほうが性感帯が広いことが分かっています。

つまり、他人に触れられることでのみ感じる部位があるということです。

もちろん、セックスによる興奮やホルモンが感じ方を変えていることもあります。しかし、他人が触れたからこそ感じるということもあるのです。

ちなみに、くすぐったさを感じる部位は性感帯である可能性が高いといわれています。くすぐったさと性的な快感は紙一重とされているからです。

シマリングの実践

スキンシップはあるけどレスな状態が危険と分かっても、すぐに止めるのは難しいと思います。

そこで実践してほしいのが「シマリング」というテクニックです。

これは米国で30年以上にわたり、性やカップルのカウンセリングを行ってきたスティーヴン・スナイダー医師が提唱したテクニックです。海外の他のカウンセラーもよくおすすめしています。

お互いに触れあうことなのですが、通常のスキンシップとは微妙に違うものです。そしてその微妙な違いが性欲に影響するのです。

シマリングの考え方

「シマリング(simmering)」は英語で「沸騰」や「感情が爆発しそうな状態」を意味する言葉ですが、性的な文脈においては少し意味合いが異なります。

カップル間の性的な雰囲気を一気に沸騰させるのではなく、弱火で温め続けるように、日常の中で小さな親密さや性的緊張を保つ技法を意味します。

シマリングは性交やオーガズムを最終的な目的としません。むしろ、始めたら最後までしなければならないというプレッシャーをなくし、短い接触や視線だけで終えてもよい、という価値観が中心です。

シマリングのやり方

シマリングで具体的に何をするかというと、ハグやキスや相手の魅力を伝えるような言葉がけです。

これに限らず、目を合わせたり、手を撫でたり、指を絡めたりと性的なイメージを湧かせられる行為であれば何でも良いのです。

「そんなことはとっくにやってる」と思うかもしれませんが先ほどの感覚を持ってやることが大切なのです。

つまり、相手の中にある小さな性欲の炎をじっくりと燃やし続ける意識です。分かりやすくいえば、あなたがHな気持ちを持つということです。先述しましたがどんな動機を持つかで雰囲気や触れ方は変わるのです。

このとき重要なことは心の中ではその気持ちを持ちつつも、セックスに持ち込みたい空気を出さないことです。

濃厚なスキンシップがあっても、セックスに続くわけではないという感覚を持たせることが大切なのです。それによってレスでも性的接触に対する抵抗が減ります。

そして相手の反応が悪ければすぐに引くのです。もっといえば、仮に反応が良かったとしてもセックスにつながらないのであれば中途半端なところで引くことです。

これによってもっと続けたいと思わせることが重要です。それがやがてあなたに対する性欲に変換されることがあるのです。

スキンシップはあるけどレスというカップルは珍しくありません。それを急に変えるのは難しいでしょうから、すでになされている行動をほんの少し変えることから始めてみましょう。

シマリングに限らず、相手に触れるときの心持ちを変えてみるとレス脱却の糸口がつかめるかもしれません。

参考文献
  • Muise, A., & Goss, S. (2024).Does too much closeness dampen desire? On the balance of closeness and otherness for the maintenance of sexual desire in romantic relationships.
  • Jakubiak, B. K., Debrot, A., Kim, J., & Impett, E. A. (2021).Approach and avoidance motives for touch are predicted by attachment and predict daily relationship well-being.
  • Nummenmaa, L., Suvilehto, J. T., et al. (2016).Topography of human erogenous zones.
  • Snyder, S. (2018).Love Worth Making: How to Have Ridiculously Great Sex in a Long-Lasting Relationship.