彼氏や、友達以上恋人未満だった相手のことが大好きだったのに、急に冷めてしまったという経験をしたことはないでしょうか?
それどころか、大嫌いにさえなっているということもあるかもしれません。
これには「蛙化現象の心理学論文が出たよ」でも説明した通り、他人に完璧思考を求める心理が関係していることが多いです。
それ以外の要因としては、「致命的な魅力」という心理現象が関係しています。
大好きだった相手ほど、その反動によって冷めたときの、失望感や嫌悪感は大きくなりやすいのです。
「致命的な魅力」とは
「致命的な魅力(fatal attraction)」とは、恋愛初期には魅力的に思えた特徴が、後になって嫌悪や不満の原因となる現象のことです。
ここでいう「致命的」とは、最初の魅力が後に関係に悪影響を与える(=命取りとなる)方へと向かう可能性を秘めているというニュアンスです。
具体的には、「明るくて楽しい人だと思っていた相手が、次第に軽すぎて不真面目だと感じる」「優しいと思った相手が、実は受け身すぎて頼りがいがないと感じる」といった例が挙げられます。
こうした現象は、恋愛が進むにつれて、理想と現実のギャップが顕著になり、最初は長所に見えた部分が短所に変化してしまうことが原因です。
魅力的だと思っていたポイントが無くなるだけであれば、プラスがゼロになるだけで済みます。
しかし、「致命的な魅力」はそれがなくなるだけではなく、不満に変化しますからマイナスとなります。
つまり、プラスからマイナスへの大きな落差があるので、どんなに大好きでも急激に冷めてしまうということです。
この現象は、現在進行中の恋愛関係でもよく見られるものです。
44%の人が経験している「素敵」が「うざい」に変わる瞬間
最初は魅力的だと感じた特徴が、どのように変化して不満を引き起こすのかを分析した、カリフォルニア大学のダイアン・H・フェルムリー博士の研究があります。
この研究では、125名の男女に、現在付き合っている恋人、もしくは過去に付き合っていた恋人について関して以下の質問をしました。
- 「最初にその人のどんなところに惹かれましたか?」
- 「その人のどんなところが一番嫌いですか?」
また、「最初に好きだった特徴と、後で嫌いになった特徴に似ている部分があると思いますか?」という質問も行い、「致命的な魅力」がどのくらいの割合で発生するかも分析しました。
分析の結果、44%の人が「最初に惹かれた特徴が、後に嫌悪の対象になった」と答えました。
つまり、恋愛初期に「素敵!」と思った部分が、時間が経つにつれて「うざい…」に変わることが非常に多いということです。
よくある「致命的な魅力」のパターン
この研究では、どのような特徴が「致命的な魅力」になりやすいのかも分かっています。以下が代表的なパターンです。
- 優しい → 受け身すぎる
「優しくて気配りができる」と思っていた相手が、実は自分の意見をまったく言わない受け身な人だと分かり、次第に物足りなさを感じるようになります。
- しっかり者 → 頑固
最初は「自分の意見をはっきり持っていて素敵」と思った相手が、いつしか「全然譲らない頑固者」に見えてしまいます。
- 楽しい人 → 落ち着きがない
明るくてユーモアのある相手が魅力的に思えても、長く一緒にいると「軽すぎる」「不真面目」と感じてしまうことがあります。
- 思いやりがある → 束縛が激しい
「気にかけてくれる」と感じた相手が、次第に「嫉妬深くて束縛してくる人」に見えるようになります。
なぜこんなことが起きるのか?
「致命的な魅力」が嫌悪感に変化し、急に冷める要因として以下のことが考えられます。
1. 時間が経つと本性が見えてくる
恋愛初期は、相手も良い面を見せようとするため、欠点が見えにくいものです。
しかし、時間が経つとだんだん隠しきれなくなり、本当の姿が見えてきます。
そのとき、それが自分にとって許せない特徴だったと気づくと急激に冷めるのです。
2. バラ色の眼鏡効果
恋愛初期は脳内ホルモンの影響もあり、相手を理想化し、欠点さえも魅力的に見えることがあります。
これを心理学で「バラ色の眼鏡効果」といいます。
しかし、関係が進むにつれて冷静さを取り戻し、この「バラ色の眼鏡」が外れる瞬間がやってきます。
すると、それまで気にしていなかった相手の性格や行動が、現実的な目で見え、冷めてしまうのです。
3. 人は変わる
恋愛が長く続くと、相手の性格や行動が自分の嫌いなタイプへと変わっていくことがあります。
また、恋愛の初期段階では、誰もが自分の良い面を積極的に見せようとしますが、慣れるとそういった努力をしなくなりますから、変わってしまったように見えることもあります。
こうしたことが原因となり、「最初は良かったのに…」と思ってしまうこともあるのです。
どうすれば愛情を保てるのか?
「致命的な魅力」が必ずしも破局につながるわけではありません。
むしろ、大切なのは相手の欠点を受け入れ、それが相手の長所と裏表の関係にあると理解することです。
たとえば、「頑固なところは自分の信念を大切にする証拠」といったように、欠点を長所として捉える視点を持つことが関係を長続きさせる秘訣です。
また、自分の欠点にも目を向けることが大切です。
相手を批判する前に、「自分にも似たような欠点があるかもしれない」と振り返ることで、お互いを受け入れる余裕が生まれます。
相手の短所を許容することで、自分も理解してもらいやすくなり、信頼関係が深まります。
欠点をも含めて「その人らしさ」と受け入れられるようになれば、関係はより安定します。
完璧な人などいないからこそ、お互いの長所と短所をバランスよく理解し合うことが、愛情を保つために必要なのです。
映画『危険な情事』とは無関係
記事の本筋とあまり関係ないことですが…。
今回説明した「致命的な魅力」は英語で「Fatal Attraction」ですが、これはマイケル・ダグラス主演の映画『危険な情事』の原題と同じです。
この映画が社会現象になったおかげで、過剰な執着心や嫉妬心から、恋愛対象となった相手に対してストーキングなどの危険な行動をすることを「Fatal Attraction Syndrome(危険な情事症候群)」と呼ぶようになりました。
しかし、これは非公式な心理学的な用語であり、今回の「Fatal Attraction」とは別物です。
たまたま、同じフレーズになってしまっているだけです。
- Felmlee, D. H. (2001).From appealing to appalling: Disenchantment with a romantic partner.

