恋愛に振り回される人は、相手を大切にしているようで、実は自分の価値を気にしているのです。
彼氏や好きな人からのLINEの返信が遅いと不安になったり、ちょっとした言葉で落ち込んだりすることはないでしょうか?
こうした些細なことで一喜一憂するのは、それだけ相手を愛していて大切にしたいと思っているからと思うかもしれません。
しかし、こうした心理の背景には「関係依存型の自己評価」という、自分の価値に関する特性が関係しています。
関係依存型の自己評価(RCSE)とは
関係依存型の自己評価(Relationship-Contingent Self-Esteem:以下RCSE)とは自分自身に対する価値評価が、恋愛関係の状況に強く依存する心理的特性のことです。
これは単に恋愛を大切にするという意味ではなく、恋愛の成功や失敗が自己価値に直結してしまうという意味です。
たとえば、パートナーが優しく接してくれると「自分は愛される価値のある人間だ」と感じる一方で、冷たい態度を取られると「自分はダメな人間だ」と思い込んでしまうのがRCSEの高い人の典型的な特徴です。
このような人は恋愛関係のちょっとした変化によって、感情が大きく揺れ動く傾向があります。
また、恋愛関係に対する執着や感情の起伏が激しくなることも特徴です。要するに恋愛に振り回されやすいということです。
RCSEが恋愛に与える影響
RCSEが高い人ほど恋愛に振り回されやすいことは、ヒューストン大学のレイモンド・ニー教授らの研究でも分かっています。
この研究ではまず、1,661名を対象に「RCSEの測定尺度」を開発し、それが他の心理的特性とどのように関連するかを分析しました。
その結果、RCSEが高い人は関係性に不安を感じやすく、自己肯定感が低く、感情の起伏が激しいことが明らかになりました。
また、198名を対象とした14日間の日記研究では、RCSEが高い人ほど恋愛におけるポジティブな出来事で自己評価が急上昇し、ネガティブな出来事で急激に低下することが確認されました。
さらに、これらの感情の振り回されやすさが、自己評価の変動に直接影響を与えることも分かりました。
カップルを対象とした調査では、RCSEが高いパートナー同士はお互いに対するコミットメントが高いものの、恋愛満足度や関係の安定性には良い影響がないことが示されました。
RCSEの高さに影響する要因
RCSEの高さには、さまざまな要因が影響を与えることが研究によって示されています。
1. 幼少期のアタッチメント(愛着スタイル)
幼少期の親との関係は、大人になってからの恋愛スタイルにも深く関わります。
特に不安型アタッチメントの傾向が強い人は、RCSEが高くなりやすいことが分かっています。
不安型アタッチメントとは、親からの愛情が不安定だったり拒絶される経験をしたりした人が、大人になってもパートナーからの愛情を過度に求める傾向のことです。
このタイプの人は「相手に愛されなければ、自分には価値がない」と感じやすく、恋愛が自己評価の基盤になってしまいます。
そのため、恋愛関係の浮き沈みが自己評価に大きな影響を与えるようになるのです。
2. 過去の恋愛経験
過去の恋愛経験もRCSEの強さに関係します。
特に、過去に浮気や裏切りを経験した人、パートナーから強い拒絶を受けた人、恋愛において極端な成功や失敗を経験した人はRCSEが高くなりやすいです。
たとえば、過去に「恋人から突然振られた」「依存しすぎて別れを告げられた」といった経験があると、次の恋愛においても同じパターンを繰り返すことを恐れ、より恋愛に執着しやすくなります。
このタイプは恋愛関係が安定している間は自己評価も高まりますが、少しでも関係に不安が生じると、自己評価が急激に低下します。
3. 自己肯定感の低さ
RCSEが高い人は一般的に自己肯定感が低い傾向にあります。自己肯定感とは「自分には価値がある」と感じる力のことです。
自己肯定感が低いと、自分の価値を自分自身ではなく、他者(特に恋人)からの評価や愛情によって決めようとしがちになります。
その結果、「パートナーが自分を大切にしてくれれば、自分には価値がある」「パートナーが冷たいと、自分には価値がない」と考えてしまい、恋愛の影響を受けやすくなるのです。
逆に自己肯定感が高い人は恋愛以外にも自己価値の基盤があるため、RCSEが低くなりやすいです。
4. 社会的承認の欲求
他人から認められたいという「社会的承認の欲求」が強い人も、RCSEが高くなります。
このような人は他者からの評価に敏感であり、恋愛関係を通じて「自分は愛されている」「自分には価値がある」と確認しようとします。
SNSで恋愛関係をアピールしたがる人はこのタイプといえます。
恋人との写真を投稿して「いいね!」をつけてもらうことで、社会から認められる価値のある恋愛をしている、だから自分も価値があると思おうとしているのです。
5. 文化的・社会的影響
文化や社会の影響も関係しています。恋愛を重視する文化では「恋愛がうまくいくこと=人生の成功」とみなされやすく、RCSEが高まりやすいです。
特に、以下のような価値観が強い社会ではRCSEが高くなりやすい傾向があります。
- 「結婚していることが成功の証」と考えるコミュニティ
- 「恋人がいることでステータスが上がる」とみなされる環境
- 恋愛に関する映画やドラマの影響が強い文化圏
こうした社会的背景があると、恋愛関係の安定が自己評価の安定に直結しやすくなります。
6. 心理的ストレスや環境要因
仕事や学業でのストレスが高いと、恋愛関係により強く依存するようになることがあります。
これは恋愛を自己価値の唯一の拠り所としてしまうためです。
また、家族関係の影響も無視できません。
親との関係が希薄だったり、親からの愛情を十分に受けられなかったりした人は恋愛関係でその愛情を補おうとする傾向が強くなります。
その結果、恋愛関係が上手くいっているときは充実感を得られますが、少しでも関係に問題が生じると、自己評価が大きく揺らいでしまうのです。
RCSEが高い人の克服方法
RCSEが高い人は恋愛に対する依存度が高く、パートナーの態度によって自己評価が変動しやすくなります。
そのため、まず重要なのは自己評価の基準を恋愛以外の部分にも広げることです。
仕事や趣味、人間関係など、自分の価値を複数の要素で支えることで、恋愛に左右されにくい安定した自己評価を築くことができます。
また、感情のコントロールを意識することも効果的です。日記をつけたり、マインドフルネスを実践することで、自分の感情の変化を客観的に捉える習慣をつけることが大切です。
健全な愛着関係を築くことも重要です。パートナーの評価に依存しすぎるのではなく、相互に信頼し合い、安心できる関係を築くことで、恋愛の影響を受けすぎることを防ぐことができます。
恋愛を大切にしながらも、自己評価を自分自身の中に確立することで、より安定した関係を築くことができるのです。
- Krause, E. D., Mendelson, T., & Lynch, T. R. (2003).Childhood emotional invalidation and adult psychological distress: The mediating role of emotional inhibition.
- Knee, C. R., Canevello, A.,et al. (2008).Relationship-contingent self-esteem and the ups and downs of romantic relationships.

