セックスレスが続くと、パートナーに対してイライラしてしまう人も少なくありません。
特に、女性は自分ばかり相手のために、色々とすることに納得がいかないという人が多いです。感情が爆発し、激しい喧嘩へと発展してしまう人もいます。
実は、セックスレスでイライラしている時に、やらかしがちな喧嘩のスタイルというものが存在します。
そして、それをやってしまうと夫婦・カップル関係に大きな溝ができ、改善が難しくなります。
そこで、今回はセックスレスでイライラしたときに、やってはいけない喧嘩と、どうすれば穏やかな心を取り戻せるのかについて説明します。
セックスレスでイライラしてしまう原因
セックスレスでイライラしたり、ムカついてしまう原因の一つは、欲求不満です。特に性欲が高まっているときは、怒りを感じやすいです。
もう一つ、性欲の弱い人であっても、よくある理由が以下のような心理になってしまうというものです。
私はそこまでセックスがしたいワケじゃないけど、レス状態は夫婦関係に悪影響と思って努力してる。
それなのに、自分ばかり相手に合わせていたら、まるでセックスしたくてどうしようもないみたいじゃない!
セックスレス解消のために努力をしているとき、旦那に対してイライラしてしまう女性のほとんどがこの心理を持っているといっても過言ではない気がします。
その他のイライラの原因としては、主体性が失われていることです。(後述)
セックスレスでイライラする人がやらかす喧嘩スタイル
セックスレスでイライラしている人がやりがちな、最悪のコミュニケーションスタイルが存在します。
それは「要求-撤退(Demand-withdrawal)パターン」と言われるものです。
「要求-撤退パターン」とは、一方のパートナーが話したいと強く求めているのに対し、もう一方のパートナーが話を避けたり、沈黙したりするコミュニケーションのパターンを指します。
特に、夫婦や恋人間で対立が生じた際に頻繁に見られるものです。相談に来ている人の話を聞いていても、無意識にやってしまっている人が多いです。
たとえば、妻が「セックスレスについて一度きちんと話したい」と切り出したとします。
それに対して夫が「今さら何を言ってるの?」「またその話?」と面倒くさそうな態度をとったり、「あとで話そう」と言いながら話題を避け続けたりする場合、これが「要求-撤退パターン」に該当します。
この例では、妻が要求側、夫が撤退側となります。
このパターンが続くと、要求する側は「話を聞いてもらえない」と感じて不満を募らせ、撤退する側は「プレッシャーが鬱陶しい」と感じてさらに逃げたくなるという悪循環に陥ります。
特にセックスレスでイライラしていると、上記のような落ち着いた感じではなく、次のような険悪なやり取りになりがちです。
妻「なんでちゃんと話してくれないのよっ(怒)」
夫「はぁ…もういいよ(深いため息)」
「要求-撤退パターン」は性に悪影響
「要求-撤退パターン」は、性的な事柄で特に悪影響を及ぼしやすいことが、様々な心理学の研究から判明しています。
ダルハウジー大学のナタリー・ローゼン教授が、151組のカップル(平均年齢31.9歳)を対象に行った実験があります。
この実験ではまず、関係満足度、性的満足度、性的苦痛について専用の質問票によるアンケートに回答してもらいました。
それから、カップルで実験室に来てもらい、そこで「二人の性の問題」について話し合ってもらいました。
そしてその様子を撮影し、後から専門家がそのコミュニケーションスタイルを分析しました。
分析の結果、「要求-撤退パターン」の会話をしているカップルは、関係満足度と性的満足度が低く、性的苦痛が高いことが明らかになりました。
関係満足度については、12ヵ月後も低いままでした。
この結果に性別の違いは見られず、男性も女性も「要求-撤退パターン」で性の話をすることがネガティブな影響に繋がることが示されました。
なぜ関係が悪化するのか?
性の問題について話をするときに「要求-撤退パターン」になってしまうと、なぜ夫婦関係や性的満足度が悪化するのでしょうか?
それには次のような理由があります。
【理由1】性の話はネガティブになりやすい
性の問題は感情的な負担を伴うことが多く、不安や羞恥心、怒りなどのネガティブな感情を引き起こしやすいとされています。
こうした状況で、一方のパートナーがコミュニケーションを求め、もう一方が撤退すると、感情的なニーズが満たされないまま悪循環が生まれます。
要求する側は対話を拒否されることでフラストレーションを感じ、さらに強く要求するようになります。
それに対し撤退する側は圧倒され、ますます防衛的になってしまいます。
このようなパターンが続くと、問題解決が困難になるだけでなく、関係全体への不満が蓄積し、満足度が低下してしまうのです。
【理由2】性的満足度はコミュニケーションの質と相関
性的満足度はパートナー間のコミュニケーションの質と相関していることが、研究から判明しています。
お互いの性的欲求や、好みを自由に表現できることが重要なのです。
しかし、「要求-撤退パターン」が頻繁に生じるカップルでは、こうしたコミュニケーションができません。
その結果として性的なニーズが満たされず、不満が蓄積しやすくなるのです。
【理由3】自己肯定感の低下&罪悪感の高まり
「要求-撤退パターン」が見られるカップルでは要求する側が、セックスを拒否されたり、性的な話題を避けられたりすることで、自己肯定感が低下しやすくなります。
一方、回避する側も、要求されることに応えられないプレッシャーや、罪悪感を感じることがあります。
実は、こうした自己肯定感の低下や、罪悪感の高まりは性的苦痛に結びつきやすいことが分かっています。
また、ストレスや不安による心理的負担は、セックスそのもの質を低下させるだけでなく、関係全体にも悪影響を及ぼすこともあります。
関係を冷やさずに話すためのコツ
ではどうすれば、関係を悪化させずに、セックスレスの話ができるのでしょうか?
研究の結果をもとに、以下のポイントを意識してみてください。
1. 責めるような言い方を避ける
「どうして〇〇してくれないの?」という問いかけは、相手にプレッシャーを与え、撤退を促す可能性があります。
特に「前はしてくれたのに、最近は全然してくれない」といった比較を含む発言は、相手の防衛反応を引き出しやすくなります。
そうならないよう、「私はこう感じている」と、自分の気持ちを主語にする「I(私)メッセージ」を使いましょう。
例えば、「最近、私は〇〇について少し寂しく感じているんだけど…」といった形にすると、相手にとって、話しやすい雰囲気を作れます。
2. 話すタイミングを選ぶ
タイミングを間違えると、どんなに良い内容でも相手が聞く耳を持ってくれないことがあります。
相手が仕事で疲れているときや、ストレスを抱えているときに複雑な話題を持ち出すと、「またこの話か」と感じさせてしまい、撤退の反応を引き出してしまう可能性があります。
逆に、リラックスしているときや、二人の雰囲気が良いときに話すと、前向きなコミュニケーションになりやすくなります。
食後の落ち着いた時間や、一緒にお風呂に入っているとき、あるいは休日のゆったりした時間など、日常の中で自然に会話ができる瞬間を見つけましょう。
3. 「小さなことから」話す習慣をつける
セックスレスについての話題が苦手な夫婦は多いですから、いきなり深刻な話題に触れると相手も身構えてしまいます。
そのため、唐突に「最近のセックスに不満がある」と切り出すのではなく、日常の中で関連しそうな会話を少しずつ増やしていくことが大切です。
たとえば、「この前のデート、楽しかったね」「最近、あなたとハグする時間が増えて嬉しい」といった軽めの内容から始めることで、お互いにリラックスして話せる雰囲気を作ることができます。
こうした小さな積み重ねが、いざ本当に大事な話をするときに、お互いが素直に意見を伝えやすくする下地を作ってくれるのです。
イライラを抑えて穏やかな心と取り戻す
「そんなこと言われても、ずっとイライラしているのだから、冷静なコミュニケーションなんてできない」という人もいると思います。まずは、イライラを抑える方法を教えてほしいのだと。
もしあなたが、このように思ってしまっているなら、主体性が失われている可能性があります。
イライラした感情を消し、穏やかな心を取り戻すためには、捉え直しを行いましょう。
「どうして女性側ばかりが合わせなければならないのですか?」
セックスレスのカウンセリングをしているとき「どうして女性側ばかりが合わせなければならないのですか?」と言われる機会はとても多いです。
確かに、接し方を変えましょう、見た目を変えましょう、こういうプレイをしましょう、とアドバイスされたら、「なぜ自分ばかりが合わせなければならないの?」という気持ちになるのは自然なことです。
このサイト自体も女性視点に立って書かれた、「男性の心理はこうです」といった内容の記事が多いですから、余計なのかもしれません。
しかし、勘違いされがちですが、男性がカウンセリングに来ているときも、同じようにアドバイスしているのです。
ちなみに男性から「なぜ男性ばかり~」と言われることは滅多にありません。
男性の場合は、「自分で戦略を実行する」という意識になりやすいからかもしれません。それに対し、女性は「やらされている」という意識になってしまうようです。
また、色々と試しているのに、相手の反応がイマイチで親密さも増していないと、意味のない努力をしているのでは?と考え自信も失われていきます。
実は、このような「やらされている」という感覚が、イライラにつながっているのです。
「自己決定理論」とセックスレスのイライラ
モチベーションに関する有名な理論に、「自己決定理論」というものがあります。
これは、「やらされている」よりも「自分で選んで取り組んでいる」と感じるほど、意欲・成長・幸福感が高まりやすい、という心理学の理論です。
要するに、主体性を感じられると、モチベーションも高まるということです。
そして、その主体性を感じるのに必要とされるのが、人間が生まれながらに持っている、次の3つの感覚を満たしたいという、基本的な心理的欲求です。
- Autonomy(自主性):自分のことを自分で決定している感覚
- Competence(有能性):自分に優れた能力があるという感覚
- Relatedness(関係性):他者から注意を向けられている、関係を構築できている感覚
上記の欲求が満たされないと、主体性が感じられないだけでなく、ストレスを感じ、健康やメンタルに悪影響が出るとされています。
セックスレスで、イライラしている人は、まさにこれらの欲求が満たされていない状態です。
なぜなら、以下の通り、3つの感覚が満たされていないからです。
- 自主性がない:レス解消のための施策をやらされている
- 有能性がない:自分の性的魅力が低いから良いセックスが出来ていない
- 関係性がない:パートナーから注意を向けられない
自分のための最も合理的な選択
このように、セックスレスでイライラするのは主体性を失っている状態といえます。
セックスレスの改善は二人の問題です。しかし、突き詰めると、それはあなた自身の満足や幸福のためなのです。
ですから、現実の捉え直しを行うことで、イライラを改善する必要があります。
まず、パートナーに合わせているのではなく、自分の幸せのための最も合理的な選択として、改善のための取り組みをしている、という考え方に変えましょう。
また、自分の魅力がないというのも勘違いです。少なくとも、かつてセックスをしていたのであれば、パートナーからは魅力的と思われているのです。
自分の性的魅力に自信を持つことは、パートナーを再び振り向かせるためにも重要なポイントです。
そして、「セックスレス=私に関心がない」という思い込みも捨てましょう。
政治的信念と夫婦関係の質は共存できないものではないが…
余談ですが、過度な男女平等主義を支持するタイプの女性も、「自分ばかり合わせなくちゃならないのは納得いかない」と言うことが多いです。
男性と女性では、セックスレスになったときのアプローチ法が異なります。
「実践してください」と伝えたアドバイスの内容が、男性に媚びるような態度を促されているように聞こえることもあるでしょう。
しかし、効果的かつ即効性のある手法が、それしかないこともあるのです。
政治的正しさと、生物学的正しさは、必ずしもイコールではありませんから、そこに納得できない人はセックスレスの解消法が限定されてしまうかもしれません。
自分の政治的信念と、夫婦関係の質は共存できないものではありません。しかし、どちらかを優先しなければならないシチュエーションはあります。
もちろん、どちらを優先するかは個人の自由ですけれどね。
- Rosen, N. O., Dubé, J. P., et al. (2025).Do demand-withdrawal communication patterns during sexual conflict predict couples’ relationship satisfaction, sexual satisfaction, and sexual distress? An observational and prospective study.
- Deci, E. L., & Ryan, R. M. (1980).Self-determination theory: When mind mediates behavior.

