毒親が兄弟差別をするのは支配のため

兄弟姉妹の中で自分だけが厳しく扱われた。強い期待をかけられ続けた。他の兄弟は甘やかされていたのに…

毒親育ちの人の中には、このような兄弟差別に長く苦しんできた人が少なくありません。

親は「性格が違うから」「上の子だから」「あの子は弱いから」などと説明しますが、実際には子供同士を比べ、競わせ、親の評価を奪い合う状態にしているのです。

なぜなら、そうすることで親はつねに家庭内で支配的な立場を確保することができるからです。

毒親がなぜ兄弟差別をするのか、それがどのように支配につながるのか、そして差別された側の心にどんな影響を残すのかを解説します。

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毒親に限らず無意識の差別はしている

兄弟を差別するのは毒親に限ったことではありません。正常な親であっても無意識のうちにしてしまっていることがあります。

悪気なく「お兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだから我慢して」と言ってしまう親はいるのです。

もちろん、それが行き過ぎれば「機能不全家族で育った長女の特徴(長女症候群)」のようなことになります。

ブリガムヤング大学のアレクサンダー・ジェンセン博士らの研究では、子育て中の親は、息子よりも娘のほうを好みやすい傾向が分かっています。

これは、女の子のほうが、自己制御力や注意力が高いため、親が「衝突が少ない」「対応しやすい」と感じ、好意的な関わりをしやすくなることが要因といえます。

また、男女関係なく、長子を自由にさせる傾向も分かっています。これは、「一番上は自律しているだろう」と無意識に判断していることなどが要因といえます。

ただし、これらは傾向であり、統計的な分析をすれば僅かに有意差が出るというレベルですから、親による個人差があります。

また、子供側がそのような差別的扱いを受けたと感じる可能性も少ないことが分かっています。あくまで親に聞き取りをすると、そのような傾向が出るということです。

機能不全家族における子供の役割分担

ここまでの説明は、毒親育ちの人には納得しにくいものかと思います。

「私は長女だけど親から嫌われていた」という人もいるでしょう。相談に来ている人でもこのような人は多いです。

毒親のいる機能不全家族においては、子供ごとに役割が決まり、それぞれが異なる扱いをされることが珍しくありません。

たとえば長女であれば、家事をしたり、下の兄弟の面倒を見たりします。「ケアテイカー」といわれる役割を果たすのです。

お手伝い程度であれば問題ありませんが、本来であれば親が果たすべき役割まで担わされることがあります。そして、それをしないと暴力を振るわれたり、文句を言われたりするのです。

一方で、下の子は「ロストワン(ロストチャイルド)」と呼ばれる、存在を消したような振る舞いを見せることがあります。このロストワンの立場からすれば、自分は無視されたと感じますし、その上の兄弟からすれば自由にさせられていると感じられるのです。

機能不全家族において子供が担いやすい役割については「アダルトチルドレン(AC)の種類とタイプ」を参考にしてください。

もちろん「兄は自由にさせてもらっていたのに、私は親から口うるさく言われたし、家事をやらされた」という妹の立場だった人もいます。

種類はどうであれ、毒親のいる家庭では、子供にも大人の役割を担わせることで、差別的扱いが生まれるのです。

毒親の支配のために兄弟差別をする

家庭内の役割などという生易しいものではなかった、という人もいるでしょう。その通りだと思います。

実は毒親が兄弟を差別する一番の理由は「親が支配するための構図」を作ることなのです。

毒親の目的は、家庭内で自分が一番強い立場に居続けることです。子供たちが親の言動を冷静に見て「これはおかしい」と気づいたり、兄弟同士で支え合ったりすると、親の支配は弱まります。

そうならないように、毒親は、兄弟を横につなげず、親を中心とした縦の関係に閉じ込めようとするのです。

そのために、子供ごとに違う扱いをします。やり方として多いのは比較です。「お兄ちゃんはできるのに」「妹は素直なのに」と言いつづけるのです。

このような扱いによって感情を揺さぶられた子供は、評価されることの影響の大きさを感じ取り、そこに価値を見出すようになります。そして評価者の立場にいる親に従うようになるのです。

また、差別をして兄弟間の競争や嫉妬を生み出すことで、団結しにくくさせることもできます。毒親育ちで兄弟間の絆が薄い場合には、このような扱いの悪影響であるケースが多いです。

優遇される子も自由ではありません。親に選ばれているように見えて、実際には「親の期待に沿う限り認められる」という条件つきの立場に置かれています。

親に逆らえば、今度は自分が悪者にされるかもしれないと考え、親の機嫌を取ったり、親の考えに合わせたりしやすくなります。これも支配の一部です。

これらはカルト宗教などがよく使う手口です。頭の悪い人でも簡単に他者を支配できるので、使い勝手の良いテクニックなのです。

兄弟差別を受けた子は将来どうなるか?

他の兄弟と比べて差別的な扱いを受けた子供は、内在化問題(苦しさが心の内側に向かって表れる)と外在化問題(不安や不満が攻撃、非倫理的行動に表れる)のどちらも表れやすくなります。

アムステルダム大学のマリジェ・エラドゥスらの研究では、他の兄弟と比べ、親からの温かさや愛情が少なかったり、強い叱責や批判、敵意を向けられたりすると、子供は「自分は大切にされない存在」と感じやすくなることが分かっています。

その結果、不安や落ち込み、自信の低下といった内在化問題につながるのです。

また、その不満や傷つきが外に向かうと、攻撃的な行動、反抗、社会規範からの逸脱などの外在化問題として表れることもあります。

つまり、親の差別的な扱いは、子供の心の内側に抱え込まれる問題だけでなく、周囲から見えやすい行動上の問題とも関係しているといえます。

個人的な見解としては、破滅的な恋愛関係ばかり結んでしまう人も、こうした要因が関係しているパターンが多いように思います。

「自分が悪かったから差別された」という思考がないか確認

毒親から兄弟差別を受けて育った人は、「自分が悪かったから差別された」という思考を持ってしまっていないか確認することが大切です。

こうした思考は自己肯定感の低さや、自信の持てなさにつながり、仕事や人間関係にも悪影響を及ぼします。

過去の経験を無理に忘れようとするのではなく、自分がどのような扱いを受け、それによってどのような傷つきや考え方の癖が生まれたのかを整理することが必要です。

また、親や兄弟姉妹との関係を続ける場合でも、相手の言動に振り回されないように距離を調整したり、自分の気持ちを守る境界線を持たなければなりません。

辛い気持ちが強い場合には、信頼できる人や専門家に相談し、過去の家庭内での扱いを現在の自己評価や人間関係から少しずつ切り離していくことが必要です。

参考文献
  • Jensen, A. C., & Jorgensen-Wells, M. A. (2025).Parents favor daughters: A meta-analysis of gender and other predictors of parental differential treatment.
  • Eradus, M., Leijten, P., et al. (2024).Parental differential warmth, hostility, and sibling differences in internalizing and externalizing behavior problems: A meta-analysis.
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