夫婦関係を修復するために、2人でカウンセリングを受けようと思っている人たちに、ぜひ知っておいてほしいことがあります。
カウンセリングよりも先に、映画を観て話し合ったほうが良いです。映画館に行かなくとも、DVDやストリーミングでOKです。
それによって、カップルカウンセリングと同じ効果が得られることが研究で判明しています。
(※最後に見るべき映画のリストも掲載しています)
カップルカウンセリングは危険なこともある
当カウンセリングルームは、愛着やセックスレスの相談がメインとなっていますが、心の部分での夫婦関係を修復したい、という相談に来る人も多いです。
しかし、カップルで来る人は少ないです。夫か妻が、一人で来ることがほとんどです。
私が、カップルカウンセリングを売りにしていないことが要因かと思います。売りにしていないどころか、カップルで一緒に来ることを、おすすめしていません。
カウンセリング中に夫婦喧嘩することも
なぜかというと、まず、関係を修復したいと思っている側が、パートナーにバレずに単独でできる対策もたくさんあるからです。
夫婦で一緒に来てしまうと、「カウンセラーに言われたからやってる」とバレてしまい、その効果が薄れてもったいないのです。
レスの場合などは、夫婦で一緒にカウンセリングを受けると、ベッドに入ったときにカウンセラーの顔が浮かんでしまうなどのリスクもあります。(こういった事態は、不妊治療がレスにつながる理由の一つともされています。クリニックのスタッフの顔が浮かんでしまうという人は少なくないです)
それと、夫婦の両方が前向きにカウンセリングに来ているケースは少ないです。たいていどちらかは、無理矢理に連れて来られたから仕方なく…といった雰囲気になっています。
このような状態で来ると、カウンセリング中に夫婦喧嘩を始めてしまうこともあります。喧嘩までいかなくとも、「どっちが悪いと思いますか?」と、こちらに裁判官のような役割を求める夫婦もいます。
もちろん、このような状態の夫婦であっても、何度か通っているうちに変化はします。
夫婦でカウンセリングを受けても関係が修復されるとは限らない
しかし、全ての夫婦が関係を修復できるわけではありません。夫婦の性格もありますし、カウンセラーとの相性もあります。カウンセラー自身の実力不足ということもあります。
既に夫婦でカウンセリングを受けたことがある人なら分かると思いますが、想像以上に面倒臭いですし、難しいのです。
しかも、関係が修復しなければ、「カウンセリングまで受けたのにダメだった」と絶望してしまうこともあります。
無理矢理に連れて来られたほうは、「カウンセラーに恥だけ晒して、時間とお金が無駄になった」と怒りを感じることもあります。
夫婦関係を修復するためのカウンセリングは、意外にもリスクが高いのです。
それでも夫婦の間に問題が起こっているなら、何らかの対策をしなければなりません。そんなときにおすすめなのが「映画」なのです。
映画は夫婦関係修復カウンセリングと同じ効果
夫婦関係を改善するにはどんな手法が有効なのかを調べた、ロチェスター大学のロナルド・D・ロゲ教授らの実験があります。
この実験では、結婚中または婚約中の174組のカップルを、ランダムに以下の4つのグループに割り当てました。
- PREP(対立管理プログラム):対立管理と問題解決スキルを学ぶ。(4回のセッション・合計15時間)
- CARE(受容と共感プログラム):受容、サポート、共感のスキルを学ぶ。(4回のセッション・合計15時間)
- 映画:特定のスキル訓練は行わず、恋愛映画を観て話し合う。(5回のセッション)
- 無介入群:何もしない。(上記との比較のためのグループ)
※ 1の「PREP(Prevention and Relationship Enhancement Program)」と2の「CARE(Compassionate and Accepting Relationships Through Empathy)」は、夫婦関係修復カウンセリングで用いられるトレーニングの方法です。
離婚率も下げられる
この実験に参加したカップルは、その後3年間に渡って追跡調査され、定期的に夫婦関係の満足度などを報告しました。
その結果、無介入群(何もしなかったグループ)の結婚生活に対する満足度が、最も低下していることが分かりました。
PREPとCAREのトレーニングをしたカップル、そして映画を観て話し合ったカップルの満足度は同じくらいでした。
実験前の予測では、PREPは否定的な行動の低減に有効であり、CAREは感情的サポートや愛情表現の向上に有効であると考えられていましたが、実際にはそのような効果は見られませんでした。
また、3年後の離婚率は以下の通りでした。
- CARE:13.3%
- PREP:13.5%
- 映画:13.3%
- 無介入群:24.4%
つまり、夫婦で映画を観て話し合うことは、夫婦関係を改善するための、カウンセリングと同じレベルの効果があるということです。
映画を観て何を話し合えば良いのか?
映画を観て話し合うといっても、具体的にどうすれば良いのか?ということなのですが。
今回の実験ではまず、カップルを研究所に呼んで、関係を維持するために定期的な努力をすることは大事ですよ、という説明をしました。
その後で『Two for the Road』(邦題:『いつも2人で』)という映画を見せ、以下の点について話し合うように言いました。
- 対立への対処:映画の登場人物はどのように対立を解決していたか?自分たちの対立の仕方と比べて、改善できる点はあるか?
- 期待のコントロール:映画のカップルはお互いの期待をどのように扱っていたか?自分たちの関係では、どのように期待をすり合わせることができるか?
- 感情的なサポート:どのシーンで、パートナーがお互いを支え合っていたか?自分たちはどのようにサポートし合っているか?
- 許し:映画のカップルはどのように許し合っていたか?自分たちの関係において、許し合うことはどれくらい重要か?
その後に、47本の映画のリスト(後述)を渡し、その中から好きなものを選び、自宅で週に1回、今回と同じことをするように、指示をしたのです。
その結果、夫婦関係のカウンセリングと同じ効果を得られたということです。
なぜ映画を観ると夫婦関係が良好になるのか
ただし、この実験の参加者は「深刻なカップル関係の悩みを抱えていないこと」という条件を満たしている人だけが対象でした。
なので、当カウンセリングルームに夫婦関係の修復の相談に来ている人には使えないな、と思っていたのですが…。
この研究の話をしたら、「やってみる」という人がけっこういまして。
しかも、「すごい効果がありました」という人もいたのです。
お互いの立場で考える視点が身についたり、二人で映画を観るという習慣ができたことだけでも、関係が改善されたという人もいました。
そもそも、なぜ映画を観て話し合うことで、夫婦関係が修復されるのかというと、人間はもともと対立を解決するための能力やスキルを持っているからです。
長く一緒にいて、その存在が当たり前になると、配慮しなくなるので、それらのスキルを使うことを忘れてしまうだけなのです。そのため、思い出させてくれるリマインダーがあれば良いのです。
そのリマインダーとしての役割を果たすのが、「映画を見て話し合う」ということなのです。
また、映画内のシチュエーションが、自分たちと類似しているか異なっているかを意識することで、自分たちの関係を客観視できることも要因です。
夫婦関係を修復するために見るべき映画のリスト
今回の研究論文には、使用された映画のリストが記載されていないのですが、なぜか、私はこの映画のリストを持っているのです。
確か論文発表当時は、研究所か、ロゲ博士のウェブサイトに載ってたからだった気がします。もしくは論文の付録にあったか…。
なぜか、JPG形式の画像で持っていました。ちょっと大変でしたが、リスト化しました。
後ろに邦題をつけていますが、私は映画にあまり詳しくないので、もしかしたら同じタイトルの別の映画の可能性も若干あります。
- Adam’s Rib(アダム氏とマダム)
- Anna Karenina(アンナ・カレーニナ)
- As Good As It Gets(恋愛小説家)
- A Star Is Born(スタア誕生)
- Barefoot in the Park(裸足で散歩)
- Children of a Lesser God(愛は静けさの中に)
- Days of Wine and Roses(酒とバラの日々)
- Desk Set(おー! ウーマンリブ)
- Dying Young(愛の選択)
- Fools Rush In(愛さずにはいられない)
- Forget Paris(彼と彼女の第2章)
- French Twist(彼女の彼は、彼女)
- Funny Girl(ファニーガール)
- Gone with the Wind(風と共に去りぬ)
- Guess Who’s Coming to Dinner(招かれざる客)
- Hanover Street(ハノーバー・ストリート 哀愁の街かど)
- Husbands and Wives(夫たち、妻たち)
- Indecent Proposal(幸福の条件)
- Jungle Fever(ジャングル・フィーバー)
- Love Jones(ラブ・ジョーンズ)
- Love Story(ある愛の詩)
- Made for Each Other(貴方なしでは)
- Mississippi Masala(ミシシッピー・マサラ)
- Move Over, Darling(女房は生きていた)
- Mr. Blandings Builds His Dreamhouse(ウチの亭主と夢の宿)
- My Favorite Wife(ママのご帰還)
- Nina Takes a Lover(ニーナの情事)
- Nine Months(9か月)
- On Golden Pond(黄昏)
- Pat and Mike(パットとマイク)
- Penny Serenade(愛のアルバム)
- Phffft(※日本未公開)
- Red Firecracker, Green Firecracker(哀戀花火)
- She’s Having A Baby(結婚の条件)
- Steel Magnolias(マグノリアの花たち)
- Terms of Endearment(愛と追憶の日々)
- The Devil’s Advocate(ディアボロス/悪魔の扉)
- The Egg and I(卵と私)
- The Male Animal(※日本未公開)
- The Out-of-Towners(アウト・オブ・タウナーズ)
- The Thin Man(影なき男)
- The Way We Were(追憶)
- Untamed Heart(忘れられない人)
- When a Man Loves a Woman(男が女を愛する時)
- Who’s Afraid of Virginia Woolf?(ヴァージニア・ウルフなんかこわくない)
- With Six You Get Eggroll(※日本未公開)
- Yours, Mine and Ours(ヘレンとフランクと18人の子供たち)
(アルファベット順)
このリストを見ると、シリアスなものより、ロマンティック・コメディ(ラブコメディ)と呼ばれるものが多いです。気軽に話せそうな話題のほうが良いのかもしれません。
実験では、月に5本の映画を見ていましたが、月に1本でも効果は表れるそうです。
わざわざ映画館に行かなくとも、DVDやNetflixで見ればOKです。実験参加者はレンタルで視聴しました。
※余談ですが、付き合う前後の関係が浅いうちは、一緒にラブコメディを見るのは良くない、という研究もあります。ラブコメは恋愛がトントン拍子で進むため、自分たちがその通りに進まないと「何か違う」と感じやすくなるからです。
- Rogge, R. D., Cobb, R. J., et al. (2013).Is skills training necessary for the primary prevention of marital distress and dissolution? A 3-year experimental study of three interventions.


