乳幼児期に親などの養育者との間に結ばれる絆を愛着といいます。
健全な愛着が構築されないと大人になった後の人間関係に影響が出ることもあります。
人から嫌われることを過度に恐れたり(不安型)、反対に人と親密になることを恐れたり(回避型)するのです。
そしてこのような愛着の問題がSNS依存にもつながることが複数の研究から分かっています。
もし、あなたが常にSNSをチェックしないと落ち着かなかったり、寂しいと感じたとき何時間も見続けてしまうのなら、愛着の問題があるのかもしれません。
そして、そこから来る強い承認欲求も関係している可能性があります。
愛着の問題を抱えているとSNSに依存しがち
ナポリ大学のマリア・キアーラ・ダリエンツォたちが、過去に行われたSNS依存と愛着の関係についての研究を分析した論文があります。
それによると愛着の問題を抱えている人ほどSNS依存に陥っている傾向が高いということが分かっています。
中でも不安型の愛着スタイルを持っている人は依存しやすいという結果になっています。
回避型の場合には依存するという研究もあれば、しないという研究もありました。
回避型の場合、プライバシーを公開したくないという気持ちが強ければ、SNSとは距離を置くでしょうからこのような結果となることは自然です。
なぜSNS依存になるのか?
愛着の問題を抱えている人の中でも不安型といわれるタイプは、孤独感や見捨てられ不安を持ちやすいです。
そして恋人や家族とのつながりが感じられなくなると強い不安を感じてしまいます。
その不安を解消するためにSNSで他者とのつながりを求めるのです。
そこで一時的にではあれ安心感を得ることが出来れば、それが癖となり依存していくということです。
強い承認欲求によってSNSに依存するパターン
また、愛着の問題を抱えていると、他者からの承認を強く渇望することがあります。
なぜなら子供時代に肯定されたという実感を持つことができなかったため、大人になった後も何かをやり残している感覚があるからです。
このようなケースではSNSの投稿にイイネがつけば、それだけで自分の存在を肯定されたような気持ちになるのこともあります。
それによって、自分の存在が認められたような、今までに感じたことのない高揚感を得られるのです。
しかし、この高揚感はすぐに消失しますから、再びイイネを求めるということを繰り返し、依存していくのです。
このように、愛着の問題を抱えた人は、目立ちたいというより、存在自体を肯定されたいという意味での承認欲求によってSNSに依存している人が多いといえます。
単純なシグナルも不定期に来ると依存する
強い承認欲求に加え、SNSに通知が来るタイミングがランダムであることも、依存しやすさにつながります。
単純なシグナルであってもランダムに発生すると人間は依存するようになるのです。
ソシャルゲームのガチャも単純な仕組みですが、いつ当たりが出るか分からないから課金を続けてしまうのです。
これと同じことがSNSでも発生しています。スマホを確認すると、イイネやメッセージが来ていることもあれば、来ていないこともあります。
この不確定さがさらに強い依存を誘発してしまうのです。
SNSは見ないほうが幸せ
寂しさを感じたときにSNSを見れば楽しい気持ちになることもあるでしょう。
しかしSNSがもたらす幸福感が短期的なものに過ぎず、オフラインになればそれらの効果は消失することが分かっています。
急にSNSを断つことは難しいかもしれませんが、依存している人は少しずつ使用時間を減らしましょう。
バース大学のジェフ・ランバート博士らの研究によればインスタやツイッター(X)、TikTokなどのSNSを一週間止めるだけでも、幸福感が増し、不安が減ることが分かっています。
不安を解消するために使用しているSNSが実は不安を喚起しているのです。
SNSに限りませんがネット上のサービスはいかに依存させるかを心理学的な見地から検討して設計されているものが多いのです。
特に不安を抱えている人はSNSを見ないほうが幸せなのです。
⇒インスタの「いいね」がつかないと不安になるのは目的意識がないからです
参考文献
・Maria Chiara D’Arienzo, Valentina Boursier & Mark D. Griffiths. Addiction to Social Media and Attachment Styles: A Systematic Literature Review. International Journal of Mental Health and Addiction volume 17, pages1094–1118 (2019).
・Jeffrey Lambert, George Barnstable, Eleanor Minter, Jemima Cooper, and Desmond McEwan. Taking a One-Week Break from Social Media Improves Well-Being, Depression, and Anxiety: A Randomized Controlled Trial. Cyberpsychology Behavior and Social Networking, May 2022.