親密になりたい気持ちはあるのに、いざ相手との距離が近づくと不安や恐怖が強くなり、自分から関係を壊すような行動を取ってしまう「恐れ回避型」は、浮気の可能性も高いことが指摘されています。
もちろん、恐れ回避型だから必ず浮気するということではありません。
しかし、複数の研究を見ると、不安定な愛着を持つ人は安定型の人よりも浮気しやすく、なかでも恐れ回避型ではその傾向が強く表れることがあります。
なぜ「近づきたいのに怖い」という矛盾した愛着スタイルが、浮気という行動につながるのでしょうか?
不安定な愛着の人は浮気する
混乱を避けるために、最初に愛着スタイルについて整理しておきます。
様々な分類方法がありますが、今回は下記の分類で説明します。心理学研究でも用いられることが多い分類方法です。

拒絶回避型は完全に心身ともに他者を遠ざけようとするタイプで、恐れ回避型は近づきたい心を持ちつつも遠ざける行動を取ってしまうこともあるタイプです。
それぞれの内容をさらに詳しく知りたい方は「愛着スタイルごとの割合を調べたら、論文によってバラバラだった」を参考にしてください。
イーラーム大学のナスリン・ギアシらが13,600人以上の愛着スタイルと浮気について分析したところ、不安型か回避型かに関係なく、不安定な愛着を持つ人は、そうでない人と比べ、浮気する可能性が高いことが分かっています。
不安型と回避型はどちらが浮気しやすいか?
では、不安型と回避型ではどちらが浮気する可能性が高いのでしょうか?
これにはケンタッキー大学のネイサン・デウォール教授らの研究が参考になります。
この研究では参加者に以下の誠実さを測る項目に回答してもらうことで、浮気のしやすさについて検証しています。
- パートナーを裏切ることは道徳的に間違っている
- バレずに済むなら浮気する[R]
- 恋愛相手に誠実でいることは大切なことである
- 恋愛相手を裏切ることは大した問題ではない[R]
- 機会があれば浮気をする[R]
[R]は逆転項目なので同意する傾向が強いほどスコアをマイナスする
回避型は実際に浮気していることが判明
回答を分析したところ、回避型ほどスコアが低い(=浮気しやすい)傾向にあることが分かりました。
さらに12週間の追跡調査を行ったところ、回避型は配偶者や恋人以外とキスやハグ、性交をしている確率が高いことが分かりました。
同じ不安定な愛着スタイルを持つ人でも、不安型ではこのような傾向は見られませんでした。
他の異性に視線が向きやすい

今回の実験ではドットプローブ課題というテストも行っています。
これはまずコンピュータ画面のどこかにランダムに見知らぬ人の写真が表示され、その後にまたどこかにランダムに表示される図形の形状を判別するというものです。
魅力的な異性の写真が表示された後に、それと同じ場所に表示された図形に対してだけ反応が早い人は、そこに注意が残りやすい(=付き合ってもいない異性に惹かれやすい)といえます。
この課題でも、回避型ほど、魅力的な異性の写真に注意が残りやすいという結果となりました。安全型や不安型でこのような傾向は見られませんでした。
この研究では回避型だけが浮気しやすいという結果になっているのです。
恐れ回避型が最も浮気をしやすい
拒絶回避型と恐れ回避型ではどちらが、浮気する確率が高いのでしょうか?
パデュー大学のヘイ・トゥンフォン氏が、恋人関係にある360人を対象に愛着スタイル、関係への満足度、浮気をする可能性について調べた研究があります。
この研究によると、恐れ回避型の人ほど浮気する傾向が顕著であることが分かっています。ただし、この研究では、不安定な愛着を持つ人はほとんどが「恐れ回避型」に分類されてしまったためデータの偏りが少し気になるところではあります。
ちなみに、最初に紹介した研究でも、不安定な愛着スタイルをさらに細かく分類して検証したところ、特に恐れ回避型の浮気する確率が高いことが分かっています。
恐れ回避型が浮気をする理由
私が相談を受けている感覚でも、恐れ回避型が最も浮気する確率が高いように感じます。
これには彼らに特有の心理的特徴と行動パターンが関係していると考えられます。以下に、その主な理由を説明します。
1. 自己防衛としての浮気
恐れ回避型の人は、過去に親しい人間関係で傷ついた経験や裏切られた経験を持っていることが多く「他人に完全に頼ることは危険だ」という信念を形成しています。
この信念が原因となり、恋愛関係において心を完全に開くことを避け、自分自身を守る行動に出ることがあります。
その一つの形が浮気です。浮気をすることで、相手に対してあまり深く感情を寄せることなく、自分自身が傷つくリスクを軽減できると無意識に感じているのです。
また「パートナーに捨てられるくらいなら自分が先に関係を壊す」という心理的な防衛反応が、浮気という行動として表れることもあります。
このような自己防衛の行動は、彼らが抱える恐れや不安を一時的に緩和するかもしれませんが、結果的に長期的な関係を築くことをさらに難しくしてしまいます。
また、浮気によって関係が壊れることで、自分自身の愛着スタイルをさらに強化し、同じパターンを繰り返す可能性も高まるのです。
2. 恋愛関係で満足感を得にくい
研究では恐れ回避型の人は、恋愛関係において満足感を得にくい傾向があることが示されています。
これは彼らが親密さに対して、矛盾した感情を抱えていることが原因です。
たとえば、パートナーとの関係が良好であったとしても、心の中で「本当にこの人を信じていいのか」といった疑念を抱き続けるため、関係に十分な満足感を得ることができないのです。
このような不安感が、新しい相手との関係で一時的に解消されるのではないかと期待し、浮気に繋がることがあります。
また、恐れ回避型の人はパートナーとの親密な身体的関係に不安を感じやすいです。
その結果、性的満足度が低下し、それを埋め合わせるために外部の相手に目が向く可能性があります。
このように、恐れ回避型の人の満足度の低さは浮気を引き起こす大きな要因となり得るのです。
3. 浮気が「手軽な逃げ道」になること
恐れ回避型の人にとって、浮気が葛藤やプレッシャーを回避する手段として機能することもあります。
たとえば、現在のパートナーとの関係で生じた問題や不安を、他の相手との新しい関係で一時的に忘れようとすることがあります。
浮気相手とは深い感情的な結びつきを持つ必要がないため、気楽に過ごせる関係として受け入れられやすいのです。
また、恐れ回避型の人はパートナーとの長期的な関係の中で感じる安定感や親密さを十分に受け入れられず、それが飽きや孤独感につながることがあります。
健全なカップルであればそこに向き合い話し合うことで、心の安定を得ようとするものです。
しかし恐れ回避型の人は浮気を通じて「新しさ」や「刺激」を感じることで、自分の不安や満たされない気持ちを補うという安易な方法に流れやすいのです。
こうした行動は根本的な問題解決にならないどころか、さらに大きな関係の破綻を招く可能性があります。
しかし、恐れ回避型の人にとっては感情的負担を軽減する「一時的な逃げ道」として選ばれることがあるのです。
性格傾向との関係も
当然ですが、浮気のしやすさは愛着スタイルだけで決まるものではありません。元々の性格傾向も影響します。
研究でも「誠実性(conscientiousness)」と浮気のしやすさは逆相関の関係にあることが分かっています。
誠実性とは責任感が強く、自己管理ができ、目標達成に向けて計画的かつ努力を重ねる性格傾向のことです。
このような性格の人は決めたことをしっかりと守る特徴がありますから「この人が自分の恋人」と決まったら、他の人と恋愛関係を結ぼうという気は起こりにくいということです。
浮気するかどうかに関わらず、不安定な愛着を持つ相手との恋愛関係は難しいものですから、相手のタイプに合った接し方が重要です。
- Ghiasi, N., Rasoal, D., Haseli, A., & Feli, R. (2024).The interplay of attachment styles and marital infidelity: A systematic review and meta-analysis.
- DeWall, C. N., Lambert, N. M.,et al. (2011).So far away from one’s partner, yet so close to romantic alternatives: Avoidant attachment, interest in alternatives, and infidelity.
- Fung, H. T. H. (2024).Exploring the relationship between attachment style and infidelity: An analysis of contributing factors.

