不安定な愛着スタイルを持つ人の中で、最も嫉妬深いとされるのは不安型です。しかし、嫉妬の種類によっては、恐れ回避型が最も嫉妬深さを見せることがあります。
それは、認知的嫉妬です。
具体的には「浮気しているのでは?」「あの人といるほうが楽しいのでは?」と何度も考えるような嫉妬です。
これは「言語化できないけれど何だか不安や怒りを覚える」といった情動的嫉妬とは微妙に異なるものです。
恐れ回避型が認知的嫉妬を持ちやすい理由は、解釈のフィルターである「内的作業モデル」が二重に否定的だからです。
内的作業モデルと嫉妬
私たちは心の中に「自分はどんな存在か?」「他人はどんな存在か?」というイメージを持っていて、それに基づいて様々な予測や判断を行います。このようなイメージを内的作業モデルといいます。
たとえば「自分は愛されるべき存在」という内的作業モデルを持っている人は、誰かに微笑みかけられたときに好意と判断する可能性が高いです。
しかし「自分は愛されない存在」という内的作業モデルを持っている人はバカにされたと判断してしまうことがあるのです。
内的作業モデルは幼少期からの親との関わりのなかで形成されます。
たとえば2~3歳の頃に怖い思いをして親のもとへ駆け寄ったとき、冷たい対応を取られると「自分は愛されない存在」という内的作業モデルが形成されます。同時に「他人は信用できないもの」という内的作業モデルも形成されます。
そして、これが成人後の恋愛における嫉妬のしやすさにも関係してくるのです。
恐れ回避型は「認知的嫉妬」が強いという調査結果
心理学者のアポリナリア・V・チュルシナが、20〜54歳の男女を対象に行った、愛着スタイルと嫉妬心に関する研究があります。
この研究では嫉妬を以下の3つの種類に分類し、愛着スタイルごとにどんな違いがあるのかを分析しています。
- 認知的嫉妬:「浮気しているのでは?」と疑う、考え込む
- 情動的嫉妬:不安、怒り、悲しみなどの感情が生じる
- 行動的嫉妬:スマホを見る、問い詰める、確認するなどの行動に出る
結果を分析したところ、恐れ回避型と不安型は特に「認知的嫉妬」と「行動的嫉妬」が強いことが分かりました。
愛着不安が嫉妬を生む仕組み
不安型と恐れ回避型に共通しているのは、恋人との関係で「自分は本当に愛されているのか」「いつか見捨てられるのではないか」と不安になりやすい点です。これが愛着不安です。
愛着不安が高い人は、恋人の行動を疑いやすいです。たとえば、返信が少し遅れたとき「忙しいのかな」とは考えません。「気持ちが冷めたのかもしれない」「誰か他の人といるのかもしれない」と考えるのです。
不安が強いために、特別に怪しいことがなくても、曖昧な出来事を悪い方向に解釈しやすいのです。
認知的嫉妬とは、まさにこの「疑う思考」のことです。怒ったり泣いたりする感情そのものではなく、「浮気しているのではないか」「裏切られるのではないか」と頭の中で考え続ける状態です。
不安型と恐れ回避型は、どちらも愛着不安が高いため、相手を失う可能性に敏感になります。そのため、実際に浮気の証拠があるかどうかに関係なく、相手の小さな変化や曖昧な行動をきっかけに、疑いの思考を持ちやすくなるのです。
二重の否定的な「内的作業モデル」と恐れ回避型の嫉妬
データ上は恐れ回避型が最も「認知的嫉妬」が強くなっていました。(※1)
これには先述の「内的作業モデル」が関係しています。恐れ回避型は、愛着不安の上にさらに二重の否定的な「内的作業モデル」が加わるのです。
恐れ回避型は、不安型と回避型の両方の特徴を持っています。
つまり、不安型の「自分は愛されない存在」と、回避型の「他人は信用できない存在」という二重の否定的な内的作業モデルを持っているのです。
このフィルターを通して、恋人を判断するとどうなるでしょうか?
「自分は愛されない存在だから浮気されやすい」「他人は信用できない存在だから浮気する」と考えやすくなります。
恐れ回避型は、認知的嫉妬に関して、マイナス方向へのブーストが、不安型と回避型の2倍かかっているということです。
※1 今回の調査では不安型と恐れ回避型の双方が強く、この二者間に統計的な有意差はないが、数字上は恐れ回避型が最も強かった。
恐れ回避型が嫉妬したとき何を恐れているのか
あなたの恋人や好きな人が恐れ回避型で、嫉妬深いときにどのようにケアしてあげれば良いのでしょうか?
それを知るには、彼らが嫉妬したときに何を恐れているのか知る必要があります。
イタリア・ピサ大学のドナテッラ・マラッツィティ教授らの愛着と嫉妬に関する研究があります。この研究では嫉妬心を、それを構成する下記の5つの要素に分けて細かく分析しています。
- 強迫性・強迫的嫉妬:自分でも過剰、非現実的と分かっていながら、嫉妬感情や思考を抑えられない
- 自己評価・抑うつ的嫉妬:自分はライバルより劣っていると感じ、裏切られるのではないかと考える
- 喪失恐怖・分離不安的嫉妬:恋人を失うことに耐えられず、常に近くにいたいという依存的傾向が強い
- 疑念・妄想的嫉妬:恋人やライバルに対する強い不信、疑い、監視行動
- 対人過敏性・過敏性関連嫉妬:恋人や周囲の刺激に過敏に反応。他者の言動や環境変化を脅威と受け取る
恐れ回避型は喪失恐怖が強い
分析の結果、恐れ回避型は喪失恐怖が優位に強いことが分かりました。
「浮気そのものへの怒り」よりも、「相手が離れていくかもしれない不安」が中心にある嫉妬です。
恋人を失うことを受け入れられず、そのことを想像しただけでも強い苦痛を感じるのです。その結果として、一種の依存関係のようになり、いつも一緒にいることを求めたり、離れていると不安や苦痛を示したりするようになります。
恐れ回避型は、この喪失恐怖だけ有意に高かったのです。相手を強く必要とする一方で、親密さを避けるという矛盾により、関係が不安定に感じられ「失うかもしれない」という不安が強まりやすいことが要因と考えられます。
喪失恐怖を低下させるための安全性のプライマー
恐れ回避型の喪失恐怖を低下させるにはどうすれば良いのでしょうか?
それは「安全性のプライマー」を与えることです。
プライミング効果
人間というのは、先行して受けた刺激の影響によって、後続する行動が変化します。このような現象を「プライミング効果」といいます。
たとえば、交通事故の映像を見せられた後、注意して運転するようになるのはプライミング効果です。
このときの刺激(交通事故の映像)をプライマーといいます。
安全性プライマー
安全性のプライマーとは、不安定な愛着を持つ人の行動を変えるような刺激です。
具体的には「自分は大切な人に受け入れられている」「困ったときに支えてもらえる」という安心感を思い出させる心理的な働きかけです。
こうしたプライマーを与えることで、否定的な内的作業モデルによる判断が、ポジティブな方向へと寄りやすくなります。
「私はあなたを絶対に見捨てない」は逆効果
だからといって言葉で「私はあなたを絶対に見捨てない」などと言うのは逆効果となりやすいです。
恐れ回避型でも、安心感を持って接することのできる相手はいます。それが友達か恩師かは分かりませんが、そういう人たちとのエピソードを思い出させ、話してもらうのです。
すると、「自分は大切にされる存在」「他者は助けてくれる存在」という感覚が生じやすくなるのです。
さらには、あなたと一緒にいるときにそのような感覚を得ることで、錯誤帰属(※2)が起こり、「この人といると安心だ」という感覚を持ってもらえることも期待できます。
※2 錯誤帰属:自分の感情や身体反応の原因を、本当の原因とは別のものに誤って結びつけること。ここでいえば、第三者を思い出して感じた安心感を、一緒にいるあなたのおかげで得ていると認識すること。
- Chursina, A. V. (2023).The impact of romantic attachment styles on jealousy in young adults.
- Marazziti, D., Consoli, G., et al. (2010).Romantic attachment and subtypes/dimensions of jealousy.


