自分が嫌いすぎる原因。生きづらい状況から抜け出す方法

自分が嫌いすぎる、という人の根底には、存在そのもに対する「恥」の感覚があります。

その感覚から逃げるために、自分を攻撃し続け、嫌いになってしまったのです。

このような人は非常に生きづらいです。自分を疑ったり防衛的になることで、仕事や勉強、人間関係に支障をきたすからです。

そこから抜け出すためには、失敗したときなどに、改善するための思考を意図的に持つ必要があります。

「自分が嫌いすぎる」は他者の声の内面化からはじまる

生まれた瞬間から、自分のことが嫌いだったという人は滅多にいません。

多くの人は、他人の態度や言葉の影響を受けて、自分に対する評価を形成します。

特に子供は、自分の価値を自分だけで判断できません。最初は、親や身近な大人の反応を通して、自分の価値を学びます。

そこで、失敗したときなどに「お前は本当にダメだ」と、繰り返し否定されると、「行動ではなく自分がダメなのだ」と感じてしまうのです。

この悪影響はかなり大きなものです。行動の失敗なら、直すことができますが、存在そのものが悪いと思ってしまうと、逃げ場がなくなってしまうからです。

すると、こうしたネガティブな言葉が、本人の中に取り込まれ、やがて自分自身の内なる声となるのです。自分に対して「お前はダメだ」と言い続けてしまうということです。

「自分が嫌いすぎる」という人は、潜在意識でこの声を聞き続けているのです。

ジークムント・フロイト大学のチームによる研究でも、親の否定的な態度によって内在化された自己批判が、ネガティブ思考を反芻させ、気分の落ち込みにつながることが分かっています。

親や教師からの影響だけではなく、同級生からのイジメや、恋人からの何気ない一言が、いつまでも内面に残り続けてしまうこともあります。

また、最近の研究では、SNSでキラキラした人と自分を比べることで、余計に自分を嫌いになるという悪循環が生じることも分かっています。

自分のことが嫌いすぎる人は生きづらい

自分のことが嫌いすぎる人は、とても生きづらいです。

仕事や人間関係において、不利になりやすいからです。

ベルン大学の、サマンサ・クラウス博士らが、自分のことを好きか(自尊感情)が、仕事や人間関係にどう影響するかを調べた研究があります。

それによると、自尊感情の低い人は、良い職業や地位を得にくいことが分かっています。自分の能力を疑ったり、「どうせ自分は負け組」という考えが、挑戦を躊躇させるだけでなく、実際のパフォーマンスまで落とすからです。

また、他人から身を守りたいと考えていることも多く、人間関係で防衛的になり、良い関係を築き難いことも分かりました。

それによって、相手に理解されず、支援を得にくくなることも、生きづらさにつながる要因です。

また、これらの現象は相互作用することも分かっています。つまり、自分が嫌いだと、生きづらくなり、生きづらいと余計に自分を嫌いになるのです。

「自分が嫌いすぎる」の根底にある「恥」の感覚

では、この生きづらい状態から抜け出すには、どうすれば良いのでしょうか?

ここで重要となるのが、「恥」の感覚への理解です。

親や周囲の批判が強い環境では、子どもは自分を守るために、先回りして自分を責めることがあります。

誰かに怒られる前に、「自分が悪い」と結論づけ、自分を叱るのです。(これが繰り返され自分を嫌いになります)

これは自分の心を守るための、防衛反応です。では何から守ろうとしているのでしょうか?

一つは恐怖です。例えば親から暴力を振るわれるとか、見捨てられて生きていけなくなるといった恐怖です。

しかし、それだけではありません。そこには「恥」の感覚からの逃避もあるのです。

当カウンセリングルームは、機能不全家族で育ったアダルトチルドレンの方が、多く相談に来られます。

そこで話を聞いていると、子供時代に親から怒られているとき、恐怖と同時に「恥ずかしい」という感覚もあった、ということが少なくありません。

なぜかというと、「行為に対する罪悪感」ではなく、「存在に対する羞恥心」が芽生えやすい脳を持っているからです。「お前はダメだ」と言われ続けたことで、作られた脳です。

「存在に対する羞恥心」というのは、言い換えれば、生きていることが恥ずかしいということです。これは人間という社会的動物にとっては耐え難いことです。

だから、先回りして自分を罰し、自分を嫌いになり、恥ずかしさから逃げようとしているのです。

自分が嫌いすぎるという根底には、この「恥」の感覚があるのです。

歪んだ恥の感覚を捨てる

自分が嫌いすぎる状態から抜け出すには、歪んだ恥の感覚を捨てなければなりません。

そのためには、何かに失敗したときの思考を意図的に変える必要があります。

失敗させる実験

ロンドン・サウス・バンク大学の研究チームが、面白い実験を行っています。

参加者に、アル・ハーシュフェルド(有名なイラストレーター)の絵を見せ、その中に隠された「NINA(※1)」という文字を全て見つけ出すよう言いました。

このとき実験スタッフは、何枚かの絵について嘘をつきました。たとえば、NINAという文字が2個しかない絵に「この絵には3つ隠されています」と説明したのです。

つまり、どれだけ頑張っても見つけ出すことはできず、失敗するということです。

※1 アル・ハーシュフェルドは、娘の名前である「NINA」という文字を自分の作品の中に、こっそり描くことで有名でした。

反芻思考の高い人は恥を感じやすい

この実験では、失敗したときに、どれくらいの恥を感じたかを測定しました。

その結果、マイナスの反芻思考の高い人、つまり嫌なことや失敗を、頭の中で何度も繰り返し考えてしまう人ほど、恥を感じやすいことがわかりました、

反芻思考によって、失敗した出来事そのものよりも、「自分はダメだ」という自己評価を繰り返し強化してしまうからです。

自分を嫌う必要性をなくす方法

ちなみに、反芻思考と恥の感覚も、双方向ということが分かっています。

反芻思考が恥を生み、恥が反芻思考を生むので、そこから抜け出せないのです。そしてどんどん自分を嫌いになっていきます。

この負の連鎖を断ち切るには、どうすれば良いのでしょうか?

それは失敗したときに、次回はどうすればうまくいくかを考える習慣を身につけることです。

改善策を考えるというのは、存在ではなく、行動にフォーカスしたものです。自分がダメなのではなく、自分のやり方がダメなのだ、と考えることなのです。

人間の脳には可塑性がありますから、無理矢理にでも普段はしない考えを持つと、やがて自然とそれが出るようになるのです。

つまり、「次回はどうすれば成功するか?」を考え続けることで、存在に対する羞恥心は減り、自分を嫌う必要性がなくなるということです。

参考文献
  • Manfredi, C., Caselli, et al. (2016).Parental criticism, self-criticism and their relation to depressive mood: An exploratory study among a non-clinical population.
  • Krauss, S., & Orth, U. (2022).Work experiences and self-esteem development: A meta-analysis of longitudinal studies.
  • Milia C, Kolubinski DC, Spada MM. (2021).The effects of self-critical rumination on shame and stress: an experimental study.