辛いことや困難なことから逃げるなという人がいますが間違いです。
逃げるというのは動物の生存戦略として正しい選択のひとつです。悪いことではありません。
そもそも危機に直面したときに「逃げるな」と言っているのは動物の中では人間だけです。
危ないときは相手を倒すか逃げるかの二択なのです。もしくは死んだフリです。
緊張するのは「闘うか逃げるかしろ」という本能からのメッセージ
辛い場面に遭遇したときに緊張するのはなぜだか分かりますか?
心臓の鼓動が早くなり血圧が上昇し汗もかきます。これは闘うにしても逃げるにしても有利な状態をつくるための反応なのです。
これを「闘争か闘争反応(fight-or-flight response)」と言います。
目の前に敵が現れたら命を落としてしまう危険があります。その場合やられる前に敵を倒すか逃げなければなりません。
そのためには全身の筋肉を使いやすい状態にする必要があります。その状態が緊張状態なのです。
スポーツでも適度な緊張があったほうが良い結果が出るということはよく知られています。
逃げることを恥じるな
ハンガリーの諺に「逃げるは恥だが役に立つ」というものがあります。ドラマのタイトルにもなりましたから知っている人も多いでしょう。
逃げるとそのときは恥ずかしいけれど命を落とすよりも良いという意味です。
この諺は本来の意味以外の含蓄があります。人間には「逃げることは恥だ」という認識があることを教えてくれているからです。
ライオンに遭遇した小鹿が逃げずに闘ったとします。何とか命は助かりましたが体はボロボロです。
そして家族のもとに戻って「逃げずに闘ったよ、偉い?」と聞いたとします。そのとき親の鹿は「逃げずに闘って偉いね」とは言いません。
「勝てないのなら逃げろ」と怒るでしょう。これはどの動物でも同じです。
勝てないと分かっていても逃げずに闘うことを賞賛するのは人間という動物だけです。
「辛いことから逃げるな」は学校で植え付けられた価値観
辛いことや困難から逃げないほうが良いと思ってしまうのは学校教育の影響なのかもしれません。
学校にはテストがあります。テストは満点が決まっていますから95点取れる得意科目を勉強するよりも30点しか取れない苦手科目を勉強したほうが効果的です。
また人間関係もずっと固定されています。会社を転職するように学校を気軽に転校することはできません。(私の個人的な意見では学校も無理して行くほどのところではないのですが)
一生付き合うつもりのない相手でも同級生である以上はそれなりに仲良くしなければなりませんしトラブルが起こったら解決しなければなりません。先生や保護者もそれを望みます。
小学生や中学生が「私と彼では価値観が異なりますから必要以外のコミュニケーションする必要はないと思います」と言ってもそれを賞賛してくれる人はいないでしょう。
学校教育というのは苦手なことを克服したり辛いことに挑戦することにやたらと価値を見出しているのです。
いまだに給食の完食指導をしている先生もいるくらいです。
資本主義社会に満点は存在しない
社会に出たら辛いことに立ち向かったり、苦手なことを克服する必要はありません。
資本主義社会でビジネスをする以上は満点など存在しないからです。
頑張って苦手なことを克服して50点くらいで人並みに出来るようになったとしても、努力せずに10,000点くらい取る人がいるのです。
そんな場所で勝負してはいけません。
苦手なことを克服するよりも得意分野で突き抜けることに時間を使ったほうが勝てる可能性は高いです。
克服しなければ生死に関わる内容でない限りは苦手なことや辛いことは放っておいて良いのです。勝てるところで勝負すれば良いのです。
また人間関係においても学校のように何年も固定されているわけではありません。
嫌ならさっさと切れば良いのです。どうしても合わないと思う人と無理に合わせる必要はないのです。
まず生き残れ、儲けるのはそれからだ
ジョージ・ソロスという有名な投資家をご存知でしょうか?
彼は政府の為替介入の際に空売りを行ってポンドを暴落させ大儲けしたことから「イングランド銀行を潰した男」と呼ばれています。
ソロスの有名な言葉に「まず生き残れ、儲けるのはそれからだ」という言葉があります。
投資というのは元手となる軍資金がなければできません。つまり「元手となる軍資金を失うな」ということです。
ジョージ・ソロスは哲学の博士号を持っています。
彼の父親はハンガリー系ユダヤ人です。第一次世界大戦中にロシアの収容所に入れられそこから脱出して命からがら生き延びたという体験をしています。
これらの立場を考えると「まず生き残れ、儲けるのはそれからだ」という言葉は投資についてだけの格言ではないと思います。人生そのものの格言です。
投資の世界には「休むも相場」という格言もあります。常に売ったり買ったりを繰り返していると相場を冷静に見ることができなくなるので時々は休んでみるのも大切ということです。
また経済が混乱しているときは売るにも買うにも向いていない相場というのがあります。価格の乱高下が激しい場合などは個人投資家は手出ししないほうが良いでしょう。逃げ遅れてしまいます。
危険な状態になったときに「闘争か逃走反応」と言いましたが実はもうひとつ「凍結(Freeze)」という反応があります。
体が動かなくなるのです。これは死んだフリともいえます。動かなければ敵に見つからずに済みます。
どうしても逃げ出すことが出来ないのであれば目立たないようにしましょう。存在感を消すのです。
あなたにとっての軍資金は心のエネルギーです。これを無駄に使って失うと何も出来なくなってしまいます。
何をおいてもまずは生き残らなければなりません。どこで勝負をするのか決めるのはそれからです。逃げ出したいくらい辛いなら逃げて休むのです。