ときどき「ウチの子は反抗期がなかったから育てやすかった」と自慢げに言う親がいます。
言っている本人は自分の遺伝子と子育ての方法が素晴らしかったからだと思い込んでいるのかもしれませんが、決して偉そうに言うことではありません。
このタイプの親に育てられると大人になってから自分の意見を主張できなくなってしまうことがあるのです。反抗期のないことの恐ろしさについて説明します。
⇒アダルトチルドレンの子育て、自分の子供に連鎖させないために
反抗期は何のためにあるのか?
2歳頃になると何に対してもイヤイヤと拒絶するようになります。これを第一反抗期と言います。
これは自我が芽生え自分の考えを持つようになったということです。発達の過程において大切なことです。
思春期になると身体的にも知能的にも大人へと近づくことで自分も独立した1人の人間であるという意識が生まれます。
大人とも対等な人間であると考えるため意見を衝突させることもあります。時には暴力をふるったりモノに当たったりすることもあります。
この時期を第二反抗期と言います。一般的に反抗期というとこちらを指すことが多いです。
反抗期は大人へと成長する過程の中でアイデンティティーを確立するために必要なものなのです。
またストレスや不安を感じたときのガス抜きとしての役割を果たすこともあります。
反抗期の子供の言動に対して親が適切な対応を取れずに、押さえつけたり無視をしたりすると健全な精神が育まれないことがあります。
なぜ反抗期がなかったのか?
意見を言うと暴力を振るわれたり、人格を否定される言葉を吐かれる環境にいると反抗期になってもそれを表出することが出来ない場合があります。
親から危害を加えられるのではないかとか追い出されるのではないかという恐怖が反抗的な態度を取ることを躊躇させたのです。
もっと深刻な状態となると反抗的な気持ちさえ持っていなかったのかもしれません。そういった感情が芽生えそうになるとそれを抑圧してしまっていたのです。
親に対する恐怖がなくても気を遣いすぎたことで反抗期がなかったということもあります。
例えば親が忙しく働いていたり病弱だったりすると、親に心配をかけてはいけないとか悲しませてはいけないという気持ちが働いて自我を押さえつけてしまうことがあります。
反抗期はなかったけれど特に何の問題も抱えていないという人もいます。
その場合も自分では忘れている何らかの変化は起こっていた可能性が高いです。反抗期は必ずしも好戦的な態度となって表れるとは限らないのです。
親に確認すると分かること
ある程度の年齢になると反抗期に自分がどうだったのかよく覚えていないこともあります。
そんなときは可能であれば親に聞いてみると良いです。
そのときに親が「反抗期がなくて育てやすかった」と言ったらちょと危険かもしれません。とくに得意げな顔で言ったら要注意です。
自分の子育ては何も間違っていなかったと思い込んでいる可能性があります。子供を褒めているのではなく自分を褒めているのです。
(関連記事:親に褒められたことがないのは自分の問題ではない)
このタイプの親は自分が反抗できない雰囲気を作り上げていたことに気がついていないことが多いです。意図的にそうしていたとしても忘れているか正当化しています。
なぜなら自分の子供が表面的には何の問題もない大人に育っているように見えるからです。
反抗期に素直な感情を表出させてくれなかった親に育てられると大人になってからも自分の意見を言えない人間になります。
自分の意見を言わずに家庭の中で生き残れるとそれが一応は成功した生存戦略として心に残るからです。
そしてその最も使い慣れた戦略を用いて社会人生活も送ることになるのです。
何となくモヤモヤはするけれど大きな問題には発展せずに人間関係をやり過ごすことが出来ているので、とくに何かを変えようとも思いません。
しかしこの状態が何年も続くことでどこかで爆発したり、精神的に病んでしまうこともあります。
常に他人の顔色ばかりうかがっている人は自分の意見を少しでも主張したら相手から嫌われるとか怒られると勘違いしています。
子供時代から身につけた思考の習慣なので仕方ないのですが、まずはその誤った認識を捨てる必要があります。