恋愛依存症とは精神や生活に支障をきたすほどに恋人との関係にのめり込んでいる状態です。
ここで説明するのは私がカウンセリングを行ってきた中で多くの人に共通する特徴を心理学の専門書や論文と照らし合わせながら定義したものです。
恋愛依存症の特徴
恋愛依存症の特徴は複数ありますが多くの人に表れるものについて説明します。
診断用のチェックリストやテストではありませんからいくつ該当したかを気にする必要はありません。
1つだけしか当てはまらない人もいれば複数に当てはまる人もいます。
矛盾するような特徴を同時に持つこともあります。
常に相手のことばかり考えてしまう
恋愛依存症の特徴として常に恋人のことばかり考えて不安になってしまうということがあります。
ほんの少しでも連絡が取れなくなると嫌われたとか浮気していると心配になります。
また相手の些細な言動を大げさに捉えてしまい悪い方向にばかり考えてしまいます。
会いたくてどうしようもないのですが会うと今度はデートが終わってサヨナラするときの寂しさに襲われることもあります。
恋人とのつながりを重視しすぎる
人間は社会的動物と言われる通り常に何かとのつながりを持って生きています。普段は意識しませんが友達、家族、仕事、趣味など色々なものとのつながりが存在するのです。
それらのバランスが取れていれば何か1つなくなっても絶望することはありません。(もちろん多少のショックは受けます)
恋愛依存症者の場合はこのつながりが恋愛のみになっているのです。
そのため恋人が去ってしまうと自分そのものがなくなってしまうような感覚になるのです。
他の感情を恋愛感情と錯覚する
恋愛依存症者は愛してくれる人がいないと自分の存在を感じることが出来ません。
しかしよくよく考えてみると自分が恋人のことを好きかどうかということは考えていないのです。
相手が自分を好きかどうか心配している心のザワザワを恋愛感情と勘違いしていることが多いです。
いつも同じ恋愛パターン
恋愛のパターンはいつも同じです。
恋愛依存症は強迫的なまでに同じような恋愛を繰り返すのです。
同じようなタイプを選んで一気に燃え上がって数ヶ月後には問題が起こり感情を疲弊させられます。
一旦離れるのですがすぐに元のサヤに納まるか別の同じような人とくっつきます。
今度こそは上手くいくと思っても結局は同じステップの繰り返しになります。
一人相撲のように自分の中でのみサイクルを繰り返すこともあります。
勝手に恋人を理想に当てはめる
思い描いている理想の恋人像というものがあり新しい異性に出会う度にそれを重ね合わせます。
最初は見たいようにしか相手を見ませんから異なる部分には気づきません。
しかし数ヶ月もする頃には理想像とは違うということに気がつきます。
「なぜ言う通りにしてくれないの?」と怒るか失望します。
酷い相手を選ぶ
恋人に酷い相手を選ぶ場合その相手は自分の親に似ている人であることが多いです。
「私は父親のような人とは付き合わない」と思っていても無意識にそういう相手を選んでしまうのです。
愛してくれなかった人と同じタイプを選び愛してもらうことで過去の傷を癒そうとするのです。復讐したいという潜在的な願望が隠れていることもあります。
このようなタイプの恋愛依存症者は出会ってから早い段階で恋に落ちることが多いです。体の関係を持つのも早いですし数週間後に同棲を始めていることもあります。
現実を歪めて自分の責任にする
酷い相手に耐性が出来ると現実を歪めはじめるのも恋愛依存症の特徴です。
殴られたり浮気をされても自分が悪かったからと思うのです。
相手が涙を流しながら謝罪をしてくると言い様のない快感を覚えてしまいます。
「彼は本当は優しい人なの。愛情表現が下手なだけなの」と思っているのです。
そして自分なら変えられるという根拠のない自信を持っています。
やがて相手の問題を自分のことのように考えそれを解決することが生きがいになってしまうのです。
相手から求められていると思うと存在価値を認めてもらえた気分になれるからです。
⇒彼氏や夫の精神的DVから逃れられないのはあなたの許容のレベルが高くなるから
大切にしてくれる人には惹かれない
2つのモノが毎日ぶつかり合うと弱い方の形が変わっていきます。家庭でいうと子供の方がそれに該当します。
親の棘で突かれると子供にはその棘の形に削られて穴が出来ます。やがてピタリとハマる形になります。
これが他者との接する面の形になります。
棘のない人と接したときに自分のほうには穴がありますからしっくりきません。
だから優しくて誠実な相手と付き合っても上手くいかないことが多いのです。
自分が浮気をしたり暴力をふるってしまうこともあります。
恋愛依存症者は本当に自分を大切にしてくれる人には魅力を感じないのです。
温かい愛情に戸惑うのです。心に開いた穴が懐かしい不健全さを求めるのです。
見捨てられるのも近づくのも怖い
見捨てられることへの恐怖は自分でも意識できます。
そのためいつも相手からの愛情を求めますしそれを失わないために過剰に努力をします。自分のことはいつも後回しでかまわないのです。
恋人に捨てられることは存在感の喪失です。
矛盾するようですが恋愛依存症者は素敵な恋人と親密になることへの恐怖も持っています。
健康的な愛情を受けた経験がないため戸惑うのです。
幸せの絶頂から突き落とされるかもしれない恐怖も持ちます。
酷い相手なら見捨てないだろうと思っている
見捨てられることと親密になることという相反する二つの恐れを同時に満たす方法があります。
それは酷い相手を選ぶということです。
潜在意識の中で「酷い相手であれば他の人からは相手にされないはずだからずっと一緒にいてくれる」という安心感を持っているのです。
同時に「健全な愛情を育むことはないだろう」とも思っているのです。
しかし表面に出てくる顕在意識の中では相手を過大評価していますからそのことには気がつかないのです。
甘えたい欲求が大きくなる
恋人が出来ると徹底的に甘えたくなるのは幼少期の名残といえます。
甘え足りなかったので恋人を親に見立てて何でもやってもらおうとするのです。
1人でいたときには問題なく日常生活を送れていたのに恋人が出来た途端に何もやる気が起きなくなることがあります。
言葉遣いやしぐさまで幼くなることもあります。愛情表現の言葉や面倒を見てもらうことを求めます。心の中にいる小さな子供がどんどん出てくるのです。
(関連記事:恋愛依存症の原因は親との関係にあることが多い)
親から虐待を受けていた人の中には「今いるのは本当の親ではなく、どこかに優しい本当の親がいるのではないか?そしていつか迎えにきてくれるのではないか」と考えていたという人がいます。
大人になってもいつか本当の優しい親が迎えに来てくれるという希望を持った小さな子供が心の中にいるのです。
親にして欲しかったことを恋人に求めているのです。
甘え直しは回復のステップの中で意図的に行うのであれば効果を発揮しますが無意識にやっていても抜け出すことは出来ません。
セックスに依存している
恋愛依存症者がセックスに依存してしまう理由はいくつか考えられますがここでは2つだけ説明します。
1つはストレスです。
セックスは脳内の神経伝達物質を分泌させ快感回路を活性化します。違法薬物を摂取したときと同じことが起こっているのです。
仕事や人間関係のストレスを感じたときにセックスによって抑うつ感が緩和され高揚感を覚えると依存します。
イライラや寂しさを感じる度にセックスで解消する習慣がつくと何もないときでもセックスをしていないと不安になってしまうのです。
もう1つは性的虐待によるトラウマです。
幼少期か成人後かに限らず性的虐待を受けるとそれがセックスへの依存につながることがあります。
「私の身に起こったことは大したことではない」と思い込むためにセックスを繰り返すのです。
何度やっても私は傷つかないし何も感じないという確信が欲しいのです。
トラウマの治療において原因となったときと同じ状況に曝し「何も危険なことは起こらなかった」という体験をさせることで安心させる心理療法があります。
これと同じようなことを無意識に行っているのです。
浮気がやめられない
付き合っている恋人がいるのに浮気がやめられないのは興奮か安心を求めているからです。
恋愛の最初の段階というのはPEA(フェニルエチルアミン)などのホルモンの分泌が増えますから興奮を得ることが出来ます。
この興奮の虜になってしまうと落ち着いた関係では物足りなくなってしまい新たな異性から刺激を受け取りたくなるのです。
なぜこのような状態になるかはいくつかの原因が考えられますが1つは現実に向き合いたくない事柄があるからです。
それを恋愛から得られる快感によって誤魔化そうとしているのです。薬物依存症者にとってのドラッグのようなものです。
恋人から捨てられたとき寂しい思いをしなくて済むために複数の異性と同時に関係を持つこともあります。
保険を掛けておくと同時に1人にのめり込むことへの恐怖も避けようとしているのです。
多くの異性から求められることで自分の価値を認識しようとすることもあります。
※恋愛依存症という言葉の響きから何人もの異性と同時もしくは切れ目なく付き合っているという印象を持つかもしれません。しかしそれは数あるパターンの1つに過ぎません。また「遊びたい」というよりは「不安な気持ち」に突き動かされることが多いのです。
全てを破壊したいという願望
恋愛依存症者は弱々しい側面に焦点を当てて語られることが多いです。
しかし常に自分の弱さを見つめながら耐え続けそこに滞留しているわけではありません。
爆発しそうな感情を理性で何とか押さえつけているという人もいるのです。
世話をする裏には支配したいという願望が隠れている
普段は不安でいっぱいなのに時々全てを破壊したいという衝動が出てくることもあります。
恋愛依存症者の心の中には関係を思い通りにしたいという自己中心的な部分が多かれ少なかれ存在するからです。
コントロールすることが出来れば自分の元から去らないので安心できます。
世話をしたりアドバイスをするのは支配したいという願望も混ざった行動なのです。
脅迫的な期待
「あなたはこんな素敵な男性でしょ?」「私にこうしてくれるはずでしょ?」という脅迫的な期待を持っていることもあります。
そして相手が自分の思惑に反する行動を取った場合や裏切られたと感じたときに怒りの炎が燃え上がりムカムカするのです。
衝動的な行動に出ることもある
実際に行動に移してしまうこともあります。相手を罵ったり暴力を振るったりします。
中には相手の会社まで押しかけたりストーカーのような行動を取ってしまうこともあるのです。
とにかく今すぐ衝動を処理しなければ気が済まなくなるのです。
表面的な大人しさの下に破壊願望を持つ恋愛依存症者は少なくないのです。
恋愛依存症を完璧に定義することは不可能
今までに数多くの恋愛依存症者のカウンセリングを行ってきましたし、心理学に限らず隣接する分野の専門書や論文なども数多く研究しました。
それでも恋愛依存症を体系的かつ網羅的にまとめるのは難しい気がします。
新たな相談者と出会う度に新たな発見があり、それまでの認識が覆されることが今この時も起こっているからです。
そのような状況のため恋愛依存症の捉え方はカウンセラーによっても異なります。
ですからここで説明したことを盲目的に信用する必要もありませんし、全てを理解しようとする必要もありません。
自分にピンとくる言葉を拾って心の見取図を作ってもらえたら幸いです。それが克服への助けになるのではないかと思います。
関連記事:恋愛依存症の治し方