自分を認められないのはインポスター症候群(詐欺師症候群)だから

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努力をして結果を出しても自分を認められないという人がいます。

良い大学に入っても、良い会社に入っても、仕事で大きな成果を出しても、自分が頑張ったからだと認められないのです。

単に運が良かっただけと本気で思っていたります。

それどころか、自分がズルをしたような罪悪感を持ってしまう人もいます。

このようにどれだけ実績を出しても、自分を認めることができない人もまた愛着の問題を抱えていることがあります。

子供時代から否定され続けたことで、「ダメな自分」が思考の軸になってしまっているのです。

愛着の問題以外ではインポスター症候群も考えられます。

インポスター症候群(詐欺師症候群)

インポスター症候群とは自分の実力や成果を認めることの出来ない心理傾向です。

詐欺師症候群と呼ばれることもあります。

周囲の人から賞賛されても「買い被られているだけ」とか「本音で言っているわけではない」と疑います。

どんなに成功しても、たまたま運が良かっただけと考えてしまうのです。

また自分は成功に値する人間ではなく、実力があると信じ込ませることで上手くいったと、後ろめたい感情を持つこともあります。

自分の能力について詐欺を働いており、それがいつか暴露されるのではないかと恐れている人もいます。

たとえ実績や能力を裏付ける客観的な証拠があったとしてもそれを軽視します。

インポスター症候群は社会的な成功を収めた人達によく見られます。

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インポスター症候群は女性に多い?

インポスター症候群は女性に多いと言われることがあります。

これは1978年に出された成績優秀な女性についての論文の影響によるものと思われます。

心理学者のポーリン・R・クランスとスザンヌ・A・アイムスによって書かれたものでこの二人がインポスター症候群という言葉の名付け親です。

その中で学位や高い社会的地位を持つ150人の女性にインタビューをしました。

そしてこれらの女性が外部検証できる一貫した証拠があるにも関わらず、自分の達成したことを内面的に肯定出来ていないことが分かりました。

「入試選考のミスがあったおかげで自分は大学院に入れたに違いない」とか「今の地位にいるのは受け入れ側が何らかの手違いをしたから」などと答えた女性もいました。

多くの参加者が成功について幸運の結果であると考えていたのです。

ステレオタイプ

インポスター症候群を経験した女性はうつ病、全般的な不安、低い自尊心を示す傾向もありました。

論文の中で女性がインポスター症候群を体験する原因として、性別のステレオタイプや家族内での立場、文化、帰属などが可能性として挙げられています。

例えば「女性は能力が劣る」「成功しにくい立場」といったステレオタイプを内面化してしまうことで、自分の実力や成果を認めないようなバイアスがかかってしまうということです。

男性よりも女性のほうが強い回復力を示す

研究者たちは臨床経験に基づいて、インポスター症候群は男性でははるかに少ない頻度で発生し、実際に発生した場合にも非常に小さな強度であると述べています。

しかし、その後の研究で男性と女性の両方に等しく影響することが認められています

ヤングスタウン州立大学のレベッカ・バダウィらの論文によれば、特定の状況ではインポスター症候群の男性は女性よりも不安に苦しみ、パフォーマンスが低下することが示唆されています。

また女性のほうがより強い回復力を示したとも述べられています。

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ソフトウェア会社の社長のエピソード

起業して成功した人はどんな性格をしていると思いますか?

自信過剰で気が強いと思うでしょうか?

確かにそういう人もいます。しかし私が出会った起業家は謙虚な人のほうが圧倒的に多いです。

謙虚過ぎるくらいです。そしてインポスター症候群だろうと思われる人も多くいました。

オーストラリアにアトラシアンというソフトウェアの会社があります。

その共同創業者兼CEOのマイク・キャノン・ブルックスという人物がTEDに登壇してインポスター症候群について話しました。

彼ほどの成功を収めている人間でもいまだに自分が何をやっているか分からないと感じる時があるそうです。

心の奥で自分が偽物のように感じることはないか?勘と出任せで誤魔化してきただけではないか?と誰かに聞かれたら固まってしまいそうだと言っていました。

そしてそれが誰かにバレてしまうのではないかと不安になるのです。

他の社長も同じように感じていた

彼は優秀な起業家を表彰するパーティーで知り合った大企業の社長にその悩みを打ち明けました。

するとその社長も「同じように感じている」と言ったのです。「他の受賞者も皆感じているはずだ」とも言いました。

そこでインポスター症候群の傾向というのは誰にでもあるものなのだと気づくのです。そしてそれが必ずしも悪いことだけではないということにも。

彼はインポスター症候群のメリットについて、自分は実力不足で相手のほうが優秀だと思うことは謙虚さにつながり、人間関係を良好にすること、学ぶ意欲が沸くということを挙げています。

自分に疑問を持つのではなく、自分の知識が正しいのかということに疑問を持ち続ければ成長をすることができます。

克服するのではなく活かすという考え方も必要かもしれません。

注:インポスター症候群という名前ではありますが精神疾患ではありません。名付け親であるポーリン・R・クランスも「“症候群”ではなく“体験”と名づけるべきだった」と言っています。誰でも体験する可能性のあることだからです。

【参考文献】
・Pauline Rose Clance, Suzanne Ament Imes(1978)The imposter phenomenon in high achieving women: Dynamics and therapeutic intervention.
・Rebecca L. Badawy, et al(2018)Are all impostors created equal? Exploring gender differences in the impostor phenomenon-performance link.