「自分は何をやってもダメな人間だからどうせ上手くいかない」と思い込んでいる人が多いです。
カウンセリングで必ず変われるという説明をしても「他の人はうまくできるでしょうが自分は無理です」と自分の能力を見くびってしまいます。
これは子供時代の失敗の繰り返しにより「何をやってもダメ」という学習性無力感が身についてしまったことが原因かもしれません。
子供時代の失敗が大人になったときのチャレンジを阻む
『鎖につながれた象』というお話をご存じでしょうか?
サーカスの象が簡単に引っこ抜けそうな杭につながれているだけなのになぜ逃げないのか?というお話です。
あれだけ大きな体で引っ張れば簡単に逃げ出せるはずですが象は逃げ出そうとしません。
なぜならまだ生まれたばかりの力のないときからそこに繋がれていたからです。体が小さかった頃は何度か逃げ出そうとチャレンジしたかもしれません。
しかし何度やっても無駄だということが分かり諦めたのです。大きくなった今なら逃げ出すことが出来ますが無理だという思い込みによってチャレンジすることさえしません。
このように学習によって「何をやってもダメ」だと思い込むことを「学習性無力感」と言います。
犬に電気ショックを与えると?
学習性無力感理論を提唱したアメリカの心理学者マーティン・セリグマン博士です。ポジティブ心理学の父と呼ばれる人です。
このマーティン・セリグマン博士が犬を使って実験を行いました。
2匹の犬に電気ショックを与え、片方の犬には自分でスイッチを押すと電気ショックが止められるようにし、もう片方の犬には何をしても電気ショックが止められないようにしました。
その後でそれぞれの犬に電気ショックを回避する新たな方法を訓練しました。
するとスイッチを押すことで電気ショックを止められるようにされていた犬は新しい回避方法を学習することができました。
しかし何をやっても電気ショックが止まらないようにされていた犬は回避方法を学習することはできずに座り込んでしまい、ひたすら電気ショックを受け続けることしか出来ませんでした。
人間の場合も学習性無力感は起こります。
自分ではどうしようも出来ないマイナスの環境に置かれることによって無気力になったり抑うつ状態になることがあるのです。
しかし同じ環境に置かれた人が全員そうなるわけではありません。受け止め方の個人差が影響します。
原因をどこに求めるかで無気力感が変化する
人間の場合は同じような状況に置かれても無気力になったり抑うつ状態になる人もいれば、そうならない人もいますから全員に学習性無力感は当てはまりません。
抑うつになるかならないかは制御不能な状態の原因をどこに求めるかによって決まるというのが心理学者のリン・イボンヌ・アブラムソンらが提唱した「改定学習性無力感理論」です。
アブラムソンは数学の試験に失敗した生徒を調査し、失敗の原因をどこに帰属させるかのパターンが無力感の発生に影響を与えることを発見しました。
失敗の原因を自分自身に求めそれがいつもどんなことにも当てはまるのだと考える生徒ほど失敗したときに無力感が強くなるのです。
反対に「習ってないところが出たのだから仕方ない、こんなこともあるさ」と自分以外に原因を求める生徒は無力感が弱くなるのです。
子供時代と大人になった今の能力は違う
あなたが自分は何をやってもダメだと思っている原因はなんでしょうか?
子供の頃に親が適切な環境を与えなかったために成功体験よりも失敗体験が多くなり自分の能力を見くびっているのではないでしょうか?
それは自分の責任ではありませんし子供時代に出来なかったからといって大人になってからも出来ないとは限りません。
繋がれた鎖を外すときが来ているのではないでしょうか?
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