オセロ症候群とは配偶者や恋人が浮気をしているのではないかと強く疑い異常なほど嫉妬することです。
証拠のあるなしに関係なく確信的に疑い束縛やストーカー行為、自傷行為につながることがあります。
オセロ症候群は嫉妬妄想と呼ばれることもあります。
単独で起こることもあれば他のパーソナリティー障害などと併発することもあります。
オセロ症候群の特徴
オセロ症候群の特徴について説明します。
嫉妬
他の異性と話したりその相手を少し褒めただけで嫉妬します。
その相手は友達や同僚に限らず買い物をしたときの店員に対してもです。
女性とすれ違っただけで「さっきの人のこと見てたでしょ」と言い出すこともあります。
妄想・確信
異性と連絡をしただけでもオセロ症候群の人にとっては浮気の証拠となります。
証拠がなくとも勝手な妄想により浮気を疑い始めるとそれが確信へと変わります。
性行為の頻度が減ったことにより他に相手がいると思い込み相手を非難することもあります。
束縛
異性の友人との関係を切るように迫ります。
出会いが発生しそうな場所に出掛けることも禁止します。
一緒にいないときの行動を逐一報告させようとします。
自分からの連絡も多いですし相手にもそれを求めます。
詮索・ストーカー行為
恋人のスマホを勝手に見たり、部屋の中を詮索します。
相手にバレないように捨てアカウントなどからSNSを覗き行動を監視することもあります。 人によっては恋人のアカウントで勝手にログインします。
ネット上だけではなく実際に尾行や待ち伏せをしてストーカー行為に及ぶこともあります。
※ここで紹介したオセロ症候群の特徴は診断のためのチェックではありません。誰にでも当てはまりそうな一般的なことを自分に当てはめると「まさに自分のことだ」と思ってしまうバーナム効果が起こりますから注意してください。
オセロ症候群の原因
オセロ症候群の原因は脳機能の障害と愛着の障害の2つと関連づけられることが多いです。
愛着障害によって脳の形が変化することもありますからはっきりとは分け難いのですがこの2つについて簡単に説明します。
脳機能の障害
オセロ症候群は脳機能の障害により引き起こされることがあります。
海外の論文データベースではこちらとの関連で執筆されたものの方が圧倒的に多いです。
脳の外傷や精神疾患などとともに生じるケースが多く報告されています。
脳をMRIで撮影した画像には特定の部位において灰白質の損失が示されているものもあります。
治療法について書かれた文献もドーパミンに作用する薬などを用いた結果について言及しているものが多いです。
愛着の障害
幼少期に親との愛着が上手く形成されないと自己肯定感の低いまま大人になってしまうことがあります。
すると自分は愛される価値がないなどと考え恋人のちょっとした言動から不安を抱くようになります。
それがやがて妄想から確信へと変わり嫉妬してしまうのです。
日本では上記の2つに限らずかなり幅広く当てはめられることが多いです。単に嫉妬深いだけでもオセロ症候群とされることがあります。
妄想性障害のサブタイプ
DSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル)ではオセロ症候群は妄想性障害の下位分類とされています。
妄想性障害には以下の7つのタイプがあります。
- オセロ症候群(嫉妬型):浮気しているに違いない
- エロトマニア(被愛型):誰かが自分に恋をしている
- メガロマニア(誇大型):自分は偉大な人物である
- 被害型:誰かに危害を加えられる
- 身体型:体が変形している
- 混合型:上記のタイプが複数生じる
- 特定されていないタイプ
これらの症状が妄想性パーソナリティ障害の人に起こることもあります。
年齢・性別:どんな人がオセロ症候群になりやすいのか?
どんな属性の人がオセロ症候群になりやすいのかハッキリと断定することはできませんが大まかな傾向はあります。
性別
アメリカやイギリスで出されている論文のデータでは女性よりも男性に多いとされることが多いです。
全米の優れた病院ランキングで1位とされるメイヨークリニックが患者105人の診断データをチェックしたところ約62%が男性とされていました。
しかし日本の研究では女性のほうが多いとされることもあります。
年齢
これも上記の病院のデータですが発症時の年齢は25~94歳で平均は68歳でした。
別のデータでは53.7歳となっています。
他の論文でも若い人よりも高齢の人に見られます。
オセロ症候群を自力で治すことは可能か?
オセロ症候群を自分で診断することは不可能だと思います。
嫉妬や妄想を引き起こす原因はオセロ症候群だけではないからです。
ネットにある「オセロ症候群の診断チェック」などは嫉妬深い人ならバーナム効果により誰でも当てはまります。
またオセロ症候群を妄想性障害のサブタイプとしてみた場合には自分では気づきにくいのではないかと思います。
「恋人が浮気をしているのは間違いない、自分の妄想であるはずがない」と確信しているからです。
このようなケースでは自分で「もしかしてオセロ症候群かも?」と思う可能性は低いです。
単に嫉妬深いだけと考えているのならカウンセリングや自力で治す方法を選択しても良いと思います。
しかし他の精神疾患との併発の可能性があるのなら精神科に行くことをおすすめします。
メイヨークリニックのデータではオセロ症候群を発症した105人のうち73人が神経障害を併発しています。
心理療法のみで治療できるというカウンセラーがいたとしたらかなり危険です。
妄想的な嫉妬には全く異なる精神疾患やアルコールの大量摂取が原因となることもあります。
単に嫉妬深いだけなのか、他の精神疾患なのか慎重に判断してください。
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オセロ症候群の由来について
最後に由来について説明しておきます。
オセロ症候群はイギリスの精神科医精神科医ジョン・トッドがK.デューハーストとともに執筆した論文で命名しました。
ジョン・トッドは「不思議の国のアリス症候群(※1)」の名付け親としても有名です。
オセロ症候群の由来はシェイクスピアの四大悲劇の一つである『オセロー(Othello)』です。
ヴェニスの軍人であるオスローが妻デスデモーナの浮気を疑い殺害してしまうが勘違いだったと知り自害してしまうという物語です。
オスローは自分がデスデモーナに贈ったハンカチが浮気相手とされるキャシオーの部屋に置いてあったのを偽装工作であると見抜けずに信じてしまいました。
そして嫉妬に狂うのです。最後は妻の遺体にキスを死ながら自害するというストーリーです。
(※注1)不思議の国のアリス症候群:外界のものや自分の体が大きくなったり小さくなったり感じる症候群のこと。
参考文献
Jonathan Graff-Radford, et al. (2012). Clinical and Imaging features of OTHELLO’S SYNDROME.
Jonathan Graff-Radford, et al. (2010). Dopamine agonists and Othello’s syndrome.