夫や彼氏からの暴力を受け続けることによって抵抗や逃亡の意欲さえ失ってしまう状態のことをバタードウーマン・シンドローム(被虐待女性症候群)と言います。
DV男と別れることが出来なかったり別れてもすぐに元に戻ってしまう女性はこの状態に陥っている可能性があります。
※「虐待された、暴力を振るわれた」という意味のbatteredが語源です。殴る配偶者はbattererと呼ばれます。
暴力を受け続けると逃げ出す気力さえ失う
犬をしつける時にうまく出来ても出来なくても電気ショックを与えつづけるとやがて逃げ出すことを試みることなくその場で座り込んでしまいます。
この反応はカリフォルニア大学のマーティンセリグマン博士らの実験により明らかにされています。
このようにストレスの回避ができない環境に曝され続けることで逃げようとする気力さえ失うことを学習性無力感理論と言います。
夫や彼氏から暴力を受けても逃げ出すことのできないバタードウーマン・シンドロームの女性にもこれと同じことが起こっています。
激しい暴力を受け続けることによって「ここから逃げ出すことは絶対に不可能だ」という絶望感を持ってしまっているのです。
長期間に渡り監禁されていた人がドアの鍵が開いていても逃げ出そうとしなくなるのも同じ理論です。
これは相手の男性の強さや女性自身の自活能力とは関係ありません。
男性が華奢で肉体的な強さがなくとも、女性がハイスペックで高給取りの場合でも起こることです。
どうすれば逃げ出せるのかを考える気力すらない状態だからです。
感情が麻痺してしまっていることもあります。
(関連記事:ストレスを抱えてもお酒に逃げるな、特に女性は危険)
共依存
学習性無力感に陥った後の反応で動物と人間には違うところがあります。
それは人間の場合は心配をすることがあるということです。
誰の心配かと言うと自分を殴るDV男です。
犬が自分を痛めつけた研究者を心配することはありません。
DV被害に遭っているバタードウーマンを家族や友人が救出したとします。
これで全て解決し悪縁も切れましたということにはなりません。
再び相手のところへ戻ってしまうケースも少なくないのです。
なぜなら共依存の状態に陥っているからです。
「あの人を1人ぼっちにしてしまって大丈夫かしら?」と心配してしまうのです。
それと同時に自分を激しく求めてくれる相手がいなくなったことで物足りなさを感じます。
心にぽっかり穴が開いてしまった感覚を「あの人の事を本当に愛していたからこんな気持ちになるんだわ」と勘違いしてしまうのです。
実際には自分が求められることを求めていただけの状態でありその相手は誰でも良かったのですがそのことには気がつきません。
逃げ出したことに罪悪感を覚えてしまう人もいます。
「殴られるのは自分にも原因がある」と思ってしまうようなタイプの女性は気をつけなければなりません。
子供時代に親が暴力的だった人はこのような思考を持ってしまうことが多いのです。
バタードウーマン・シンドロームは一種の洗脳状態とも言えます。
共依存に陥りやすい認知を根本的に変えなければ何度も同じような不幸を繰り返してしまいます。