家庭に大きな問題があるわけではないのになぜか「家に帰りたくない」「家にいたくない」という感覚を持ってしまう人がいます。
このように感じてしまう原因は子供時代の環境(実家)にあるのかもしれません。
自分でも気づかないうちに「家」という場所に対するネガティブな条件づけがなされてしまっているのです。
このような誤った認識を変えるにはどうすれば良いのでしょうか?
なぜ家に帰りたくないのか?
結婚して家族と住んでいたり、恋人と同棲している人もいるでしょう。
時々、喧嘩をしたりイライラすることはあってもそれなりに幸せを感じているかもしれません。
それにも関わらず「家に帰りたくない」という気持ちが頻繁に芽生えてしまう人がいます。
さらには家の中にずっといることに耐えられないという人もいます。
じっとしているのが苦手なアクティブな性格だからというわけではなく、とにかく家にいると気分が滅入るのです。
中には一人暮らしなのにこういった感覚を持っている人もいます。
このように特別な問題があるわけではないのに家に帰りたくないという場合、あなたの子供時代に原因があるかもしれません。
育った家庭環境の影響によって「家」という場所に対する悪いイメージが刷り込まれているのです。
家に恐怖を感じてしまう心理学的な仕組み
親が虐待やネグレクトをするような機能不全家族で育つと、家に対して安心で楽しい場所という認識を持てないものです。
それどころか自分の体や心が傷つけられる恐ろしい場所というイメージを持ってしまいます。
自分自身で理解していなくても、潜在意識の中にそのようなイメージが刷り込まれていると訳も分からずに家という場所に対して苦手意識を持ってしまうのです。
家の中の苦手なシチュエーション
「家に帰りたくない」「家にいたくない」と思っている人の中には特に苦手なシチュエーションが存在することがあります。
例えば夕方に窓から夕日が差しこんでくるのを見ると落ち込むなどです。
これは自分を虐待する親が帰宅するのがそれくらいの時間だったからかもしれません。
「夕日が差し込む→親が帰宅して自分を攻撃する→傷つく」ということが繰り返されたせいで、夕日が差しこんだだけで恐怖を覚えるようになっているのです。
しかもあなた自身はその仕組みに気づいていないことがあります。
条件づけ:人形を見ただけで泣く子供
このような現象を心理学で「条件づけ」といいます。
子どもに人形を見せた後に耳障りな大きな音を聞かせたとします。すると子供は泣き出します。
これを繰り返しているとやがてその人形を見ただけで泣き出すようになります。それだけではなくその人形と似たものを見ただけでも泣き出すようになるのです。
人形が恐怖が起こることのシグナルとして機能するからです。
「家に帰りたくない」「家にいたくない」という人は家の中の何かが恐怖心を芽生えさせるシグナルになっているのです。
それは家族のうるさい足音だったり、ドアをバタンと強く閉める音だったり人によって様々です。
家そのものがシグナルとなっている可能性もあります。
参考文献:John B. Watson and Rosalie Rayner. (1920). CONDITIONED EMOTIONAL REACTIONS.
「家に帰りたくない」を克服する
ここまで説明したように、あなたが家に対して嫌なイメージを持ってしまっているのは条件づけの影響かもしれないのです。
ではどうすればその誤った学習を消去することができるのでしょうか?
何も起こらないことを認識する
まずは現在の家で恐ろしいことは何も起こらないということを認識しましょう。
子供時代には足音が近づいてくるとその後に攻撃されていたかもしれません。しかし今はそんなことはないのです。
「足音が近づいても何も起こらなかった」ということを意識すれば誤った刷り込みは軽減されます。
良いイメージと結びつける
何も起こらないことを意識しただけでは家に対する苦手意識が完全には払拭されないかもしれません。
その場合には新たな結果を刷り込むのです。
「足音が近づいたら大切な家族や好きな人が近づいてきた」ということを意識して確認するようにします。
他にも家の中にあるシグナルを良いイメージと結びつけることを意識的に行うのです。
それによって「家に帰りたくない」「家にいたくない」という感覚が低減することが期待できます。
子供時代になされた条件づけは強力に残っていることもあります。
なのでそれを消去するのは簡単ではないかもしれません。
しかし時間を掛けて少しずつ変えていくことは可能ですから諦めることはありません。
協力的でない同居人ばかり選んでない?
余談ですが…。
ドアの開け閉めや歩くがストレスになってしまている場合には、家族や同居人に伝えて配慮してもらうのも大切なことです。
しかし、家に苦手意識を持っている人の同居人というのは非協力的なタイプが多い気がします。
「静かにドアを閉めてほしい」とお願いすると、わざと大きな音を立てるのです。(個人的な感覚なので統計データはないですが)
機能不全家族で育つとダメな相手とばかり恋愛してしまうことがよくあるのですが、ここにもそういった傾向がでているのかもしれません。
健全な肯定感が育まれずに、自己評価が低いため心のどこかで「私はまともな人とは付き合えない、こういう相手がお似合い」と考えてしまっていないかも見直してみましょう。
ちなみに同居人の出す生活音へのイライラを我慢するということは自制心を使うということですが、朝から過剰に自制心を使うとものすごく脳に悪影響が出ることも分かっています。頭が悪くなるので気をつけましょう。