スマホの見過ぎをやめたいなら「自己分化」しなさい

心理学
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スマホを見過ぎてしまうのは今やおかしなことではありません。

あらゆる仕様が依存するように設計されているのですから、次から次へとスクロールとクリックを繰り返してしまうのです。

とはいえ、ほんの数分でもスマホをチェックしないと不安になったり、ストレスに感じるという人、誰かと会って話しているときでも見てしまうという人は危険な状態といえます。

そこから抜け出すためにどうすれば良いのか説明します。

スマホを見過ぎてしまう人が持つ心理

なぜスマホを見過ぎてしまうのでしょうか?

よく言われる理由の一つは「取り残されることへの不安」です。

自分の知らないところで友達が楽しいことをしているのではないか?新しい情報を共有しているのではないか?という不安が強いため、常にスマホをチェックしないと落ち着かないのです。

このような心理状態はFOMO(Fear Of Missing Out)と呼ばれ、世界中で観察されているものです。

また、何かが話題になったときに他の人たちはどう思っているのだろう?自分の価値観はズレていないだろうか?という不安がネット上の意見を見たくなる動機となることもあります。

さらにInstagramやXに投稿をした際にはインプレッション数やコメントなどが気になり過ぎることもあります。

これらの心理を強く持ち、スマホを見過ぎてしまう人に共通する特徴は、他人の影響を受けやす過ぎるということです。

他人とのつながりの中でしか自己を確立できない心理状態ともいえます。

自己分化の能力が低い人はスマホを見ずにいられない

脳内に生じる思考や人間関係に作用する要因の一つに「自己分化」というものがあります。

これはどれほど親密な相手からでも影響を受け過ぎないように、自分と他人を健全に分けて認識することです。

自分のアイデンティティを保ちながら相手と適切な関係を築く能力ともいえます。

具体的に例を挙げると以下のようなものがあります。

  • 自分の思考や欲求が親密な相手と異なっている場合でもそれを維持する
  • 他者の感情の影響を受け過ぎない
  • 恋人や家族など近しい関係の相手であっても自他の区別をつける
  • 他者からの承認を求め過ぎない

自己分化の能力が低い人は他人に影響され過ぎてしまいます。他人が何をするのか?何を言うのかが気になってしまうのです。

そのため、常にスマホで他人や社会の状況を確認せずにはいられないのです。

自己分化できない人はFOMOが強くファビングしてしまう

誰かと直接会って対面で話している途中でも、何度もスマホを見てしまう人がいます。

このような行為は「ファビング(Phubbing)」と呼ばれています。「Phone」と「Snubbing」を合わせた造語です。

ファビングは世界的に広まっており、約3~5割の人がしているとされています。

ファビングをされた側は軽んじられた気分になり、肯定感が下がることもあります。それにより友人でも恋人でも関係が悪化してしまうことが複数の研究で判明しています。

このファビングをするのはどのような人なのか調べた研究があります。

イスラエルのマックス・スターン・イェズリール・バレー大学の研究者らが行ったものです。

この研究では、431人の男女を対象に、自己分化、FOMO(取り残されることへの不安)、ファビングをする傾向について調査しました。

それらのデータを分析したところ、自己分化の能力が低い人ほどFOMOが強く、それがファビングにつながりやすいことが分かりました。

つまり、他人と自分の境界が曖昧な人は、スマホを見ずにはいられないということです。

スマホの見過ぎをやめるにはどうすれば良いのか?

ここまでの説明をまとめると、自己分化できない人は、他人を気にし過ぎるので、スマホを見過ぎてしまうということです。

なのでスマホの見過ぎを根本的に解決するためには、自己分化の能力を高めれば良いのです。

そのためには普段から自分と相手を客観的に見る習慣を身につけると良いです。

例えば恋人や友人が不機嫌そうにしているとき、それが伝染してあなたも気が滅入るかもしれません。

そんな時でも「これは誰の感情?自分?相手?」と第三者的な視点で評価するのです。

これを習慣化することで「自分は自分、他人は他人」と健全なレベルで認識できるようになります。自他の間に適度な心の境界が作られるのです。

こうなることで、他人や世間の反応がそれほど気にならなくなりますから、スマホの見過ぎも抑えることができます。

自己分化は人格形成や恋愛においても重要な要素となります。

特に恋人に依存し過ぎてしまう人は、自己分化の能力を高めることで、そこから抜け出すきっかけとなります。

相手の立場で考えることは必要ですが、相手の心と一体化する必要はありませんから、沼にハマらないよう気をつけましょう。

参考文献:Peleg, O., Boniel-Nissim, M. Exploring the personality and relationship factors that mediate the connection between differentiation of self and phubbing. Sci Rep 14, 6572 (2024).