ナポレオンコンプレックス!身長が低い男性ほど攻撃的な性格は本当か?

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身長の高い男性よりも低い男性の方が攻撃的な性格をしていると言われることがあります。

進化心理学的な考え方としては体が大きいと食料を獲得しやすいため「いつでも食べられる」という余裕があるのに対し、体が小さいと食料を得る機会を失わないようにしなければならないために攻撃的になると言われます。

本当のところはどうなのでしょうか?

ナポレオンコンプレックスとは

身長が低いことによる劣等感からステータスについてのをついたり攻撃的な態度を取ることを「ナポレオンコンプレックス」といいます。

フランス皇帝だったナポレオン・ボナパルトが活躍できたのは身長の低さというコンプレックスをバネにしたからだという流説が元となっています。

ナポレオンの身長については諸説ありますが168㎝~169㎝くらいだったと言われています。

日本ではそれほど小さいとは思われませんがフランスの軍人としては小さい方だったようです。

ナポレオンコンプレックスは別名「スモールマンシンドローム」とも呼ばれています。

身長の低い審判ほどレッドカードを出しやすい?

ナポレオンコンプレックスを持つ男性は懲罰的な性格をしているともいわれます。

それを調べたイングランドのノーザンブリア大学のデーン・マキャリックたちの調査があります。

調査対象とされたのはサッカーの審判です。

身長の低い審判ほどナポレオンコンプレックスによって懲罰的なのでレッドカードやイエローカードを出す頻度が高いのではないか?ということを調べました。

調査方法:プレミアリーグを含む61人の審判の裁定をワイスカウト(Wyscout)から抽出

対象となったのはイングランド国内の以下4つのディヴィジョンで審判をしている61人の男性です。

  • プレミアリーグ
  • EFLチャンピオンシップ
  • EFLリーグ1
  • EFLリーグ2

正確な表現ではありませんが上から1部~4部となっていると思ってください。

審判の平均身長は176.95cmで年齢は26歳から53歳となっています。

彼らは調査対象となる2017-2018シーズンに平均で26.89試合を裁いています。

試合ごとのレッドカード・イエローカードの枚数は「ワイスカウト(Wyscout)」というサッカーの分析プラットフォームのデータを使用します。

選手のスカウティングなどでも使用されるものです。

結果:身長が低い審判ほどカードを出す

分析の結果ですがまずファウルを出した数については身長との相関はありませんでした。

身長の低い審判のほうがファウルを取りやすいということはなかったのです。

しかしイエローカードとレッドカードについては相関が認められました。

プレミアリーグを除いた3つのリーグで身長の低い審判のほうが多くのカードを出す傾向にありました。

EFLリーグ1と2ではこの差がより大きくなりました。

※プレミアリーグではイエローカードは身長の低い審判の方が多く出していましたが、レッドカードは身長の高い審判の方が多く出していました。

選手が無意識にナメている可能性も

今回の分析では審判の身長とカードの枚数に相関があるという結果になりました。

ただしサンプル数は61人で1シーズンの試合のみが対象となっています。ですから再現性は不明です。

その上でなぜ今回このような分析結果が出たのか心理学的に説明するとすればナポレオンコンプレックスの影響があるのかもしれません。

他の理由としては選手が背の低い審判のことを無意識にナメているため統制が取れ難くなっているという可能性も示唆されています。

また身長の低い審判のナメられないようにという態度が高圧的になり選手を余計にエキサイトさせるという負の相乗効果もあるかもしれません。

日本のJリーグで同じ調査をしたらどうなるのか興味深いところではあります。

身長の低い男性はそれを認識したとき攻撃的になる

身長の低い男性が攻撃的な性格をしているのかを調べた別の研究もあります。

オランダ・アムステルダム自由大学の実験です。

実験1:独裁者ゲーム

この実験で最初に行ったのは心理学の実験でよく用いられる「独裁者ゲーム」です。

具体的にどうやったのかというとまず42人の参加者をペアにします。互いに見知らぬ相手です。

まずは10秒間(お互いの身長を認識しやすい)向かい合いの状態で自己紹介をさせます。

その後で別々の部屋に通され18枚のコインを渡されます。

そして「ペアとなった相手に何枚渡したいですか?」と質問されます。

これは本人が自由に決めることができます。0枚でも良いですし、全て渡してもかまいません。

結果は身長が低いほど自分のために多くのコインを残す傾向にあるというものでした。

実験2:最後通牒ゲーム

次の実験では「最後通牒ゲーム」を行いました。これも心理学ではよく行われるものです。

手順はさきほどの独裁者ゲームと同じですが最後に違いがあります。

それは片方の人間が分け方の割合を決めた後にもう片方がその割合に納得しなければ2人ともコインを得ることができないというものです。

こちらの結果も身長の低い方がより多くのコインを残そうとする傾向がありました。

実験3:ホットソースアロケーション

最後の実験は独裁者ゲームにホットソースアロケーションを組み合わせたものです。

ホットソースアロケーションは日本では行われませんが海外の論文などでは時々見掛けます。

辛いソースを相手にどれだけ飲ませようとするかで直接的な攻撃性を測るためのものです。

こちらの実験では身長との相関は見られませんでした。

以上の実験から身長の低い人はそれを認識したときに利益の確保に走ることと、自分の権力が強いときほどその傾向が強まるということが分かります。

また直接的な攻撃よりも間接的な攻撃をする傾向も見て取ることができます。

気にしているかどうかの違い?

上記の実験ではナポレオンコンプレックスが肯定されていますが否定する実験もあります。

イギリスのセントラル・ランカシャー大学の実験ではゲームでわざと反則されたとき、身長の低い人のほうが感情的になりにくく反撃の可能性も低いという結果が出ています。

このように身長と性格の相関については「ある」という結果も「ない」という結果も存在します。

いくつかの論文を参照したところの個人的な見解ですが、攻撃性については身長が高いか低いかの影響ではなく、それを気にしているかどうかの影響なのではないかと思います。

2つ目に紹介した研究はオランダという平均身長の高さが広く認識された国で行われたということも考慮するべきなのかもしれません。

参考文献
・Dane McCarrick, et al. (2020). Referee height influences decision making in British football leagues.
・Jill E. P. Knapen,Nancy M. Blaker,Mark Van Vugt(2018)The Napoleon Complex: When Shorter Men Take Mor.