アダルトチルドレンは安全な人に対しても「怖い」という感情を持つことがあります。
なぜかというと脳がそのように反応してしまうからです。
それによって人間関係や仕事に自信が持てずに生きづらさにつながることもあります。
アダルトチルドレンは脳が過剰に反応する
私たちが恐怖を感じるのは脳の扁桃体という部位が反応するからです。
例えば夜道で見知らぬ人が自分に近づいてきたら「怖い」という感情が生じますが、これも扁桃体が反応するためです。
見知らぬ相手でも仕事で会う人やお店の店員さんに対しては怖いという感情を持つことは少ないでしょう。
これはそのような相手が自分を攻撃することはないと分かっているからです。
しかしアダルトチルドレンの場合は、安全な相手に対しても怖いと思ってしまうことがあります。中には人は皆怖いものと思い込んでいる人もいます。
なぜなら他人が攻撃してこないという安心感を持てないため、脳が過剰に反応するからです。
なぜ人が怖いのか?
アダルトチルドレンのように愛着の不安を持つ人が他人を怖いと思うのは脳が過剰に反応するからということは複数の実験で分かっています。
例えばマサチューセッツ総合病院のザーラ・ナシリアバナキたちが行った、顔の画像を近づけたり遠ざけたりしながら、MRIで脳の反応を見るという実験があります。
この実験でも愛着の不安を持つ人は顔の画像に対して脳が過剰に反応することが分かっています。
愛着の不安を持つ人でも自動車の画像を近づけたときにはこのような反応は見られませんでした。
人間の顔にのみ過剰な反応を示したということです。
子供時代の刷り込みが残っている
なぜ愛着の不安を持っていると人を怖いと思ってしまうのでしょうか?
それは子供時代に身近にいた人間が怖かったからです。
人間が生まれて初めて出会う他人は親です。なので親から暴力や暴言、ネグレクトをされると「人間は怖いもの」という情報が刷り込まれます。
アダルトチルドレンはその刷り込みが大人になっても残っているため、たとえ安全な人を見たときでも脳が「危機が来るぞ」と反応して恐怖を持ってしまうのです。
「人が怖い」「対人関係や仕事に自信がない」を変える
人が怖いと思っているアダルトチルドレンはずっとそのままなのでしょうか?
そんなことはありません。脳の反応は変えることができるのです。
認知を変えるためのトレーニングや、瞑想など様々な方法で人に対する怖さを克服している人はいます。
手っ取り早い方法としては、普段から優しい人とのやり取りを思い出す習慣を持つことをおすすめします。
「人との社会的関係は安全である」という期待を持っていると、感情を司る扁桃体を制御できます。
これはキングス・カレッジ・ロンドンのルーク・ノーマンらの実験でも分かっています。
事前に親密な愛着関係を楽しんでいる人の写真を見せられた人は、その後で怖い人の顔を見せられても扁桃体の活動が抑えられたのです。
つまり怖いという感情を抱きにくかったということです。
アダルトチルドレンは意識しないと悪いことばかり考えがちですが、日ごろから意識して良いことや、優しい人のことを考えるようにしましょう。
そうすることが「人が怖い」「対人関係や仕事に自信がない」という誤った信念を変える助けになります。
(参考文献)
・Zahra Nasiriavanaki, Tracy Barbour, Amy H. Farabaugh, et al. Anxious attachment is associated with heightened responsivity of a parietofrontal cortical network that monitors peri-personal space. NeuroImage: Clinical, Volume 30, 2021.
・Luke Norman, Natalia Lawrence, Andrew Iles, et al. Attachment-security priming attenuates amygdala activation to social and linguistic threat. Social Cognitive & Affective Neuroscience, October 2014