自己肯定感が低いと「こんな私と付き合ってくれるのはダメ男だけ」と無意識に考えるので本当にそういうタイプと付き合ってしまいます。見捨てられる不安を持たなくて済むからです。
さらに深刻になると人から好かれる価値はないと思っているので恋愛そのものができないという人もいます。拒絶を恐れていることもあります。
これらはアダルトチルドレンがまともな恋愛をできない理由としてよく言われることです。
その他の重大な理由としては親が持つ価値観の影響があります。親が優しくて誠実な人間に対して嫌悪感を持っていれば子供もそういった相手を避けるようになります。
そしてこれらは必ずしも言葉で伝えられている場合に限りません。
子供をアダルトチルドレンにしてしまうような親はきちんとした大人に対して偏屈な態度を取ることがあります。例えば役所やお店などでの振る舞いを見ていれば分かると思います。
そういった姿を見て育つと恋愛対象を選ぶときの基準がズレていきます。
「酒もギャンブルもやらないような面白みのない男と付き合うな」と言われていなくともアダルトチルドレンはそういったタイプとは恋愛をしません。
これは機能不全家族の中で非言語シグナルを受け取り続けていたために誠実な相手に対して恋愛感情を持ちにくくなっていることが原因なのです。
忘れてしまっているかもしれませんが幼児期は思っている以上に大人の態度に敏感なのです。
誰と恋愛したいかを決定するもの
大人が差別的な発言をしなくても態度にそれを出すと子供に偏見を植え付けるのではないか?ということを調べたワシントン大学の実験があります。
実験では4歳児と5歳児にビデオを見せました。
その中で出演者の1人が別々の2人(仮にAさんとBさんとします)に挨拶をしたりオモチャを渡すという行動を取ります。
話す内容やアクションは同じですが態度は変えます。Aさんには笑顔で優しく接し、Bさんには冷たく接します。
ビデオを見終わった後で子供たちにAさんとBさんのどちらと仲良くしたいか?といった内容の質問をします。
すると7割近くが「Aさん」と答えました。
このように子供というのは非言語的なシグナルからもその意味をキャッチすることが出来るということが分かります。
特にアダルトチルドレンは子供時代に家族の顔色を敏感に察知していたことが多いのでこの影響が大きいのかもしれません。
親が誠実な人に対して否定的な価値観を持っていたことでまともな相手と恋愛ができなくなっているのです。
同じカテゴリにいるだけでも影響を受ける
上記の実験には続きがあります。
否定的な態度を取られた人のマイナス影響はその友達にも及ぶか?ということも調べています。
同様のビデオを見せられた後で、AさんBさんの友達とされる人たちを紹介されます。
Aさんの友達はAさんと同じ色のシャツを、Bさんの友達はBさんと同じ色のシャツを着ています。
グループ化されたということです。
そして子供たちにさきほどと同じく質問をしました。
その結果Aさんの友達のほうが好まれることが分かりました。
つまり同じグループにいるというだけでもその影響を受けるということです。
親から「公務員や一流企業に勤めている人は金に汚い」といった価値観を受け取ると同じカテゴリに属する全員にその影響が及んでもおかしくはないのです。
すると恋愛をするときもこういった相手を避けてしまう可能性があります。
アダルトチルドレンの女性が「きちんとした職業に就いている男性が苦手」と言うことがありますがそれは自己肯定感の低さだけでなくこういった問題もあるのです。
また働かずにギャンブルや借金だらけの人に対して親が「自由で素晴らしい」といった態度を取っているとそういうタイプを選好してしまうこともあります。
アダルトチルドレンでない人の恋愛にも影響する
この実験は大人が差別的な考えを持っていたらそれを口に出さなくても子供に伝わり偏見を生み出すのではないか?ということを調べるためのものでした。
世の中から差別がなくならない理由の一つを発見する萌芽ともいえます。
ですからアダルトチルドレンの恋愛に当てはめるのは強引だったかもしれません。
しかし親の非言語シグナルが子供に何の影響も与えないということはあり得ません。
むしろこの実験ではアダルトチルドレンでなくとも親の思想が恋愛に無意識のうちに影響している可能性まで肯定しているともいえます。
親が否定的な態度を取った相手を子供も同様に嫌悪するのか?それともそういった相手と仲良くすることで自分まで同じような態度を取られることを恐れているのかは不明です。
しかしアダルトチルドレンがまともな恋愛をできないのは機能不全家族で身につけた価値観に因るところが大きいのは事実です。
アダルトチルドレンはまともな相手と恋愛をすると物足りなさを感じてしまうものです。
しかしそれは足りていないのではなく方向がズレているだけなのです。
そこに気づくことができれば良い恋愛を始められるのではないでしょうか?
参考文献:Allison L. Skinner, et al, (2016), “Catching” Social Bias: Exposure to Biased Nonverbal Signals Creates Social Biases in Preschool Children.