大人の愛着障害(アタッチメント障害)とは

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大人の愛着障害とは他者との人間関係をうまく結ぶことの出来ない状態を言います。
傷つきやすくストレスに弱いという特徴もあります。

また自分の子どもに対して可愛いと思えなかったり世話をしたいと思えない「ボンディング障害」につながることもあります。

主な原因として養育者(主に親)から適切な育てられ方をしなかったことが挙げられます。

医学的な診断がなされるものには「反応性愛着障害」や「脱抑制型対人交流障害」などが存在します。

しかし心理学やカウンセリングにおいて大人の愛着障害という場合にはより広義に解釈されます。

(※アタッチメント障害と呼ばれることもあります)

大人の愛着障害の特徴

大人の愛着障害は「不安型」や「回避型」などのスタイルに分類されることもありますがその特徴は人によってバラバラです。
いくつかの特徴について説明します。

他人に敏感で傷つきやすい

他人の言葉や表情に敏感に心が反応してしまいます。
そしてそれを大げさに捉えてしまうため傷つきやすくなります。
一度傷つくといつまでも引きずってしまいます。
他人の顔色を伺いすぎて自分の意見を主張できないこともあります。

自分に自信がなく存在価値を感じることができない

愛着障害の大人は自分に自信が持てないという人が多いです。
「自分には生きている価値がない」と言う人もいます。
仲良くしてくれる人に対しても「なぜ自分なんかと一緒にいてくれるのだろか?」「いつか裏切るのでは?」という疑念を持ってしまいます。

他者との距離感が適切ではない

他者との距離感はいくつかのタイプに別れます。
何年経っても他人行儀な関係が変化しない人もいれば、初対面の相手に対しても距離が近くなりすぎる人もいます。
両方の特徴を併せ持つ人の場合は何らかのきっかけによって特定の人とだけ急速に仲が深まることもあります。特に恋愛関係において見られることの多い現象です。
人付き合いを鬱陶しく感じて一人でいることを好みながらも誰かに好かれていたいという矛盾した感覚を持つ人もいます。

愛着障害の試し行動は大人になっても続く

大人の愛着障害の原因

大人の愛着障害の原因は遺伝よりも環境の影響を受けることが多いです。
特に親からどのように愛されて育ったかということが重要です。

愛着理論を確立した精神科医のジョン・ボウルビィによれば愛着とは「特定の者との間にできる情緒的な絆」のことです。
生物は危機的な状況になったときやそれを予測できる状況で恐怖を感じたときに特定の他者にぴったりとくっつくことで安心感を回復することができます。

最も身近な養育者との間にこの特別な絆が成立することでそれ以後に出会う相手とも適切な人間関係を育むことができます。

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生まれて数ヶ月から数年までの間が愛着形成の臨界期と言われます。
この時期に世話をされ愛情を注がれることにより自分の価値を知ると同時に他者への信頼感が芽生えます。
そしてその感覚がその後の何年にも渡り継続するため幼少期の愛情不足が大人になった後の人間関係や自分への評価に大きな影響を与えると考えられています。

大人の愛着障害を生む家庭環境というのは虐待や育児放棄、両親の不仲、離婚、死別といった分かりやすいものだけではありません。
一見普通に見える家庭にも原因は複数存在しています。

教育熱心過ぎる親に育てられることもその一例です。
上手くできたときには褒められるけれど失敗したときに厳しく怒られるという育てられ方をすると親の顔色ばかり伺うようになります。
そしてその心の癖が大人になっても抜けないため他人の顔色ばかり伺うようになるのです。
「怒らせていないかな?」「嫌われていないかな?」ということを必要以上に気にしてしまいます。

他にも子供の価値観や将来の夢にやたらと干渉してくる親も愛着障害の原因となりやすいです。

いかにも「機能不全家族」という分かりやすいものではなく外見上は一般的な家庭で育った人が愛着障害になっているケースは多いです。
親自身のトラウマや人格障害、思考の偏りが子供に悪影響を与えているのです。

そしてこういった普通っぽく見える家庭で育って愛着障害になると「自分が悪いから」という錯覚を大人になった後も持ち続ける傾向があります。
親に分かりやすい原因が見えないため自分を責めやすくなってしまうのです。

愛着障害は人間だけではなくサルやマウスなどでも親からの適切なケアを受けないときに発生することがあります。

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愛着障害の克服

生まれてから数年までが愛着形成の臨界期と説明をしましたがそれを過ぎたからといって克服できないということはありません。
現在は「敏感期」という考え方が主流です。
つまり影響を受けやすい時期が生まれてからの数年間ではあるがそれ以降も変化することは可能ということです。

大人になってから愛着障害を克服している人はたくさんいます。

克服の方法はタイプや程度の差によって異なりますが多くの人に共通する方法としてはつぎのようなものがあります。

安全基地と甘え直し

子供にとって安心できる場所となる養育者のことを「安全基地」と言います。
安全基地があるから子供は好奇心に任せて世界を探索するのです。
そこで怖い思いをしても戻る場所があるという安心感が挑戦する意欲を生み出します。

ひとり遊びをしている幼児が急に母親に抱きついてしばらくするとまた戻って遊びを開始することがあります。
これなどは何らかの恐怖や不安を感じたために安心感を回復しようとして安全基地に戻る行為と言えます。
そこで愛情を補給しているのです。

親をはじめとする養育者がこの役割を果たさなかったことが原因で愛着障害になるのです。
健全に形成されなかった愛着を作り直さなければなりません。

親が安全基地の役割を果たしてくれるパターンは少ないです。
しかし恋人や配偶者などが愛情を注いでくれることで克服できることもあります。
絶対に自分を見捨てないという安心感を与えてくれる相手に子供時代にできなかった甘えるという行為をやり直すのです。

ただし相手選びは慎重に行う必要があります。
愛着障害の人は他者の表面的な優しさに騙されやすい人が多いのです。

相手がいなくとも絵を描いたり文章を書いて自分を表現することで同じ役割を果たせることもあります。
偉大な芸術家の中には愛着障害のような特徴を持つ人も少なくありませんが彼らは表現することで自分を取り戻していたのかもしれません。

見捨てられ不安の原因と克服方法

認知の再構成

他者の表情を見たり、何かを言われたりしたときにどう感じるかは人によって異なります。

何も気にしない人もいればいつまでもクヨクヨと悩んでしまう人もいます。
愛着障害の人は後者のケースが多いです。

これらの違いを生み出すのが認知です。物事をどう捉えるかということです。

愛着障害の人が大袈裟に捉えたりネガティブに考え過ぎてしまうときはその過程にエラーが発生していることが多いです。
相手が怒っていないのにそう感じてしまったり、罪悪感を持たなくても良いところで持ってしまいます。

こういった偏りを点検してバランスの取れた思考を身につけるのが認知を再構成するということです。

適応した思考法を手に入れることでネガティブ思考や傷つきやすさを改善することができます。
自分の価値を正しく評価することにもつながります。

ただし過去の傷を無視して最初から認知を再構成しようとすると上手くいかないことがあります。
認知が全く変化しない場合はまだ心が反発しているということですから過去の傷を癒すという作業が必要です。

自分に合った方法を選ぶことが重要

愛着障害の克服方法はここで説明したことが全てではありません。他にも様々な手法が存在します。

カウンセリングによって克服することも可能です。
しかしその場合はカウンセラーとの相性が非常に重要です。
どのような心理療法を採用するにしても相性が悪いと余計に悪化してしまうこともあるからです。

自分に合った方法でじっくりと取り組むことが大切なのです。

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