朝起きた瞬間から、夜眠りにつくまで、ずっとスマホが手放せない…
依存してしまっていると分かっていても、隙間時間があればスマホを確認せずにはいられない…
こうなってしまう、原因は愛着スタイルと、対人依存にあるかもしれません。
スマホやSNSの使用に影響を与える心理的要因の分析
スマホやSNSの使用に影響を与える心理的要因を調べた、ミラノ・ビコッカ大学のエマヌエラ・グリッティ博士らの研究があります。
この研究では、18~77歳までの男女341人を対象に、愛着スタイルや対人依存の傾向などが、スマホ依存とどう関連しているのか分析しています。
愛着スタイルはこのサイトでもおなじみですが、以下の3タイプです。
- 安定型(安全型):自立と依存のバランスが取れていて、他者との信頼関係を築きやすい
- 回避型:親密さや依存を避け、他者との距離を保とうとする。感情を抑えることも多い
- 不安型:見捨てられることへの強い不安を抱き、過剰に親密さを求める。愛情の確認を頻繁に求める
対人依存とは、他人にどのように頼る傾向があるかというものです。主に以下の3つの項目を測定します。
- 破壊的な過剰依存:他人の助けや承認が過剰に必要で、自分の判断よりも他人の意見に頼りすぎる
- 機能不全的な離脱:他人に頼ることを避ける。誰かに助けを求めたり、感情を共有することが苦手
- 健全な依存:必要なときには他人に頼ることができ、かつ自立もできる、バランスの取れた依存スタイル
この他にも、性格傾向や自尊感情などを測定しています。
それらを分析した結果、スマホやSNSの使い方には、個人の性格や人との関係のパターンが深く関わっていることが明らかになりました。具体的には以下の通りです。
不安型はスマホに依存しやすい
まず、恋人との関係に不安を抱きやすい人、つまり「不安型愛着スタイル」を持つ人は、スマホに依存しやすいことがわかりました。スマホが手元にないと不安を感じやすいのです。
これらの人は、SNSの使用頻度も高く、他人とつながっていないと心配になったり、いつまでも返信を待ち続けたりする傾向があります。
特に、誰かと付き合っているときに、この傾向が顕著に見られました。これは、スマホを通じて恋人と常につながっていたい、安心感を得たいという心理が働いているためと考えられます。スマホが、恋人との絆を維持するための安全基地のような役割を果たしているのです。
破壊的な過剰依存の傾向が強い人も依存する
次に、人に過度に頼りがちな人、つまり「破壊的な過剰依存」の傾向が強い人も、スマホに強い愛着を感じていました。
このタイプの人にとって、スマホは自分の不安や孤独を和らげてくれる存在であり、心理的な「避難所」のような役割を果たしているのです。
また、SNSの使用も活発で、誰かにかまってもらったり、メッセージを送ったり、反応をもらうことで安心感を得ようとする傾向があります。
つまり、スマホを通じて、誰かに支えてもらうことを求めているのです。
回避型はスマホの通知を鬱陶しいと感じる
一方で、他人に頼ることを避ける傾向がある人(機能不全的な離脱)、またはバランスよく人に頼れる人(健全な依存)は、スマホに対してあまりポジティブな感情を持っていませんでした。
彼らはスマホを「負担」や「わずらわしいもの」と認識しやすいという特徴を持っていました。通知を鬱陶しいと感じ、スマホから離れることに解放感を覚えるようです。
SNSの利用も比較的少なく、「つながりすぎること」に対して慎重だったり、そもそも必要性を感じていないことが多いです。
「でも、私の彼氏は回避型ですけど、常にスマホを見てますよ」という人もいるでしょう。これに関しては、目の前にいるあなたとの距離を置くためのバリアとしてスマホを使用している可能性があります。
また直接的なやり取りよりも、SNS上のつながりの方が気楽なため、「誰かとつながりたいけれど近づき過ぎると逃げたくなる」タイプの回避型は、SNSに依存することがあります。
自尊感情が高い人がSNSを使う理由
自尊感情(=自分に対する価値や自信)が高い独身の人も、SNSの使用が多いという傾向も見られました。
不安型の人は自尊感情が低い人が多いですから、先述の結果と矛盾するように思えるかもしれません。
しかし、不安型の人と自尊感情の高い人では、SNSの使用目的が異なります。
不安型の人が寂しさを埋めようとSNSを使うのに対し、自尊感情の高い人は、自己表現をしたり、自分の魅力や考えを発信し、ポジティブなフィードバック(「いいね」やコメント)を得るためにSNSを使うのです。
つまり、SNSが「自分をよりよく見せるためのツール」として活用されているということです。そして独身の人ほど自分をアピールしたいという欲求は強いですから、こうした傾向が見られやすくなるのです。
スマホ依存から抜けだすためには自分に問いかける
スマホ依存から抜け出すににはどうすれば良いのでしょうか?
まずはじめの一歩は、スマホを手に取るたびに、「私は今、何を得ようとしているのだろう?」と自分に問いかけてみることです。
この問いを意識的に繰り返すことで、無意識のうちにスマホを操作する癖にブレーキをかけ、自分の内面にある本当のニーズに気づくことができます。
たとえば、スマホを開いた瞬間にSNSをチェックしたくなるとき、それは「誰かとつながっていたい」「誰かの反応を通じて安心したい」という思いからかもしれません。
あるいは、何となくYouTubeやTikTokを眺めてしまう場合、それは「退屈から逃れたい」「今の感情から気をそらしたい」といった目的が潜んでいることもあります。
また、自分に自信が持てないときや落ち込んでいるときに、SNSで「いいね」やコメントを求めるような行動をとってしまうのは、自己肯定感を回復させる手段としてスマホを使っている可能性があります。
このような「承認欲求」のサインに気づくことができれば、自分が本当に必要としているのは「画面越しの反応」ではなく、「自分自身を受け入れる感覚」なのかもしれないと、少しずつ理解が深まっていきます。
こうした自分の動機や感情に気づけるようになると、スマホを使う前に「本当に今、これが必要なのか?」と立ち止まって考える習慣が身につきます。
結果として、ただの惰性や不安からの逃避としての使用を減らすことができるようになります。
「気づくこと」は、スマホ依存を断ち切るためのもっともやさしく、しかしとても効果的な方法のひとつです。
参考文献:Gritti ES, Bornstein RF, Barbot B. (2023). The smartphone as a “significant other”: interpersonal dependency and attachment in maladaptive smartphone and social networks use.