HSPは遺伝か?家庭環境か?(双子の研究)

HSPは遺伝性のものでしょうか?それとも生まれ育った家庭環境によるものでしょうか?

おそらく両方が関係しています。

同じ遺伝子を持つ一卵性双生児であっても感受性は異なるものですが、2020年の研究では感受性の強さの約50%は遺伝によるものという結果が出ています。

HSPの遺伝的な影響

ロンドン大学クイーン・メアリー校の研究者が思春期の2,868組の双子を対象に環境感受性(Environmental Sensitivity)と遺伝の関係について調べました。

環境感受性とは周囲の環境の情報を知覚・処理する際の特性のことです。この環境感受性が高い人がHSPです。

双子の環境感受性と遺伝の関係

この研究では環境感受性の測定にHSPの提唱者として知られるエレイン・アーロン博士たちが作成したHSC(Highly Sensitive Child)尺度を用いました。

HSC尺度は児童期や思春期の子供の感受性を測定できる12項目からなる質問票です。

質問内容には「小さな環境の変化に気づく」「監視されているとパフォーマンスが落ちる」「暴力的なテレビは見ない」などが含まれています。

これらの質問にどれくらい当てはまるかを7段階で回答します。

47%が遺伝、53%が環境による

そして一卵性双生児と二卵性双生児の相関の度合いを比べることにより遺伝の影響がどの程度あるのかを分析しました。

その結果、環境感受性は47%が遺伝による影響を受け、53%が環境による影響を受けるというデータが出ました。

またこの研究では性格傾向のテスト(簡易版BIG5)も行っていますが、それによると感受性の高さと神経症傾向、内向性には中程度の相関があるという結果が出ています。

※今回の研究は思春期の子供(平均年齢17歳)を対象にしています。そのため思春期特有の恥ずかしさなどが感受性を測定するための質問の回答に影響した可能性があります。そのため今後、大人を対象とした調査を行うと異なる数値が出る可能性もあります。

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遺伝とエピジェネティクス

上記の研究では感受性の半分は環境の影響を受けることが分かりました。

実は環境というのは遺伝の影響による部分にも変化をもたらす可能性があります。

遺伝子情報が細胞の機能に変換されることを「発現」といいます。分かりやすくいうと遺伝子のスイッチが入るということです。

一卵性双生児が同じ遺伝子を持っていてもスイッチが入らなければ異なる特徴を持つことになるのです。

このスイッチを制御するシステムをエピジェネティクスといいます。エピジェネティクスは食事や大気汚染などによって変化します。

つまりあなたが生まれつきのHSPだったとしても環境から受けている影響はかなり大きいということです。

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家庭環境がHSPに与える影響

HSPの敏感さは遺伝と環境の両方が影響することが分かったと思います。

では環境とは具体的にどのようなものを指すのでしょうか?

代表的なものとしては育った家庭環境が挙げられます。別の言い方をするなら親からどのような子育てを受けたかということです。

親から質の良い子育てを受けたHSPは良い出来事には強く反応し、悪い出来事にはうまく適応できるようになるのです。

HSPの感受性と環境の関係

HSPの脳の反応と家庭環境

HSPの敏感さに家庭環境が影響することはカリフォルニア大学とニューヨーク州立大学が行った脳の反応を観察する実験からも明らかになっています。

この実験では大学生にHSPスケールに回答してもらい、その中の上位4分の1と下位4分の1を被験者としました。それぞれ7名ずつの合計14名です。年齢は18歳から25歳までで全員が女性です。

またQCP(Quality of childhood parenting)という幼少期の子育ての質を測定するアンケートにも回答してもらっています。

実験の中で被験者にはポジティブな画像、ネガティブな画像、どちらでもない画像が提示されそのときの脳の反応をMRIでスキャンしました。

HSPの脳の反応を観察する実験

そして脳の反応を観察したところまずHSPの脳はポジティブな画像にもネガティブな画像にも反応しやすいことが分かりました。

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質の高い子育てを受けたHSPはポジティブにもネガティブにも適応

さらにQCPが高い(質の良い子育てを受けた)HSPはポジティブな画像を見たときに報酬や自己と他者の概念の処理に関与する領域がより強く活性化することも分かりました。

ネガティブな画像を見たときには認知や自己調整に関与する領域が活性化されることまで分かりました。これはネガティブな刺激に対して適応的な反応ができるということです。

質の高い子育てを受けたHSPの脳

実験の結果をまとめると子供時代に親から質の良い子育てを受けたHSPはポジティブな刺激に対してプラスの反応が強まり、ネガティブな刺激に対しては適応力や回復力が高まるということです。

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外部からの刺激に対する脳の反応を変える方法

だからといって親との関係が悪かったHSPに対処法がないということではありません。

外部からの刺激に対する反応は一生変化しないものではないのです。

認知行動療法やヨガ、瞑想など脳の反応を変えていく方法は複数あります。

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参考文献
・Genetic architecture of Environmental Sensitivity reflects multiple heritable components: a twin study with adolescents.
・Sensory processing sensitivity and childhood quality’s effects on neural responses to emotional stimuli.