HSPの集中力を持続させるたった1つの意識

仕事でも勉強でも集中力が続かないというのはHSPに限らず多くの人が抱える悩みです。
少し作業をしては休憩や他のことをしたくなります。

集中力を高めるためにトレーニングをしたり環境を変えるために図書館などに行く人もいるでしょう。

しかし最も簡単な集中力の維持の仕方は「集中力は変化しない」という意識を持つことです。

自我消耗(Ego Depletion)は本当に起こるのか?

人間は意志の力を使うことで精神的なリソースが減り集中力も失われると多くの人が考えています。

このように精神的リソースは有限なので減っていくという考えを「自我消耗(Ego Depletion)」と言います。
自我消耗が本当に発生するかどうかについては賛否ありますがそれを証明しようとした実験があります。

ケース・ウェスタン・リザーブ大学の心理学者ロイ・バウマイスターたちが行ったものです。

実験の参加者たちは皿が置かれた部屋で待つように言われます。
皿には美味しそうなチョコチップクッキーと大根がそれぞれ盛られています。

2つのグループに分けられた参加者のうち一方はクッキーのみ食べることができます。
もう一方は大根のみ食べることができます。

ここで大根を食べた方はクッキーを我慢するために自我消耗が起こっていると仮定できます。

その後に両方のグループはパズルを解くように指示されます。
実はこのパズルは解くことが出来ないように設計されていますからどこかで諦める必要があります。

それぞれのグループがパズルに取り組んだ時間を計測しました。
その結果、クッキーを食べたグループが作業を続けた時間の平均は大根を食べたグループの2倍以上でした。

大根を食べたグループはクッキーを我慢するときに自我消耗が起こったために集中力が続かなかったということです。

クッキーの糖分が脳に良い影響を与えたからではないか?という疑念が生じるかもしれません。

しかしこの実験には何も食べずにパズルにだけ参加したグループもいます。
その人たちの継続時間はクッキーを食べたグループとほぼ一緒だったのです。

クッキーを我慢して大根を食べたグループのみが集中力の低下を示したということです。

集中力はコントロールできる

上記の実験によって本当に意志による集中力は有限であると結論づけることができるのでしょうか?

集中力はトレーニングなどしなくても自分でコントロールできるということを示唆する実験もあります。

スタンフォード大学の学生を対象に集中力に対する認識と行動の関係を調べたものです。

実験では集中力は限られた資源であると教えられた学生と、コントロールできるものであると教えられた学生を分析しました。

彼らに集中力を測るテストを行ったところ集中力はコントロールできると教えられた学生のほうが高いスコアを記録しました。

また試験前にどのような行動を取るか調べたところ集中力が有限であると信じている学生はそうでない学生に比べてより多くのジャンクフードを食べました。また課題を先延ばしにする傾向もありました。

これは誘惑に打ち克つ力が弱まっていることを示します。

モードが切り替わっているだけ

神経科学の専門家であるオタワ大学のクロード・メシエ教授の話では取り組む課題の難易度は脳が消費する総カロリーに影響を与えないそうです。
つまり難しい問題を解いていても簡単な問題を解いていても消費カロリーは同じということです。

しかし私たちは仕事や勉強で難易度の高い課題に取り組むと脳が疲れて集中力が続かないような気になります。

これはずっと同じ姿勢でいたり目を酷使することによって生じた疲労を勘違いしているだけという可能性があります。

休憩したり甘いものを取ることによって集中力が戻った気がするのは体が回復するからです。

「長時間がんばっているから集中力が続かない」という思考が集中力を落としているのです。
飽きや他のことに注意が向いてしまっているだけの場合もあります。

つまり集中力がなくなっているのではなく、思い込みによって集中できないモードに切り替わっているのです。

自分の脳を信じる

HSPの人はそうでない人と比べて集中力が持続しにくい場合もあるかもしれません。
騒音などの外部からの刺激によって邪魔をされると急激に集中力が低下することもあるでしょう。

それでも「集中力は変化しない」という意識を持つことによって普段よりも集中できる時間を延ばせるはずです。まずは自分の脳を信じることから始めてみましょう。

実は最初に紹介したクッキーの実験は別の研究者が同様の手順で行ったときには再現されなかったのです。

ちなみに本当に脳が疲労しているときには科学的に回復させる方法もいくつかあります。

参考にした論文
Baumeister RF, et al. (1998). Ego depletion: is the active self a limited resource?
Veronika Job, et al. (2010). Ego Depletion—Is It All in Your Head?: Implicit Theories About Willpower Affect Self-Regulation.