男女雇用機会均等法が施行されて40年近く経ちますがいまだに就職差別をしている会社は存在します。
新入社員の男女比が同じだからといって差別がないとは限りません。
人数は同じでも採用基準が違っている可能性があるのです。男性は能力で選ぶけれど女性は顔や愛嬌で選ぶかもしれないということです。
このような会社に女性が入ってしまうとやりがいのある仕事を振ってもらえなかったり実力で評価されないというリスクがあります。
女性差別をしている会社でもそれを表立って公表していることはないため見分けるのが難しいものです。
しかし女性差別する会社の文化というのは何気ないところに出るものです。今回はその見分け方についての面白い研究を紹介します。
ブスや政治経済に興味のある女性は採用しないと文書化していた会社もあった
就職差別とは性別や外見、家柄、出身地などの本人の能力と関係のない理由によって不採用とすることです。
中には違法とならないものもありますがそのような採用条件でリクルートしていることが世間にバレれば大問題となります。
信じられない話かもしれませんが20世紀にはこういった採用条件を文書化していた会社もあったのです。
そこには「ブス、バカ、家庭環境に問題がある、政治経済に興味を持っている、弁が立つといった特徴がある女性を採用してはいけない」と明確に書いてありました。
中にはその文書が流出して国会で取り上げられた会社もありました。
これらの会社は育ちが良くてバカ過ぎず優秀過ぎることもない可愛くて扱いやすい性格の女性が欲しいということです。
仕事の能力はどうでも良いので愛嬌のある女性を採用したいと思っているのです。
残念なことに今でも明文化していないだけでこのような採用基準を持っている会社は存在します。
就職差別する会社の見分け方
男女で採用基準や入社後の評価方法を差別している会社を見分けるにはどうすれば良いでしょうか?
それはその企業が使っている単語の種類を見ることです。
採用担当者と直接話す機会がなくとも採用サイトに掲載されている文章などから判断することが可能です。
この方法は男女差別の有無だけではなくその企業が求めている人物像を知ることにも役立ちます。
言葉には思考が表れてしまう
同じ日本語を使っている人でも頻繁に使う言葉というのは異なるものです。
親に掛けられた言葉、読んできた本、所属するコミュニティなどによって変化するからです。
また言葉にはその人の思考も表れます。
本人は隠しているつもりでも客観的なデータとして出てしまうのです。
ネガティブなワードが多ければ物事を悲観的に捉える傾向がある人と判断できます。
「走ってくれた」という監督の評価基準
もう少し具体的な例を考えてみましょう。
例えばサッカーの監督が選手を誉めるときに「試合中によく走ってくれた」というフレーズを頻繁に使うとします。
この場合、この監督はポジション取りの上手い選手よりもたくさん走る選手を高く評価する傾向があるということです。
これと同様のことが企業の採用活動においても起こることが研究で分かっています。
採用において女性は業務遂行能力だけでなく親しみやすさも求められる
イタリアのボローニャ大学が採用における評価基準が男女で異なるのではないか?ということを調べた研究があります。
男性は実力のみ求められるのに対し、女性はそれ以外にもモラルや親しみやすさも求められているのではないか?という差別を調べたものです。
内定率に男女差別はない
研究ではイタリア国内の銀行の信用管理を担当するカスタマーサービスチームのポジションに応募した求職者のデータが使われています。
この採用活動においては履歴書、仕事への適応、認知テスト、関係能力に関するグループテスト、面接が行われています。
68人(女性39人)の応募者のうち31人(女性18人)が内定を得ました。
内定率は女性46.1%で男性44.8%ですからそこだけ見れば男女差別はないといえます。
評価レポートに記載された単語をカテゴリに分ける
しかしこの研究で知りたかったのは評価基準での男女差別です。
そこで採用担当者が求職者に対して下した評価のレポートの内容を調べました。
具体的にはその文章中に出てくる単語がどんな属性を表す種類のものか分類してカウントしたのです。
レポートに記載された単語は能力、親しみやすさ、道徳性という3つのカテゴリに分けられました。
女性はより多角的に評価される
結果は男女で大きな差が見られました。
男性は能力に関して評価した記述が最も多く、親しみやすさはその4分の1未満、道徳性については10分の1未満でした。
女性の場合も能力に関する評価が最も多かったことは同じです。
しかし親しみやすさについても能力と同じくらい評価対象とされていました。男性と比べて3倍近くも重視されていたのです。
道徳性については能力と比較して3分の1未満でした。それでも男性の2倍以上は重視されていました。
これらのことから女性は仕事の能力だけではなく、親しみやすさや道徳性も採用時の評価基準となりやすいということがいえます。
就職サイトや採用ページにヒントが隠されている
応募しようとしている会社が採用において男女差別をしているのかどうかを具体的に調べるには就職サイトや企業の採用ページが参考になります。
そこに若手社員の紹介などで上司からの評価が載っていることがあります。
それがなくとも男性社員と女性社員が仕事について言及した言葉を見れば業務の任され方(社内での男女の評価の差)が分かるものです。
「男は仕事、女は家庭」という価値観の会社
例えば企業サイトの採用ページで男性は仕事の実績について言及されることが多いのに、女性は人柄についての言及が多ければその会社は男女で評価基準が違うということが分かります。
また男性は仕事で成長したエピソードが紹介されているのに、女性は出産や育児との両立が紹介されているパターンが目立つ会社も同様です。
紹介している人事部としては働きやすい素晴らしい会社というアピールのつもりでしょうが、無意識レベルで「男は仕事、女は家庭」という企業文化が存在している可能性があります。
このような会社は採用時だけではなく入社後の業務評価や昇進においても能力や実績意外の部分で女性を判断する可能性があります。
採用で男女差別する会社はセクハラのリスクもある
採用で男女差別をする会社にはセクハラが起こるリスクも存在します。しかも本人達がセクハラをしているという認識さえないこともあります。
どんなに建前を取り繕っても言葉を客観的に分析すればその企業の本音や共有された空気が表れているものです。
インタビュー記事に出てくる単語をカテゴリ分けして頻出度を調べることで採用時の男女差別について知るだけではなく、その企業がどのような人物を求めているのかを知ることもできます。
就職活動や転職活動をしている人はぜひこれらのデータを活用して優良企業を目指してください。
参考文献:Silvia Moscatelli, et al. (2020).Men Should Be Competent, Women Should Have it All: Multiple Criteria in the Evaluation of Female Job Candidates.