他者と親密な関係になることを避けるのが、回避型の愛着スタイルを持つ人です。
たとえ、恋人に対してであっても、心の内を見せたがりませんし、距離が近づいたら逃げてしまうのです。
ということは、回避型同士のカップルというのは、関係を維持できなくなりそうですね。二人とも遠ざかろうとするわけですから。
そもそも、恋愛関係にさえ発展しない組み合わせに見せるかもしれません。
しかし、回避型同士でも、長く付き合っていることはありますし、順調そうに見えるケースもあります。
その理由は、回避型の男性と女性では特徴が異なるからです。
回避型の女性の中には、苦痛を抱きながらも、回避傾向を理性でコントロールしながら恋愛できるタイプがいるのです。これは心理学の研究でも分かっていることです。
この特徴により、回避型同士でも関係を保つことができるのです。
回避型の女性は何を相談にくるのか?
当カウンセリングルームに相談に来る人で、最も多いのは、不安型の愛着スタイルを持つ女性です。
そして、悩みの内容は、回避型(or回避依存症)の彼氏と、どう付き合っていけば良いのか?ということです。
又は不安型特有の恋愛依存症から抜け出す方法の相談と、そのトレーニングです。
恋愛のことに限らず、愛着や機能不全家族の問題で相談に来るのは、不安型の人の方が多いです。
回避型の人は、カウンセラーに感情を打ち明けるのさえ嫌だ、というタイプも多く、相談に行こうとは思いにくいのです。
しかし、回避型の人が全く来ないかといったら、そんなこともありません。
回避型の女性が「彼氏も回避型みたいで、どうしましょう…」と相談に来ることもよくあります。
自分で不安型だと思っていたら、実は回避型だったということもあります。
もちろん、相談に来る回避型の女性も、パートナーとの距離が近づくことを恐れていますし、関係に縛られることには息苦しさを感じています。
それでも、関係を維持しなければと思っているのです。なのでトラブルが起これば対処しますし、その一環として相談に来るのです。
⇒回避型の彼氏に疲れたら「自律性」を意識してサポートを減らせ
回避型の女性は愛情表現をする
回避型だからといって、恋愛感情や性欲が生じないわけではありません。他者と親密になるのを恐れるのと、誰かに強く惹かれるのは、別の脳の働きだからです。
お腹が空いたり、眠くなるのと同じで、人間の原始的な欲求なのです。
そして、回避型の女性の中には、そうした感情を表現できる人もいます。むしろ、女性の場合にはこちらのタイプの方が多いです。
普段の関係性においても、「好き」「愛している」という愛情表現もします。
グラナダ大学の研究チームが、約700人の男女を対象に、愛着と恋愛傾向の関係を調べた研究があります。愛着スタイルや、気持ちを表現することへの抵抗感、実際に表現する頻度を調べたものです。
この研究結果によると、回避型の中でも、特に他者との距離を置く、拒絶タイプの男性は、感情表現が苦手で、「愛している」「好きだよ」などの言葉を言うことに抵抗感があることが分かりました。
それに対して、同じ回避型の拒絶タイプでも、女性の場合は、愛情表現を完全に抑え込むわけではないことが分かっています。必要な時には愛情を伝えるのです。
回避型の女性は「感情」と「理性」を分けながら恋愛をしている
なぜ、回避型の女性は、愛情表現をすることができるのでしょうか?
それは、恋人同士は愛情を伝え合うもの、という社会規範に冷静に合わせることができるからです。
恋人同士なのだから、そういったことはしておくべき、と理性的に判断して、行っているのです。
これは、カウンセリングをしていても、感じることです。
「ベッタリするのは嫌だけど、付き合ってるわけだから、愛情を伝えないとダメだと思うし、そうしないと関係が終わってしまうかもしれないから…」といった内容のことを言う人が多いです。
つまり、回避型の女性は、自分の心の中にある「近づくのは危険」という感覚を客観的に観察しながら、理性の部分で恋愛行動をしているということです。
感情と理性を分けながら恋愛をしている、といえば分かりやすいかもしれません。
そのおかげで、回避型同士であっても、関係が継続できるのです。しかも、このような女性の態度は、回避型の男性にとっては心地良かったりしますから、一見するとうまくいっているようにも見えるのです。
回避型同士の恋愛を続けるとどうなるのか
愛情を伝えたり、問題が起こったとき修復しようとする回避型の女性は、「自分だけが特殊なタイプ」と思っているかもしれません。
実際に「同じような相談に来る回避型の女性もいますよ」、と伝えると驚くことも多いです。
これは、多くの本やネットの記事が、回避型について説明するときに、男性を念頭に置いているため、そういった情報しか得られないことが原因です。
当サイトも、回避型は男性を、不安型は女性を、想定して書いています。なので他の記事を読んでいる人の中には矛盾を感じた人もいたかもしれません。
もちろん、回避傾向の強さによって、恋愛における態度は異なります。全く愛情表現をしない女性もいますし、少しでも問題が起こったと感じたらフェイドアウトする女性もいます。
しかし、弱~中程度の回避型の女性の場合は、関係維持のための努力をするのは、決して珍しいことではないのです。そして一見するとその恋愛関係はうまくいっているように見えるのです。
とはいえ、自分の心の中にある大きな不安に強引にフタをして、恋愛しているわけですから、その精神的負担は大きなものです。気づかないうちに消耗していることも多いです。
特に回避型の彼氏が急にいなくなったりすると、頭では「自分も回避型だし理解できる」と考えていても、心の深い部分では「やっぱり人は裏切る」という感覚が強化されてしまいます。
そういったことを繰り返すうちに、理性による行動さえできなくなり、恋愛そのものが嫌になってしまうこともあります。
一見すると、自分でコントロールできているように見えても、知らずに自分を傷つけているということもあるのです。
もし、あなたがこのパターンで恋愛をしているのなら、無理をしないでください。もう一度、自分の心の底の声を聞いてみましょう。
恋愛を休んで、自分の愛着スタイルを安定したものへと変えることが先決かもしれません。
参考文献: Monteoliva A, García-Martínez JM, et al. (2012). Differences between men and women with a dismissing attachment style regarding their attitudes and behaviour in romantic relationships.