大人の愛着障害が仕事に悪影響を及ぼすことがあります。
決して能力が低いわけではないのに結果が出なかったりミスを頻発してしまったりするのです。
こういったことは緊張感のある職場や怒りっぽい上司の下で発生しやすいといえます。
仕事に向けるべきリソースまで感情の制御に使ってしまう
乳幼児期に愛着がしっかりと形成された人は感情を安定させる能力も発達します。
そのため大人になった後も自分を上手にコントロールすることができます。
仕事で怒られたときも全てを否定されたとは考えません。
人格を否定されたのではなく仕事の方法がまずかったのだと判断できます。
そして気持ちを切り替えて次の仕事に取り組むことができます。
つまり大きく落ち込まないだけではなく、回復する能力も高いということです。
しかし愛着障害を持つ人が怒られたときはこのように上手く対処できません。
全てを否定されたような気になり大きなショックを受けます。
そしてそこから回復するために感情のリソースを使ってしまいます。
それにより仕事に向けるべき認知までもが消耗してしまい本来のパフォーマンスが発揮されないのです。
つまり愛着障害の人は大袈裟に受け止めて落ち込み過ぎるだけでなく、気持ちを切り替えるのも苦手ということです。
そのため同じ能力を持っていたとしても結果に差が出てしまうのです。
大人の愛着障害はネガティブな感情のときミスしやすい
愛着障害を持つ大人がネガティブな感情を抱くときに仕事でミスをしやすくなるということを示唆する実験があります。
フリードリヒ・アレクサンダー大学の研究者たちが行ったものです。
実験の内容は「M」と「W」の文字がランダムに表示される中から「W」が表示されたときに出来るだけ早くボタンを押すというものです。
その間に感情に刺激を与えるような写真も表示されます。
この実験で分かったことは愛着障害を抱える人は感情をネガティブにするような写真が表示されるとパフォーマンスが落ちるということです。
先ほど説明したように感情をニュートラルに戻すために余計なリソースを使ってしまうことが原因として考えられます。
ネガティブな感情を持たないときは他の人とパフォーマンスの差はないのです。
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仕事のミスを減らすテクニック
大人の愛着障害が仕事の能力そのものを低下させているわけではないということが理解いただけたでしょうか。
周囲の環境や自分の認知リソースの使い方の問題によって能力が発揮できていないだけなのです。
この状態から抜け出すためには時間を掛けて捉え方を変えていく必要があります。
一時的なテクニックとしては「緊張はパフォーマンスを高める効果もある」ということを思い出すことです。
聴衆の前でスピーチをさせる実験でも何も言われなかった参加者よりも「緊張は誰でもするししたほうが力を発揮できる」と言われた参加者のほうが上手く話せたという結果があります。
これは自己評価においても聴衆からの評価においても同様です。
同じ能力を持った人でもどこの部署に配属されるかやどんな上司の下に就くかによって実績に大きな差が出るものなのです。
愛着障害だからといって仕事が出来ないなどと思う必要はありません。
力の出し方が上手くないだけなのです。
参考文献:Rainer Leyh, et al. (2016). Attachment Representation Moderates the Influence of Emotional Context on Information Processing.