落ち込みやすい人の中にはHSPのことを知って自分もそうなんだと安心する人がいます。
しかしHSPのカウンセリングをしていると自分ではHSPだと思っているけれど実は別の原因があるというケースもあります。
HSPの関連書籍やチェックリストの内容は落ち込んでいるときに読むと全て自分に当てはまっているような気になることが多いです。
これは読み手が悪いわけでもありません。
HSPに限らず精神疾患のチェックリストなども不安や悩みを抱えているときに見れば誰でも当てはまるように感じる内容が多いのです。
HSPスケールでもバーナム効果は起こる
以下の文章を読んでみてください。
・あなたは他人から好かれたい、賞賛してほしいと思っており、それにかかわらず自己を批判する傾向にあります。
・あなたは外向的、社交的で愛想がよいときもありますが、その一方で内向的で用心深く遠慮がちなときもあります。
・外見的には規律正しく自制的ですが、内心ではくよくよしたり不安になる傾向があります。
Bertram Forer
【関連】内向的なHSPと人見知りは別物
自分に当てはまると思う部分が多かったのではないでしょうか?
実はこの文章はアメリカの心理学者バートラム・フォアが星座占いの文章を組み合わせて適当に作ったものです。
この文章を「性格テストの結果です」と渡してどれだけ自分に当てはまっているかを5点満点で評価してもらったところ平均は4.26だったそうです。
このように誰にでも当てはまるような曖昧で一般的なことを自分にだけ当てはまるものだと思ってしまう効果のことをバーナム効果(またはフォアラー効果)と言います。
占い師やサイキックがよく使うテクニックです。
HSPのチェックリストを見たときもバーナム効果によって自分に当てはまっていると思ってしまっている可能性があります。
過去の自分にも該当するか?という視点でチェックをする
HSPのチェックリストとしてはHSPの名付け親でもあるエレイン・N・アーロン博士が考案したHSPスケール(HSPS)が用いられます。
落ち込みやすい人で「自分もHSPかもしれない」と思っている人の多くはこれによって判断していることが多いです。
当然ですがエレイン・N・アーロン博士はバーナム効果を狙ってリスト作ったわけではありません。
しかしHSPスケール(HSPS)の内容はHSPでない人でも落ち込んでいるときに見ると自分にほとんど当てはまると思える内容です。
(HSPは人口の5人に1人いると言われているのですから誰でも当てはまりそうな内容になってしまうのは当然ですが)
落ち込みやすい人がチェックリストを見たときにバーナム効果を起こさないようにするためには今のことだけ考えるのではなく、昔からそうだったのかという視点を持つことです。HSPはある日、突然なるものではないからです。
そして悩みや不安があれば誰にでも当てはまる内容なのでは?と分かれば冷静に判断することができます。
チェックリストに限らず本も同じです。HSP関連の書籍は落ち込んでいるときに読むと共感しやすい内容なのです。
落ち込みやすいというだけではHSPではありませんので注意してください。
一時的な安心感を得ても何も解決しない
HSPは自分の敏感さを認めそれを肯定的に捉えることが大切です。その上で必要な対策を取ります。
しかしそうでない人が落ち込む度に「私はHSPだから」と考えるのは間違いです。一時的な安心感を得ることはできますが何の解決にもなりません。
自分が落ち込みやすいと思っている人は他の原因があるかもしれないのです。
HSPだと決め付けないようにしましょう。
参考文献:The fallacy of personal validation: a classroom demonstration of gullibility.