愛着スタイルごとの割合を調べたら、論文によってバラバラだった

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カウンセリングに来ている人から、「不安型の愛着スタイルを持ってる人って何割くらいいるんですか?」といった質問をされることがあります。

自分が極めて少数派なのか、まあまあいるタイプなのか知りたいと思うのは自然なことかもしれません。

しかし、「不安型」「回避型」「恐れ・回避型」「安定型」が実際にどれくらいの分布なのかを、明確に答えるのは難しいのものです。

なぜかというと、調査によって、けっこう割合が違っているからです。

ちなみに、愛着スタイルの割合を算出している論文は数え切れないほどあります。

愛着についての研究であれば、まずは実験参加者がどの愛着スタイルを持っているのか調べますから、愛着の研究と同じ数だけ、割合を算出したデータが存在すると言っても過言ではないでしょう。

そしてそれらの割合はバラバラです。

とはいえ、目安として知っておいたほうが良いかと思いますので、代表的な論文のデータを紹介したいと思います。

1. 初期の有名な愛着スタイルの論文

最初に紹介するのは、心理学者のシンディ・ハザンとフィリップ・シェーバーが1987年に発表した有名な論文です。

私の記憶が正しければ、それまで子供の心理傾向を説明するために用いられていた、愛着スタイルを、3分類として初めて大人に応用した調査だった気がします。間違ってたらすいません…。

とにかく、成人愛着スタイルについての、パイオニア的な研究であることは間違いないです。現時点で18,000回以上も他の論文で引用されています。

この研究は『ロッキー・マウンテン・ニュース』という地方紙に、「ラブ・クイズ」と銘打ったアンケートを掲載し、読者の恋愛傾向などを収集したものです。620名(男性205名、女性415名)のデータを分析しています。

そこで愛着スタイルも調べているのですが、それによると、結果は以下の通りです。

  • 安定型(Secure):56%
  • 回避型(Avoidant):25%
  • 不安定/両価型(Anxious/Ambivalent):19%

新聞のアンケートだと「新聞を読んでいる人」というサンプルのバイアスがあるため、大学生(108名)も対象に調査しています。その結果は以下の通りです。

  • 安定型(Secure):56%
  • 回避型(Avoidant):23%
  • 不安定/両価型(Anxious/Ambivalent):20%

このように、紙上アンケートも大学生も大きな差はありませんでした。

(参考文献:Hazan, C., & Shaver, P. (1987). Romantic love conceptualized as an attachment process.)

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2. 愛着スタイルを4分類にして調査した論文

キム・バーソロミューとレオナルド・ホロウィッツの1991年の論文もかなり有名です。

それまで3つで分類していた、成人の愛着スタイルを、初めて4分類で調査したものです。

それまでの研究を分析すると、同じ「回避型」に分類された成人でも、異なる回避パターンが存在するということで、「拒絶回避型」と「恐れ・回避型」に分けたのです。

具体的には次の4分類になります。

愛着スタイル自己イメージ他者イメージ対人関係の特徴
安定型肯定的肯定的親密さと自立性のバランスが取れている
とらわれ型否定的肯定的他者依存・承認欲求が強く、不安を抱きやすい
拒絶回避型肯定的否定的独立を重視し、親密さを避ける
恐れ・回避型否定的否定的 親密さを求めつつも恐れて回避する

被験者77名に対して行われたインタビューの結果、各愛着スタイルの割合は次の通りです。

  • 安定型(Secure):47%
  • とらわれ型(Preoccupied):14%
  • 拒絶回避型(Dismissive-avoidant):18%
  • 恐れ回避型(Fearful-avoidant):21%

再現性を確認するために行われた2番目の研究(被験者69名)では次の通りとなっています。

  • 安定型(Secure):57%
  • とらわれ型(Preoccupied):10%
  • 拒絶回避型(Dismissive-avoidant):18%
  • 恐れ回避型(Fearful-avoidant):15%

(参考文献:Bartholomew K, Horowitz LM. (1991). Attachment styles among young adults: a test of a four-category model.)

3. 大規模なサンプルを調査した論文

大規模なサンプルを対象に愛着スタイルを調べたものとして有名なのが、クリスティン・ミケルソンらの論文です。

執筆者の欄には、最初に紹介した論文の著者であるフィリップ・シェーバーも名を連ねています。

この調査は「National Comorbidity Survey(全国併存疾患調査)」に基づく、15~54歳の8,098名のサンプルを対象に行っています。割合は以下の通りです。

  • 安定型(Secure):59%
  • 回避型(Avoidant):25%
  • 不安型(Anxious):11%
  • 分類不能:4.5%

この調査では、回避型が男性に多いという結果も出ています。当カウンセリングルームに相談に来るのも男性は回避型が多いです。

そして「彼氏が回避型みたいで…」と相談に来る女性の方が、「彼女が回避型みたいで…」と来る男性よりも圧倒的に多いです。

また、不安型の割合は年齢とともに低下する傾向もありました。これは、大学生などの若年層を対象とした調査などで不安型の割合が高くなることがある理由の一つといえるかもしれません。

(参考文献:Mickelson KD, Kessler RC, Shaver PR. (1997). Adult attachment in a nationally representative sample. J Pers Soc Psychol.)

個人的にはどの愛着スタイルも2~3割くらいではないかと思う

以上のように、調査によって愛着スタイルの割合は異なります。

私の感覚としては、どの調査も「安定型」の割合が高すぎるように思います。あくまで個人的な感覚ですが、愛着スタイルの4分類は、どれも2~3割ぐらいではないかと思います。

安定した愛着スタイルを持っている人のほうが珍しいのです。程度の差こそあれ、ほとんどの人は不安型か回避型に寄っていると思います。

もちろん、当カウンセリングルームに愛着の件で相談に来ている人は、約9割が不安定な愛着を持っている人です。だから相談にくるわけですが…。

特に不安型が多いです。恋愛依存症やアダルトチルドレンの人がよく相談に来ますので当然ではありますね。

回避型の人は、誰かに頼ろうと思うことが少ないので、カウンセリングにも来たがらないというのもあります。

ちなみに「恋人が回避型だと思うのですがどうしましょう?」と相談に来る方が、本人は安定していると思っていても、不安型ということも多いです。

向き合ってくれない相手に執着しているということは、自分の心にも何らかの課題が残っている可能性が高いのです。

とはいえ、愛着スタイルは変化するものですから、一生誰かに依存するのか、と落ち込む必要もありません。ゆっくり変えていけば良いのです。

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