ダークエンパスとは邪悪な気質と高い共感力という相反する特徴を持つ性格特性のことです。
ダークトライアドとエンパスを合わせた造語です。
相反する2つの性格
心理学には性格の分類方法やその特徴を表現するための言葉が数多く存在します。
その中でもダークトライアド(闇の性格特性)とエンパス(高い共感力)は頻繁に用いられるものです。
ダークエンパスはこの相反するような2つの特徴を併せ持っているのです。
ダークトライアド
ダークトライドとは「邪悪な3つの性格特性」のことです。
この特徴を持つ人は犯罪を起こしたり、組織に有害な影響をもたらす可能性が高いといわれることがあります。
具体的には以下の3つを指します。
- ナルシシズム:自己評価が高く賞賛を求める。共感力に劣る。
- マキャベリアニズム:目的のために手段を選ばない。対人操作や搾取が得意。
- サイコパス:反社会的で衝動的。罪悪感が欠如している。
エンパス
エンパスとは共感力の高い人のことを意味します。特別なものではなく全体の2~3割はいるという人もいます。
心理学で共感という言葉を使うときには以下の2種類に分けて考えることがあります。
- 情動的共感:相手の感情が伝染するように勝手に入り込んでくる。感情的共感ともいう。
- 認知的共感:意識して相手の視点に立ちその思考を想像し理解する。
エンパスという場合には情動的共感が強い人を指すことが多いです。
※日本国内でエンパスというとき霊感などと一緒にされてしまうこともありますが、まともな研究者やカウンセラーは全くの別物として分けています。
両立しない特徴なのか?
上記で説明したダークトライアドとエンパスは両立しない特徴のように見えます。
しかしこれらの特徴を併せ持つタイプもいるのではないか?ということを調査したのが英国ノッティンガム・トレント大学のナジャ・ハイム博士たちです。
この調査では20代から30代までの男女にダークトライアド、共感、性格特性、ストレス、人生を楽しむ能力、自己批判などについての質問を行いました。
新たに生まれた4つのカテゴリ
調査の結果、性格の特性は以下の4つのカテゴリに分類できることが分かりました。
- ダークトライアド(13%):邪悪な性格特性が高く、共感力が低い
- 典型的なふつうの人(34.4%):邪悪な性格特性、共感力ともに平均的
- ダークエンパス(19.3%):邪悪な性格特性、共感力ともに高い
- エンパス(33.3%):邪悪な性格特性は低く、共感力が高い
ダークエンパスの特徴
この調査からダークトライアド気質を持つ人の中にも共感性の高いタイプ(=ダークエンパス)が存在することが分かりました。
ダークエンパスのその他の特徴としては外向性の高さがあります。外向性とは周囲の人との関わりや新しい刺激を求める傾向のことです。
またダークトライアドのみの特徴を持つ人に比べ幸福度が高く、社会的な喜びも得やすく、搾取性が低いことが分かりました。
負の側面としては神経症傾向や誇大性の高さが見られます。
ダークエンパスはなぜ存在するのか?
ダークエンパスが存在する理由としてコミュニティにとっての進化上のメリットが考えられます。
ダークトライアドの持つ他人を操ったりサイコパス的思考が出来ることはときに生存に有利に働くことがあります。
しかしそれだけでは仲間に害を与える可能性もあるため共感力を持ったダークエンパスの存在によってコミュニティ内のバランスを取っているのかもしれないということです。
【注意】現在のところダークエンパスについての研究は今回紹介したものしか存在しません。そもそもダークエンパスという言葉自体がこの研究から生まれたものです。
そのため後続の研究により新たな事実が判明すればここで説明したことと矛盾する結果がでる可能性もあります。
エンパスやHSPといった場合に良心的な性格であるのが当然のように思われがちですが、必ずしもそうとは限らないということが分かってもらえればと思います。
参考文献:Nadja Heym, et al. (2020). The Dark Empath: Characterising dark traits in the presence of empathy.