HSPはカウンセラーに向いてない!?自分もHSPアピールはNG行為

カウンセラーにとって共感力というのは非常に重要な能力です。

なので共感力の高いHSPはカウンセラーに向いていると思われがちです。

「HSPに向いてる仕事」などの記事でオススメされることもあります。

しかしHSPがカウンセラーになると危険なことがあります。

今回はHSPがカウンセラーに向いていない可能性HSP専門カウンセラーになったら食べていけるのか?ということを当カウンセリングルームの事例を交えて説明します。

カウンセラーに必要な共感力

共感には大きく分けて2種類があります。

相手の感情が勝手に入ってくる「情動的共感」と相手の立場で感情を推測する「認知的共感」です。

【関連記事】情動的共感と認知的共感の違い!HSPが高いのはどっち?

HSPは情動的共感が強いということが脳の反応を測定した実験からも分かっています。

しかし相談者に情動的に反応することはカウンセリングでは避けるべきこととされています。

自分が疲弊しますし相談者に何をすべきかということを冷静に判断できなくなるからです。

カウンセラーに必要なのは認知的共感のほうなのです。

「いまこの人はなぜこのような感情が芽生えているのだろうか?どうすれば良い方向にいくのだろうか?」ということを科学的根拠に基づいて推察する能力です。

情動的共感と認知的共感

もちろんHSPだから認知的共感が低いということではありません。むしろ今後の研究で認知的共感もHSPの特性の一つという証拠が出る可能性もあります。

しかしどんなに認知的共感ができても情動的共感が強くそれをうまくコントロール出来ない人がカウンセラーになると自分自身が病んでしまうかもしれません。

HSPの提唱者であるエレイン・アーロン博士もHSPがカウンセラーなどの心理職に向いているといったようなことを言っています。

しかし「他人に奉仕することが自分の天職だと信じ燃え尽きてしまう」とも言っていますから気をつけてください。

感受性の強い人がトラウマ体験をした人の話を聞くと自分まで同じ傷を負ったような反応が生じてしまう「二次受傷」のリスクもあります。

燃え尽きるHSPカウンセラー

「私もHSP」とアピールしてはいけない

HSP専門カウンセラーを名乗る人の多くが自分もHSPだということをアピールします。特に日本ではこのパターンが多いです。

実はこれもカウンセリングではすべきでないこととされています。

なぜならカウンセラー側が私も苦しんでましたとアピールをしたら相談に来る人が不安になることもあるからです。

カウンセラーも精神的に不安定になることもあります。しかし「常に安定している人」と認識してもらったほうが相談者は安心するのです。

エレイン・アーロン博士が自身もHSPだということを言っているのでそれを真似ているカウンセラーが多いのかもしれません。

しかし博士はカウンセリングの集客のために自分がHSPだと言っているのではありません。そもそも博士は相談を受けることもあるかもしれませんが本職はカウンセラーではなく心理学者です。

「私もHSP」と言ってはいけないということではありません。カウンセリングにおいて「自分もHSPだから分かる」ということのみを根拠にしたり、集客のアピールにしてはいけないということです。

カウンセリングのNG行為

自分もHSPということをアピールするカウンセラーは自分の体験を相談者に当てはめることしか出来ないので間違えたカウンセリングをしてしまうかもしれません。

「自分もかつて同じ悩みを抱えていました」とアピールするのはあまり良いことではない、というのは臨床心理学のわりと基本的な概念だと思うのですが、日本でHSPのカウンセラーを名乗る人の多くがそれをしてしまっているのは不思議な現象といえます。

【関連記事】「自称HSP=うざいサイコパス」ということが研究で判明

HSPはカウンセラーに向いているという研究もある

あなたがHSPだったとしたら自分もカウンセラーになれるのでは?と思うのは自然なことです。

HSPカウンセラーのブログや動画は何となく良いことを言っている雰囲気を醸し出してはいるものの中身はただの個人的な感想でしかないことが多いです。

こういったものばかり見ていれば自分にも出来るのではないかと思うのは当然です。

しかしブログや動画を見るときは「HSPに関する本を一冊読んでいれば誰でも語れる内容では?」という視点を持ってください。

そすうれば「HSPは敏感すぎるので自分を労わりましょう」としか言っていないことに気づくはずです。

HSPカウンセラーのブログと動画

そして自分もそういうことしか出来ないと思うならカウンセラーはやめたほうが良いと思います。迷えるHSPを増やすだけになってしまいます。それに何よりも自分が潰れてしまいます。

とはいえHSPの特性とカウンセラーに必要な資質には重なる部分が複数あるというシアトルシティ大学の研究もありますから自分の特性を上手く活かすことができれば良いカウンセラーになれると思います。

HSPの専門カウンセラーは食えない?

ここからはHSPの専門カウンセラーになったら食べていけるのか?ということを説明したいと思います。

参考になるか分かりませんが当カウンセリングルームの事例を少し紹介します。

当カウンセリングルームのケース

私はHSPを専門にしているわけではありませんが、アダルトチルドレン、仕事・キャリアの悩み、セックスレスの相談と並び主な相談業務の一つといえます。

では仮に他の相談を一切行わずにHSPだけのカウンセリングを行っていたとしたら食べていけるのでしょうか?

答えを先に言うとHSPのカウンセリングだけでも食べていけるとは思います。

現状のHSPの相談数だけでも生活はできます。ただしこれには注意が必要です。

ネットで相談者を集めるのが難しい

当カウンセリングルームはサイトやネット広告を見て相談に来る人が多いです。

これは他のカウンセリングルームも同じだと思います。ネットを活用して相談者を集めることが多いのです。

しかしカウンセリング業界が他の業種と大きく異なることがあります。それは閲覧数と申込数が相関しにくいということです。

つまりたくさんの人がサイトを訪れたからといって、それに比例して申込数が増えるわけではないのです。

逆に言うとサイトを訪問する人の数が少なくともカウンセリングの申込が多いカウンセリングルームはあります。

この違いは何かというとサイトやブログに書いてある内容がHSPで悩む人に刺さるかどうかです。

サイトの訪問者は減ってもカウンセリングの予約数は変わらない

実は私も最近までHSP専門のサイトを運営しており、「HSPのカウンセリング」で検索したときに最初の方に表示されていました。訪問者数もかなり多かったです。

現在はそのサイトを閉鎖し、いくつかの記事をこのサイトに転記しています。(このサイトに同じ日付の記事が多いのはこれが理由です)

そのため「HSPのカウンセリング」で検索しても上位に表示されず訪問者数は激減しました。その他のHSP関連の用語で訪問してくる人も減りました。

しかし新規にHSPのカウンセリングを申し込む人の数はほとんど変化していません。

ニッチを狙えているか?

なぜ訪問者数が減っているのに申込数が変化していないかというと、一部のHSPで悩む人に刺さっているからです。

私は英会話は苦手ですが、英語の心理学論文はなぜか早く読めます。そして論文検索もなぜか得意なのです。おそらく研究論文が好きだからだと思いますが…。

そのため日本では紹介されていないHSP関連の研究をサイト内で多く紹介しています。

これが一部のHSPに刺さっているので訪問者が少なくとも申込につながっているのです。

カウンセリング難民

カウンセリングを受けようと考えている人の多くは、科学的根拠などなくとも何となく良いことを言ってそうな名言的なアドバイスや共感を求めています。HSPカウンセラーが狙うべき客層ももろにここといえます。

しかし中にはそういったカウンセラーに懐疑的な相談者もいます。雰囲気で誤魔化しているだけではないか?と思っているのです。

そういった極一部のカウンセリング難民ともいうべき人たちに偶々刺さっていたのでサイトの訪問数が減っても申込が減らなかったのです。

カウンセラーの個性が埋没しがち

当カウンセリングルームの事例から何が言いたいかというと、個性(キャラ)が立っていないカウンセラーは相談者を集めるのが難しいということです。

カウンセラーの個性は文章から伝わる

ネット広告にお金を使ったり、たくさん記事を書いて検索に引っ掛かるようにしたからといって相談者が増えるわけではありません。

カウンセラーの個性が伝わり、それが悩んでいる人の心に刺さらなければダメなのです。

しかもその方法に再現性がないのです。仮にあなたが私と同じように海外のHSPの研究を紹介するような記事を書いたからといってそれが刺さるとは限らないのです。

同じような内容であっても文章の端々からカウンセラーの個性が伝わるからです。内容とカウンセラーの個性がマッチしていないとそれを読む人は違和感を覚えますから刺さらないのです。

HSPカウンセラーになりたい人の個性は被りがち

カウンセラーはキャラが被っている人が多いですが、中でもHSPカウンセラーはその傾向が顕著です。

「自分もHSPで悩んだ経験があるので同じ悩みを抱えている人を救いたい」という人が多いです。

そしてブログに書く内容もHSPの提唱者であるエレイン・アーロン博士の著書の焼き直しのような内容に「自分を大切に」というフワッとした文言をプラスしたものが多いです。

確かにHSPで悩む相談者にはこういった内容が好まれます。当サイトの記事のように「〇〇大学の□□博士の研究によれば~」といった読むのが疲れるような内容は好まれません。

しかし多くのHSP専門のカウンセラーが同じ内容でアピールしているため個性が埋没しているだけではなく競合しまくっているのが現状です。

もしあなたがHSP専門のカウンセラーになろうと考えているのならこういった状況の中でも埋没しない個性を持っているかどうか考えたほうが良いと思います。

生まれ持った面白いキャラクターである必要はありません。例えばカウンセラーの他に何か特別な仕事を持っているなども個性です。

そういったものがないとHSP専門でカウンセリングルームをやっていくのは厳しいかと思います。

カウンセリングを受けたい人よりカウンセラーになりたいHSPの方が多い

私は経営コンサルティングの仕事もしているので、ウェブマーケティングのために様々なデータを分析しています。

その中でインターネットを使う人がどんな言葉を検索するのかや、どのようなサイトをどのように訪問するのかというウェブ上の行動などのデータも把握しています。

HSPに関連するデータを調べたこともあります。

そのデータから言えることはカウンセリングを受けたいと思っているHSPよりもカウンセラーになりたいと思っているHSPのほうが圧倒的に多いということです。

これはかなり特殊な状態だと思います。アダルトチルドレンや恋愛依存症で悩む人にこのような傾向は見られません。

HSPは特別な才能を持った人というネット記事が氾濫しているため、それを読んだHSPが「ならば自分もこの能力を役立てよう」と思ってカウンセラーを目指すパターンが多いのだと思います。

またHSPで悩んでいてもきちんとしたHSPの本を一冊読めばそれなりに対処できますからわざわざカウンセリングまで受けようという人は少ないことも理由といえます。

つまりHSP市場においては需要よりも供給のほうが圧倒的に多い状況となっているのです。

元も子もない話ですがHSP専門でやっていくのはビジネスの視点から見ても厳しい環境なのかもしれません。

参考文献:An Investigation Into the Construct of the Highly Sensitive Person and the Personality Traits Which Make for an Effective Counsellor.