自撮り写真をインスタグラムやフェイスブックに投稿することについての心理的影響について調査した論文がいくつかあります。
結果は様々で自己評価が高まるという人もいれば、反対に下がるという人もいます。
もともと自分の顔に自信のある人がSNS上に投稿するわけですからポジティブな活動であるケースのほうが多いでしょう。
しかし近年では写真を加工するのが当然のようになっています。そのため実物とは全く異なる顔を作って投稿することが可能となりそれを批判されることもなくなりました。
しかしこのような行為が自信を持たせてくれるのかそれともメンタルヘルスの問題を生じさせるのかということはハッキリしていません。
個人的な考えではやり過ぎると危険ではないかと思っています。
顔に対する自信と自撮り加工の関係
顔に対する自信と自撮り写真の加工について相関を示唆する論文は存在しています。
外見に自信のない女性ほど写真の加工に時間をかける
アリゾナ大学のラリッサ・テランたちの研究チームは14才から17才までの278人の女性に自撮り活動について訪ねました。
その中でどれ位の頻度で自撮り写真を投稿するか?写真の選定と加工にはどれくらいの時間を掛けるか?などを聞き取りました。
また外見に自信を持っているかや他人からの評価についてどう受け止めるかということも聞いています。
その結果、自分の外見に自信のない人ほど写真の加工に時間をかけることが分かりました。
SNSでの行動が人間の心理に影響を与える
この結果は当然といえば当然かもしれません。
しかしこれが単なる相関関係なのか因果関係なのか?ということは分かりません。
つまり初めから自分の顔に自信がない人が加工や写真選びに時間をかけるのか?
それとも加工に時間をかけているうちに自信が失われていくのか?ということです。
後者に関してはにわかに信じがたいかもしれません。しかし近年のSNSでの行動が人間の心理に影響を与えるということは複数の調査で分かっています。
コメントやイイネなどの期待していた反応がないと落ち込むとかスタイルの良い他人の投稿を見ると自己評価が下がるなどの現象が発見されています。
加工済の写真と実物はどちらが本当の自分だろうか?
加工をするということは自分の顔を否定し続けるということです。常に自分の欠点に注目する行動です。
当然ですが人は自分の短所ばかり意識するとメンタルヘルスに支障をきたします。
また加工をし過ぎると歯止めが利かなくなる可能性もあります。美容整形の手術を繰り返してしまう人と同じ感覚を持つ人もいるかもしれません。
するとやがて加工済みの写真と本当の顔のギャップに苦しみ、実物の方を否定しSNSの中だけに自分の存在を認めるようになることも考えられます。
人がネット上の幻想世界に価値を見出す可能性はアバターの洋服に課金する人がいることからも明らかです。
自撮りを加工するのは生まれ変わりたいという欲求?
私の個人的な意見としては加工をし過ぎると慢性的に自己評価の低い状態が続いてしまい、自信を持てなくなってしまうのではないかと思います。
なぜ自分は加工をしているのかということをもう一度考えてみてください。
単に楽しいからという理由なら問題はないかもしれません。
しかし自分を否定したいとか生まれ変わりたいという欲求をそこにぶつけているなら危険な兆候かもしれません。
参考文献:Larissa Teran, et al. (2018). “But first let me take a selfie”: U.S. adolescent girls’ selfie activities, self-objectification, imaginary audience beliefs, and appearance concerns.