明日も仕事で早起きしなければいけない、睡眠時間を削ることは健康にも悪い…
そう分かっているのに寝るのがもったいない気がしてダラダラとスマホに触れたり、Netflixで動画を鑑賞し続けたりしてしまうことはないでしょうか?
このような意図的な夜更かしのことを「リベンジ夜更かし」と呼びます。
そしてこの原因は子供時代の環境にあるかもしれません。
リベンジ夜更かし(報復性夜更かし)とは
まず初めに「リベンジ夜更かし」について簡単に説明します。
寝るのがもったいない
リベンジ夜更かしとは昼間に自分の思い通りの活動が出来なかったり、仕事などで時間を制約されたときに、自分の自由を取り戻そうとしてなされる夜更かしのことです。
「報復性夜更かし」と呼ばれることもあります。
何年か前にSNSで「夜更かししてしまうのは、その日に満足できていないから」というフレーズが話題になりましたが、まさにこの心理なのです。
特にやるべきことがあるわけでないのに「寝る時間がもったいない」と感じてしまうのもリベンジ夜更かしの傾向です。「昼間に奪われた自由を取り戻さずに寝ても良いのか」という無意識が働いているのです。
リベンジ夜更かしという言葉は中国のツイッターといわれる「Weibo」で2010年代に広まった言葉とされています。沿岸部のIT企業の過酷な長時間労働と関連した文脈で使われ始めたようです。
英語では「Bedtime Procrastination(就寝先延ばし)」と言われ、研究論文などではこちらの言葉が使われることが多いです。最近ではこちらにも「Revenge」という単語がつけられ「Revenge Bedtime Procrastination」などと呼ばれることもあります。
リベンジ夜更かしがやめられない人の特徴
リベンジ夜更かしについての研究はそれほど多くはありませんが、その他の睡眠に関する研究なども勘案すると、以下のようなタイプがリベンジ夜更かしをしやすいと考えられています。
- 日中のストレスレベルが高い
- 「寝る=1日の終わり」という認識が強い
- 自制心が低い
- 規則的な睡眠パターンを持っていない
- 睡眠よりもスマホのほうが満足度が高いものと認識している
- 目先の報酬や利益に焦点を当てる傾向がある
※あくまでも傾向ですが若い人や女性、学生に多いという研究もあります。
子供時代の環境とリベンジ夜更かし
ここまでリベンジ夜更かしは昼間の自由を取り戻したいという心理によるものと説明しましたが、最近の研究で子供時代の環境も影響している可能性が分かりました。
過酷な家庭環境で育つとリベンジ夜更かしをしがち
中国人民大学のレイ・シャオらのグループがリベンジ夜更かしと子供時代の環境について16歳から24歳までの学生を対象に調査を行いました。
この調査では子供時代の社会経済的地位や、環境の予測不可能性について聞き取りを行っています。
分かりやすくいうなら恵まれた家庭環境だったか、親の離婚や解雇、引っ越しといった予測不能な環境変化の経験があるかといったことです。
これらの結果を分析したところ、子供時代に過酷な環境にいた人ほど、成長後にリベンジ夜更かしをする傾向が高いことが分かりました。
子供時代のリソースは健康的な生活習慣の形成と関連
なぜ子供時代の家庭環境とリベンジ夜更かしに相関があるのでしょうか?
それは子供時代の経済的・教育的なリソースが生活習慣の形成に関連しているからです。
恵まれた家庭で育つほど健康的な生活習慣を身につけやすいのです。親も健康の大切さを理解した生活を送りそれを子供にも教えている可能性が高いからです。
反対に過酷な環境で育つと不健康な生活習慣に陥りやすいということです。それがリベンジ夜更かしに対する抵抗も減らしている可能性があるのです。
自己コントロールできている感覚の喪失
また北京師範大学のシュエリ・ズウらの研究によれば過酷な家庭環境で育った人は自己をコントロールできているという感覚を持ちにくいことが分かっています。
自己をコントロールできているという感覚が失われるとそれを取り戻したいという欲求が芽生えます。それが即座に利益を得られる行動につながりやすくなります。
つまり良質な睡眠によって得られる健康などの長期的な利益よりも、今すぐにスマホを触って得られる一時的な快感という目の前の利益を求めやすくなるということです。
これがリベンジ夜更かしにもつながる可能性があるのです。
リベンジ夜更かしをやめる方法
リベンジ夜更かしに限ったことではありませんが、睡眠時間の減少や質の低下は思考力や注意力の低下、自律神経の乱れによる体調不良など様々な悪影響を及ぼします。
そのようなリベンジ夜更かしをやめるにはどうすれば良いのでしょうか?
以下の方法が有効とされています。
- 休日も含めて就寝と起床の時間を同じにする
- 睡眠のリズムが崩れたら朝に太陽光を浴びることでリセットする
- 就寝1時間前からスマホやPCなど電子機器の使用をやめる
- アルコールやカフェインの摂取を控える
- 睡眠の質を高めることのメリットを知る
仕事によっては毎日同じリズムで睡眠を取るのが難しいという人もいると思います。
そのような場合も朝に太陽光を浴びることや寝る前にスマホを見ないことだけでもやると睡眠の質は良くなると思います。
太陽光のような強い光は眠気を起こすメラトニンというホルモンの分泌を止めてくれます。反対に夜にコンビニに行くと明るすぎる照明によってメラトニンが抑制され眠りにくくなってしまうということでもあります。
リベンジ夜更かしに関する研究はまだ少ないので、今回紹介したことが全てではありません。今後の研究によって新しい発見がされる可能性もあります。
<参考文献>
・Lei Shao, Juanjuan Jin, Guoliang Yu. (2023). Childhood environmental risk and youth bedtime procrastination:A path model with life history strategy and sense of control as mediators.
・Kroese FM, De Ridder DT, Evers C, Adriaanse MA. Bedtime procrastination: introducing a new area of procrastination.
・Zhu, X., Geng, Y. Childhood environment, sense of control and hoarding among Chinese college students. Curr Psychol 42, 2128–2135 (2023).