「恐れ・回避型」は恋愛依存症になりやすいという論文が出たよ

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恋人への執着が過剰になり、「一緒にいないと不安」「常に相手の反応が気になる」「別れが怖くて言いたいことも言えない」といった心理に陥っている状態を恋愛依存症といいます。

これは単に「恋に夢中」ということではなく、ストレスや不安、過去のトラウマを埋めるための「心の代償行為」であることが多く、本人にとっても苦しいものです。

このような状態が続くと、精神面にも影響を及ぼし、うつ症状や自己肯定感の低下、自己破壊的な行動へとつながる危険性もあります。

「恐れ・回避型」は恋愛依存症になりやすい

恋愛依存症になりやすい人の特徴として、「不安定な愛着スタイル」を持っていることが挙げられます。他者に過剰に執着したり、反対に心を閉ざしたりする人たちです。

そして、不安定な愛着スタイルの中でも、「恐れ・回避型」の人が恋愛依存症になりやすいという論文が、最近発表されました。

恐れ・回避型は、「自分は愛される価値がない」という思考と、「他者は信用できない(自分を見捨てるかもしれない)」という思考を持つ愛着スタイルのことです。

この2つの思考が重なり合うことで、親密な相手と離れることを強く恐れる「分離不安」が生じるのです。

分離不安が生じると、自分の心を守ろうという無意識のメカニズムである、「防衛機制」が働きます。

防衛機制の働き方は個人差があり、相手にもっと執着することもあれば、攻撃的な態度を取ることもあります。

どのような働きにせよ、分離不安から生じるネガティブな防衛機制は、現実を歪めて捉え、不健全な行動に出てしまうという、まさに恋愛依存症の状態につながるのです。

「恐れ・回避型」が恋愛依存症へとつながる経路

さきほど少し触れましたが、恋愛依存症の発生経路について調べた、LUMSA大学のエレオノーラ・トピノ博士らの研究が論文として発表されています。

この研究では、18歳から33歳までの男女332人を対象に、恋愛依存症の傾向や愛着スタイル、分離不安、防衛機制を調べています。

【測定項目1】恋愛依存症の傾向

恋愛依存症については、『Love Addiction Inventory(短縮版)』という専用の質問票に5段階で回答してもらうことで、その傾向を測定しています。参考までに項目を挙げておきますので、自分自身が該当していないか確認してみてください。

  • パートナーと一緒にいたいという切実な欲求を感じる
  • パートナーがいないと落ち込んでしまう
  • 安心するために、パートナーと過ごす時間を増やしたいと感じる
  • ストレスを和らげるためにパートナーと一緒にいる
  • パートナーと過ごす時間を減らさないようにしている
  • 勉強や仕事の時間を犠牲にしてでもパートナーとの関係を優先する

【関連】恋愛依存症を診断できる24項目のチェック票を翻訳してみた!

【測定項目2】愛着スタイル

愛着スタイルについても、質問票により、以下の4パターンに分類しています。

  • 安全型:自分にも他人にも信頼を持っていて、安定した恋愛関係を築きやすい
  • とらわれ型:自分に自信がなく、相手に強く依存しがち
  • 回避型:他人をあまり信用しておらず、距離を置いた関係を好む
  • 恐れ型・回避型:自分にも他人にも不信感を持っていて、傷つくことを強く恐れている

【測定項目3】分離不安

分離不安は、大切な人と離れることに強い不安や恐怖を感じる心の状態です。

恋人や家族など、安心感を与えてくれる人と物理的または心理的に離れる場面で、「見捨てられるのではないか」「もう会えないのではないか」といった不安に襲われることが該当します。

このような不安は、幼い子供が親と離れるときに見られる自然な反応でもありますが、大人になっても親密な相手に対し強く感じる人もいます。

分離不安は「あなたは恋愛中に、常に見捨てられることを恐れていませんか?」などの項目からなる、専用の質問票で測定しています。

【測定項目4】防衛機制

防衛機制は私たちが不安やストレス、心の葛藤から自分を守るために、無意識のうちに使っている心の働きのことです。

辛い出来事があったときに「なかったことにしよう」としたり、誰かに怒りを向けられたときに逆に自分を責めてしまったりすることがあります。自分の中にある嫌な気持ちを他人に押しつけてしまうこともあります。

詳しい説明は「防衛機制(適応機制)の種類と解説」の記事を参考にしてください。

防衛機制に関しても、「傷ついたとき、私はあからさまに攻撃的になる」などの項目からなる専用の質問票で測定しています。

【結果】恐れ・回避型→分離不安→防衛機制→恋愛依存症

これらのデータを分析したところ、恋愛依存症と最も強く関連していたのは「恐れ・回避型」であり、このスタイルを持つ人ほど、恋愛に対して過度に依存する傾向がありました。

これに対して、安全型や回避型など、他の愛着スタイルとは有意な関連は見られませんでした。

さらに、恐れ・回避型の人は、分離不安のスコアが高いことも分かりました。

そして、そのような不安に対して神経症的あるいは未熟な防衛機制を使いやすいことも明らかになりました。

つまり、相手を攻撃したり、出来事を自分の都合の良いように解釈することで、無意識に心の安定を保とうとしているということです。

さらに詳しい媒介分析では、「恐れ・回避型の愛着スタイルが恋愛依存症に与える影響は、分離不安と防衛機制を経由している」という結果が得られました。

分かりやすくいうと、恐れ・回避型の愛着スタイルそのものが直接的に依存を生み出すのではなく、そこから生じる不安感や、現実の捉え方の歪みによって恋愛依存症が形成されるということです。

「なぜ自分はこう感じてしまうのか?」と優しく問いかける

恋愛依存症に悩んでいると、「どうして自分はこうなんだろう」と自分を責めたくなることもあるでしょう。

しかし、今回の研究が示しているように、恋愛依存症は単なる性格の問題ではなく、過去の愛着体験や心の防衛反応として形成される「心の仕組み」の一部なのです。

最近では、恋愛依存症が他の依存症(たとえばギャンブルやアルコール)と似たメカニズムを持っていることも明らかになってきました。

つまり、心の中の空虚さや不安を、一時的な「愛されている感覚」で埋めようとしてしまう。けれどもその安心感は持続せず、またすぐに強い不安や孤独に襲われてしまう——。この繰り返しが、あなたを苦しめているかもしれません。

しかし、安心してください。心のクセは、気づくことで少しずつ変えられます。

たとえば、自分の愛着スタイルを知ることや、分離不安に向き合うこと、そして何より、「恋愛以外の場所でも安心できる自分」を育てていくことが必要です。

好きなことに熱中する時間、信頼できる友人との会話、小さな達成感。そうした日常の積み重ねが、あなたの心の「居場所」になっていきます。

大切なのは、自分の感じている不安や孤独を責めるのではなく、「なぜ自分はこう感じてしまうのか?」と優しく問いかけてみることです。

そして、その気持ちに寄り添いながら、一歩ずつ心の土台を整えていくことが、健やかな恋愛関係を築くことにつながります。

参考文献:Topino E, Cacioppo M, et al. (2024). Risk Factors for Love Addiction in a Sample of Young Adult Students: A Multiple Mediation Model Exploring the Role of Adult Attachment, Separation Anxiety, and Defense Mechanisms.