子供を持たない選択と愛着スタイルの関係。不安型が親になることを恐れる理由

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子供を持たない人生を選択する理由は様々です。

価値観やライフスタイル、経済的事情、結婚のタイミング、医療的な要因などなど。

最近の研究では、幼少期の親との関係、つまり愛着スタイルも影響しているということが分かりました。

その結果が個人的には意外だったので紹介しておきたいと思います。

愛着スタイルの簡単なおさらい

このサイトではお馴染みの言葉ですが、念のため、愛着スタイルについて簡単におさらいしておきましょう。

愛着スタイルとは、幼い頃に養育者(主に親)との関係を通じて形成される「心の結びつき方のパターン」です。親の愛し方によって形づくられます。

親からの愛情が十分であれば、他人に対しても「愛情を持っている人だろう」と思えるので、健全な関係(心の結びつき)が築けるようになります。

それに対し、親からの愛情が不十分だったり、歪んでいたりすると、他人を信用できずに、過度に依存したり、逆に距離を取り過ぎたりしてしまうのです。

この愛着スタイルには大きく分けて以下の3つがあります。

  • 安定型:他者を信頼し、適切な距離感で親密な関係を築ける。
  • 不安型:見捨てられ不安が強く、相手からの愛情を過剰に求める。依存しがち。
  • 回避型:親密な関係を避け、自立や距離を優先する。心内を見せない。

子供を持つかどうかと愛着スタイルの関係を調査

この愛着スタイルが、将来の子供を持つかどうかの選択にも影響するのではないか?ということを調べたのが、マンチェスターメトロポリタン大学のロビン・ハドリー博士らの研究です。

この研究では50歳以上の男女を対象に、基本的なプロフィールや子供の有無の他、以下の項目について聞き取りを行っています。(最終的なサンプル数は394人分)

  • 婚姻状況
  • 生活ストレスの程度
  • 健康関連のQOL(心身の健全さ)
  • ポジティブ・マインドセット指数(幸福感や自信などの前向きな心理傾向)
  • 幼少期の主たる養育者との関係に基づく愛着スタイル(安全型・不安型・回避型)

愛着スタイルの測定には、「ECR-RS」という信頼性の高いスケール(質問票)が使われました。

「見捨てられるのではないかと心配する」「相手が自分を大切にしてくれていないと感じる」などの不安型の傾向や、「相手に頼るのが苦手」「感情を見せたくない」などの回避型の傾向を測定することができます。

これらの情報をもとに、統計分析を行い、「子供を持っているかどうか」とそれ以外の変数との関連が調べられました。

不安型は子供がいない確率が高い

データ分析の結果、子供の有無に最も強く影響していた要因は婚姻状況でした。

既婚者やパートナーがいる人は、子供がいる確率が有意に高い傾向にありました。

そして、心理的な要因の中ではただ一つ、愛着スタイルだけが、子供の有無と関連していました。

「不安型」の愛着スタイルの傾向が強い人ほど、子供がいない確率が高かったのです。

これは、年齢や性別、婚姻状況、教育歴、健康状態、生活ストレスといった他の要因をすべて考慮しても変わらない結果でした。

不安型が子供を持たない可能性が高い理由

不安型愛着スタイルの人が、子供を持つ可能性が低い理由として、次のようなことが考えられます。

【理由1】人間関係への不安が強く、安定した関係を築きにくい

不安型愛着スタイルの人は、「見捨てられるのでは」「愛されていないのでは」といった恐れを抱きやすい傾向があります。

そのため、恋人との関係においても、過剰に依存したり、相手を試すような行動をしてしまったりすることがあります。

このような行動は、長期的で安定した関係を築くことを難しくするため、結果的に結婚や家庭を持つ機会を減らす要因となります。

【理由2】「親になる自信」が持てない

幼少期に十分な愛情を得られないと、自己肯定感が低くなり、「自分は何もできない」といった考えを持ちがちです。

こうした思考が、「自分が親になったら子供を傷つけてしまうのでは」「ちゃんと育てられないのでは」といった不安につながります。

つまり、「親になること」そのものに対して恐れを感じやすくなるのです。

【理由3】過去の親子関係がモデルになっている

人間というのは無意識に自分の育った環境を「親子関係を手本」として学びます。

不安型愛着スタイルの人は、幼い頃に親から一貫性のある愛情や安心感を得られなかった経験を持っています。

そうした経験を手本に学習してしまうと、潜在意識の中に「親になるとは子供を愛さないこと」というデータが蓄積され、理想的な親子関係を想像しにくくなるのです。

その結果、「自分は親になるべきではない」と感じたり、子育てそのものを避けようとしてしまうのです。

【理由4】愛されることへの不信感から、子供への愛にも不安を感じるから

不安型愛着スタイルの人は「自分は他人から本当に愛される存在なのか」という疑いを持ちやすいです。

こうした疑念は将来の子供に対しても現れ、「子供が自分を嫌ったらどうしよう」「私のことを必要としなくなったら怖い」といった恐れにつながることがあります。

そのような恐れが、子育てに対する精神的ハードルとなり、「子供を持たない」という選択に結びつく可能性があるのです。

見捨てられ不安が強い愛着障害は子供に嫉妬しやすい

回避型の愛着スタイルと子供の有無は関係なし

今回の研究結果で、私が個人的に意外だったのが、回避型の愛着スタイルが、子供の有無に関係していなかった点です。

回避型だからといって、子供がいる確率が低いということはなかったのです。

回避型の愛着スタイルを持つ人は、他人に頼ることや感情を共有することを避ける傾向があります。

自立を重んじ、感情を見せることに抵抗を感じるため、親密な関係を築くことをあえて避けようとすることもあります。

ですから、結婚して子供を持つという選択はしにくいように思います。

当方に相談に来ている人たちの話を聞いていても、「子供は絶対にほしくないです」という人は、けっこういます。

なので非常に不思議なのですが、もしかしたら、回避型の愛着スタイルを持つ人が、自分自身の内面に向き合うことさえ避けがちなことが影響しているのかもしれません。

つまり、「自分は子供を持つべきか?」ということを深く考えないため、適齢期にパートナーがいれば、自然な流れとして子供を持つという選択をするのかもしれません。

相談に来ている人と話している感覚としては、回避型も不安型も、子供は欲しくないという人が、安定型と比べると多いような気はしているのですが…どうなのでしょうか…。

愛着スタイルは人生の幸福感にも影響する

最後にお伝えしておきたいのですが、今回紹介した研究はあくまでも傾向を分析したものです。

不安型だから将来、子供を持てる可能性が低いということではありません。

なので、あなたが仮に不安型だったとしても、気にする必要はありません。

不安型に特有の思考パターンが、「子供を持たない方が良いかもしれない…」という考えにつながっているだけなのです。

とはいえ、最近の心理学研究では、愛着スタイルが健康や仕事、人間関係だけでなく、人生全体の幸福感にも影響することが分かってきています。

例えば、安定型の愛着を持っている人は老後の孤独感が少ないという研究などがあります。逆に、不安型や回避型の愛着スタイルを持つ人は、高齢になったときに社会とのつながりを保ちにくい傾向があることも分かっています。

つまり、幼少期から育まれた愛着スタイルは「親になる・ならない」だけでなく、その後の人生の幸福感やつながりにも関係する重要なものなのです。

だからといって、不安型や回避型の人が心配し過ぎる必要もありません。

愛着スタイルというのは、所詮は脳内の神経細胞の繋がり方でしかないのですから、何歳からでも変えられるのです。

参考文献:Robin Hadley, Chloe Newby, John Barry. (2019). Anxious childhood attachment predicts childlessness in later life.

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